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ドナドナ事件(1)

ガタゴト


ガタゴト


ガタゴトと揺れる馬車。

大量の荷物を遠くの街へ運ぶために作られたそれは、かなり頑丈で大きい。

元々荷物を運ぶためだけのものなので、荷台の部分は、小さな段差に大層弱く頻繁に激しく揺れる。


「ねぇ、リッツ…」


「フルーラ?何?不安?」


「まぁね…。もしかしたら…殺されるかも…しれないし」


「…見世物小屋で売られるだけだろ?」


「もしも、解体ショーだったら?」


「…。大人しそうな顔して、よくそんな事言えるな、お前…」



荷台に乗っているのは、子供。


小さいものは十歳前から、大きい子は十五、六の少年少女まで。

質素な服装だったり、一般家庭の服を着ていたり、色んな色の髪の子供がいる。

人数は、二十人ほど。

荷台の扉には、大人でも縮み上がるような鋭い目つきの屈強な男が二人座っている。

子供たちはその二人から少しでも遠ざかるようにしてすわり、泣いたり、諦めたり、慰めあったりしている。

リッツと呼ばれた赤毛の少年は、この二十人ほどの中でも一番の年長者らしかった。

そして、その隣に座るフルーラと呼ばれた緑髪の少女は、リッツと同じくらいの年齢。



「リッツ…」


「ん?」


「私たちのこれからも不安だけれど…彼女は…もっと不安だわ」


「言えてる」



二人が哀れむように見たのは、荷台の隅に転がる少女。

この荷台に乗せられた子供たちは皆、誘拐されたか売られた子供たちだ。

どの子供よりも早く、この荷台に乗せられていて、そこからずっと寝ている少女。

最初は死んでいるのかと心配したが、息はしていた。


少女は…黒髪で、茶色く土まみれになった服を着ている。

長い黒髪にも、茶色い服にも…僅かに血痕が付着していた。


しかし、これから見世物小屋で売られる運命を思うと…ここまで熟睡しているのもどーかと…。

と、二人が心配した時。




ガタンッ



と、馬車が一際大きく揺れた。


「きゃ!」


「フルーラ!」


他の子供たちも、突然の衝撃に折り重なったり、ぶつかったりしていた。




「いたっ!!」



澄んだ声が聞こえ、黒髪の少女がむくりと起きた。


「いたたたたた…。馬車くらい上手に運転してよ!さいてー…え?」


起き上がった少女は、海色の瞳を目いっぱい開き、キョロキョロと周囲を見渡す。

扉の近くにいる異質な男二人を見て、怯える子供たちを見る。


「どこ…ここ?」


「おじょーちゃん、やっと起きたか。今から皆で楽しい所に行くんだ」


「楽しい所…?」


「違う!!こいつらは俺たちを見世物小屋に売る気なんだ!!」


「見世物小屋…?え?私…売られるの!?」


リッツが叫んでも、少女はどこか他人事のように驚いた。

大して恐怖も怯えも不安も滲ませてはいない。

まだ…夢の中だとでも思っているのだろうか…。


「赤毛の坊主にでも聞け!!」


男に服を掴まれ、黒髪の少女がポーンと放り投げられ、リッツとフルーラの目の前に子尖った。

見た感じ、十四、五歳くらいだろうか…リッツやフルーラよりも年下のような気がする。


「赤毛の少年。緑の少女。よろしくね」


にこやかに笑う少女は、この荷台の中では異彩を放っていた。

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