りりり りりり
りりり りりりと耳に残り、なにか嫌な気分にさせるそれは、どこか遠くからか近いのかも分からない所から聴こえていた。
汗が目に入り目が覚めた。汗で黄ばんだシャツの袖で顔を拭うと、いつの間にか切れた扇風機のスイッチを入れ直してまた涼み始める。クーラーも買えない貧乏な一人暮らしの彼が暑さから逃げるための手段といえば、駅前を歩いていてもらったうちわと2,100円で買った扇風機しかない。食べる物も買えず、空腹から逃げるために昼寝をしていた彼は、りりり りりりという音で浅い眠りから目覚めた。
この部屋に目覚まし時計はない。携帯を覗いてはみたが、目覚まし機能は働いていない。ではこの音はなんなんだろう、と彼は立ち上がり部屋を物色しはじめた。
部屋の角で風船の様にぱんぱんに膨らんだゴミ袋が群れになっているのを横目に、何ヶ月も洗っていない服を退けたり、冷蔵庫を開けてついでに麦茶を飲んだり、使わないもの入れになっているタンスの中をあさったりしながら音の元を探した。しかしそれらしきのは見付からず、頭にハテナを浮かべた彼は目が覚めたついでに部屋の片付けを始めた。
服をたたみタンスにかたづけ、ゴミを袋にまとめて家の近所のゴミステーションに、決まり事などは無視して全て捨てた。ずいぶんとさっぱりとした部屋を見渡し、満足そうに笑った彼は昼寝の続きを始める。 静かになった部屋から、いつの間にか消えていたあの音がまた聞え始めた。
気持ちが伝わればそれでいいでふ