受付嬢の回2
「じゃあ一番人気は誰だ」
その一言で、地獄の第二ラウンドが始まった。
武闘派が机を叩く。
「俺は“可愛い派”代表だ!」
魔術師が立ち上がる。
「“美しい派”の理念を歪めるな!」
新人が震えながら言う。
「“優しい派”は中立です……!」
荷運び屋が腕を組む。
「“包容力派”は器が違う」
器の話じゃない。
俺は椅子に座ったままスープを飲む。
帰りたい。
いつの間にか、黒板が出てきた。
なぜある。
誰が用意した。
そこに書かれる。
・可愛い派
・美しい派
・優しい派
・包容力派
派閥が生まれた。
最悪だ。
武闘派が叫ぶ。
「具体的にどこが可愛いか言え!」
魔術師が反論。
「まず立ち姿だ!」
新人が小声で。
「笑ったときの目元が……」
荷運び屋がうなずく。
「話を最後まで聞いてくれる」
受付、全部聞こえている。
顔が赤い。
だが営業スマイルを崩さない。
プロだ。
そして誰かが言った。
「じゃあ、受付に一番似合うのは誰だ」
やめろ。
それは最終戦争だ。
武闘派が胸を叩く。
「俺だろ!」
魔術師が杖を鳴らす。
「知性の会話ができるのは私だ」
新人が真っ赤になる。
「ぼ、僕はその……」
荷運び屋が腹を叩く。
「安定感」
なぜ勝負する。
受付はただの受付だ。
俺は目を閉じる。
関わるな。
絶対に。
だが武闘派が言う。
「お前は?」
やめろ。
俺を巻き込むな。
全員が見る。
逃げ場ゼロ。
俺は言う。
「受付は仕事ができる人だろ」
静止。
空気が変わる。
魔術師がぽつり。
「……確かに」
新人がうなずく。
「一番すごいの、そこですよね」
武闘派が腕を組む。
「……依頼の管理、完璧だしな」
荷運び屋が言う。
「計算も早い」
受付が驚いた顔をする。
そして、少しだけ笑った。
営業じゃない笑顔。
静寂。
全員が固まる。
武闘派が小声で言う。
「……今のは反則だろ」
魔術師がメガネを押さえる。
「破壊力が違う」
新人が崩れる。
荷運び屋が天を仰ぐ。
俺は思う。
これで終わる。
はずだった。
だが武闘派が言った。
「つまり、“仕事できる派”だな!」
増やすな。
黒板に追加される。
・仕事できる派
派閥が五つになった。
もう収拾がつかない。
そこへ――
ギルドマスター登場。
「何の騒ぎだ」
沈黙。
武闘派が正直に言う。
「受付の魅力について」
最悪の報告だ。
マスターが受付を見る。
受付が顔を赤くする。
マスターがゆっくり言う。
「……業務の妨害は罰金だ」
全員固まる。
「銅貨三枚」
高い。
一気に静かになる。
武闘派が席に戻る。
魔術師が本を開く。
新人が依頼を見始める。
荷運び屋がスープを飲む。
俺も飲む。
平和だ。
受付が小声で言う。
「……ありがとうございます」
俺に向けて。
なぜだ。
俺は何もしていない。
ただ話を逸らしただけだ。
だがなぜか――
俺は「冷静派」という謎の派閥の代表にされた。
やめろ。
俺は派閥を作る気はない。
町は今日も平和だ。
魔王も来ない。
魔物も来ない。
だがギルドは、今日もどうでもいいことで全力だ。
さらに続ける?




