彼女の声がする ―2年前のこと―
声が聞こえる
だれの声だろう
――――・・・真優?
その日の登校中、僕は事故に会った。
僕は自転車通学だった。
信号が青に変わり、横断歩道を自転車で渡ろうとしたところを車にひかれた。
そう、それはよくある事故。
でも
『こんなこと』になるのは、
どれだけゼロに近い確率なんだろう。
声を聞いたような気がした。
それはきっと真優の声。
それはきっと現実ではない真優の声。
その声はこう言った。
あなたは不幸な子。でも、これも運命。
『こんなこと』になる確率は限りなくゼロに近いわ。
世界中でも、きっとあなただけ。
でも、あなたはこの運命にめぐり合ってしまったの。
誰のせいでもない、誰が決めたのでもない、この運命に。
そう、あなたは可哀そうな子。
たとえ全員じゃない、家族は違う、としても、
きっとわたしは・・・・ あなたのことを忘れてしまうわ。
それは真優の声だった。
しゃべっていたのもきっと真優。
でもこんな真優、現実にはいない。
そう、それはきっと、現実ではない真優の声。
彼女は・・・
僕のことを 忘れてしまうのだろうか?
それは運命。
なんの?
限りなくゼロに近い運命。
どうして?
なんのために?
僕は再び目を開けることができるのだろうか。
わからない。
でも、どうでもいいような気もする。
きっと、僕が目を開けたとき、
彼女は 僕のこと覚えていない。
なら、このまま2度と彼女に会えなくてもいいのだろうか。
違う。
会いたい。もう1度。
もしも、僕がこのまま、2年後の中学最後の年までに目を再び開けることができなかったら、
そのときは
会いに行こう。
たとえ彼女が僕のことを忘れていたとしても。
そう、
その時が来たら。