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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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76/105

空を飛ぶ回

翌日。

広場の真ん中に、見たこともない形の装置が立っていた。

金属の背負い枠。

左右に羽。

無駄に大きいプロペラ。

そしてやたら多いレバー。

発明家が腕を広げる。

「ついに完成した!個人用飛行装置だ!」

町人は距離を取る。

衛兵も一歩下がる。

俺は帰ろうとする。

だが肩を掴まれる。

「逃げるな。安全確認だ」

なぜ俺が基準なんだ。

武闘派が笑う。

「空くらい飛べよ」

戦闘力ゼロに何を期待している。

発明家は装置を俺の背中に固定する。

ベルトが締まる。

重い。

「今回は改良した。爆発率は三割まで下がった」

高い。

非常に高い。

魔術師が冷静に言う。

「七割は爆発するのか?」

発明家は胸を張る。

「理論上はな」

理論をしまえ。

カウントダウンが始まる。

三。

俺は震える。

二。

新人が目を輝かせる。

一。

レバーが引かれる。

爆音。

背中から衝撃。

地面が離れる。

浮いた。

本当に浮いた。

「飛んでる!?」

町人がざわつく。

俺は空中三メートル。

意外と安定している。

発明家が叫ぶ。

「成功だ!」

やめろ。

その言葉が一番危ない。

高度が上がる。

五メートル。

十メートル。

風が強い。

怖い。

下を見る。

武闘派が小さく見える。

魔術師が何か記録している。

新人が手を振っている。

俺は叫ぶ。

「どうやって降りる!?」

沈黙。

発明家が固まる。

嫌な間。

「……まだ開発していない」

ふざけるな。

突然、装置が揺れる。

プロペラが変な音を出す。

ギギギギ。

煙。

やめろ。

本能が告げる。

これは落ちる。

俺は必死にレバーを引く。

どれが何だかわからない。

一つ引く。

急上昇。

別のを引く。

急旋回。

町の屋根すれすれを飛ぶ。

洗濯物が絡まる。

視界が真っ白。

「止めろォォ!」

下では大騒ぎだ。

衛兵が走る。

発明家が跳ねる。

武闘派が爆笑している。

最悪だ。

ついに。

プロペラが止まる。

静寂。

一瞬、世界が静かになる。

そして落下。

「終わった」

そう思った瞬間。

魔術師の声。

「レビテーション!」

体がふわりと止まる。

地面すれすれで浮遊。

助かった。

俺はそのままゆっくり地面に降ろされた。

全身震えている。

発明家が駆け寄る。

「どうだった!?」

どうもこうもない。

俺は言う。

「降下機能を作れ」

発明家は真顔でメモを取る。

「なるほど」

武闘派が肩を叩く。

「意外と似合ってたぞ」

やめろ。

町人がざわつく。

「飛んでたな」

「成功じゃないか?」

嫌な空気。

発明家が振り返る。

「改良すれば量産できる」

やめろ。

本気でやめろ。

だがその夜。

町では噂が広まる。

「空を飛んだ冒険者」

「実はすごい奴」

違う。

俺は操縦できていない。

偶然だ。

だが依頼掲示板には、翌日こう書かれていた。

“高所調査依頼:飛べる冒険者限定”

受付が俺を見る。

笑顔だ。

営業スマイルだ。

「お願いできますか?」

なぜだ。

発明家が後ろで親指を立てる。

「次は改良型だ」

俺は空を見上げる。

青い。

平和だ。

だがこの町で空を飛べるということは、

つまり次も俺が実験台だということだ。

戦闘力はない。

運もない。

だがなぜか空だけは飛べる。

俺はため息をつく。

たぶん次は、

もっと高く飛ぶ。

そしてもっと派手に落ちる。

この町では成功よりも、

その後のトラブルのほうが確実だ。

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