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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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43/78

スプーンの回

朝。

ギルド。

いつものように俺は壁際。

パンとスープ。

スープを飲もうとする。

スプーンがない。

まあいい。

手で飲める。

その瞬間。

ギルド職員が叫ぶ。

「緊急事態です!!」

やめろ。

カウンターの上。

銀色の箱。

その中は空。

「備品管理用スプーンが一本不足しています!」

静まり返るギルド。

勇者が立ち上がる。

「ついに来たか……」

来てない。

八百屋が低い声で言う。

「内部犯か……?」

パン屋が腕を組む。

「外部犯の可能性もある」

ただのスプーンだぞ。

全員が俺を見る。

やめろ。

「参謀、見解を」

ない。

だが放っておくとさらに悪化する。

俺は言う。

「昨日最後に使ったのは誰だ」

職員が震える声で言う。

「私です……」

勇者が息を呑む。

「内部だ……!」

違う。

ミレアがメモを取り出す。

「動機は」

「スープをかき混ぜるためです!」

当たり前だ。

ギルド内が完全に“作戦会議”モード。

鍛冶屋が地図を広げる。

なぜか町の地図。

「スプーンは軽量……

持ち出しは容易……」

分析するな。

俺は立ち上がる。

仕方ない。

「全員、昨日どこに座ってた」

急にざわつく。

椅子の配置を再現し始める町民。

なんで再現度高いんだ。

勇者が言う。

「俺は東側。

視界は良好だった」

何の視界だ。

パン屋。

「俺は西側。

死角があった」

スプーンに死角はない。

ミレアが真剣な顔で言う。

「参謀、これは時間との戦いです」

溶けない。

金属だ。

そして。

扉が開く。

知らない旅人が入ってくる。

全員が振り向く。

異様な沈黙。

旅人、固まる。

「え……何……?」

勇者が一歩前に出る。

「昨日、ここにいたか?」

尋問やめろ。

旅人が怯える。

「い、いや、初めてで……」

鍛冶屋が低く言う。

「証拠は?」

何の。

俺は頭を抱える。

ただのスプーンだ。

そのとき。

カウンター下から声。

「にゃあ」

全員の視線が下へ。

猫。

口にくわえている。

銀色。

スプーン。

沈黙。

勇者がつぶやく。

「陽動……?」

違う。

ミレアが真剣に言う。

「計画的犯行ではなかった……?」

猫だ。

職員が涙目で猫を抱き上げる。

「ミルクが欲しかったのね……!」

スプーン関係ない。

事件、終了。

所要時間、一時間半。

だが問題はそこじゃない。

誰も普通に終われない。

勇者が言う。

「今回の教訓は?」

教訓いらない。

八百屋。

「内部と外部、双方の警戒を怠るな」

だから猫だ。

鍛冶屋。

「備品管理の強化だな」

スプーン一本だぞ。

全員が俺を見る。

またか。

俺は言う。

「……棚にフタつけろ」

ミレアが震える。

「対策まで……完璧……」

完璧じゃない。

普通だ。

翌日。

掲示板に貼られる。

【スプーン事件を忘れるな】

やめろ。

そして町では。

パンを落としただけで

「第二の事件か!?」

水をこぼすだけで

「流出だ!」

もうだめだ。

俺は壁際に戻る。

ミレアがぽつり。

「参謀、町って平和ですね」

俺は言う。

「スプーンで一時間半使う町は平和だ」

遠くで勇者が猫に向かって言っている。

「次は包囲するぞ」

猫、寝る。

敗北。

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