表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/90

広場はもはや広場ではなかった回

広場は、もはや広場ではなかった。

石畳はめくれ上がり、噴水は消え、屋台は伝説になり、中央には巨大な黒殻の抜け殻が山のように転がっている。

そしてその前で、町長が膝をついている。

「……これは、広場だ」

現実逃避だ。

レナが小声で言う。

「広場って言い張れば広場らしいよ」

「やめろ」

町長がゆっくり立ち上がる。

震える指で俺たちを指す。

「勝ったのだな?」

「はい」

「町は守られたのだな?」

「はい」

「……広場は?」

レナが即答する。

「経験値になりました!」

違う。

町長のこめかみに血管が浮く。

だが、深く息を吸い、吐く。

「……命があるだけ良しとしよう」

大人だ。

その瞬間、冒険者たちが一斉に拍手する。

誰かが言う。

「参謀の指示がなかったら危なかった!」

別の誰か。

「レナが脚折らなきゃ無理だった!」

レナが胸を張る。

「でしょ?」

俺を見る。

「ほら」

何だその“ほら”は。

町長が咳払いをする。

「報酬だが」

全員が静まる。

空気が金の匂いになる。

「当初の討伐報酬に加え、特別危険手当を支給する」

ざわっ。

レナの目が光る。

「広場修復費は?」

町長がこちらを見る。

静かに。

ゆっくり。

「……それは別問題だ」

嫌な言い方だ。

レナが俺の袖を引く。

「逃げよっか?」

「逃げない」

そのとき。

ギルドの受付嬢が駆け込んでくる。

「大変です!」

全員がビクッとする。

「今度は何だ!」

「南の門の近くで、黒い小さな虫が一匹見つかったと!」

全員が凍る。

レナが真顔になる。

「嘘でしょ」

町長が崩れ落ちる。

俺は即座に言う。

「確認だ!」

全員で南門へ走る。

もう足が重い。

頼むから勘違いであってくれ。

門の近く。

兵士が槍で何かをつついている。

地面にあるのは――

黒い塊。

ピクリ。

全員が一斉に武器を構える。

レナが低く構える。

「光ってる?」

「……光ってない」

俺は近づく。

慎重に。

よく見る。

焦げた木片だ。

さっきの爆発で飛んだ破片。

兵士が言う。

「動いた気がして……」

レナが崩れ落ちる。

「やめてよほんと」

俺も力が抜ける。

町長が遠くで座り込む。

「寿命が縮む……」

静寂。

本当に、今度こそ終わったらしい。

レナが空を見上げる。

夜はもう明けかけている。

「さあ」

レナが立ち上がる。

「報酬の時間だ」

切り替え早いな。

ギルドに戻る途中、レナが言う。

「ねえ参謀」

「なんだ」

「また封印とかあったらどうする?」

俺は少し考える。

壊れた広場。

抜け殻。

小型個体。

そしてあの爆発。

「……まず遺跡を壊す前に調べる」

レナが吹き出す。

「最初からそうしよ?」

正論だ。

朝日が町を照らす。

壊れた広場も、抜け殻も、全部明るくなる。

レナが伸びをする。

「でもさ」

「なんだ」

「でかいの、ちょっと楽しかった」

俺はため息をつく。

「次は小さい依頼にしろ」

レナが笑う。

「どうせ大きくなるよ」

……否定できない。

こうして、町を揺らした黒殻事件は終わった。

広場は消えたが、町は残った。

できれば、次は広場以外でお願いしたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ