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小物の異世界生活  作者: おこげ


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発端はパン屋だった。

「参謀殿って王都でも通用するんですよね?」

通用しない。

まず参謀じゃない。

「勇者様が認めたって聞きましたし」

聞き間違いだ。

俺はパンを受け取る。

代金を払う。

帰る。

はずだった。

背後でパン屋が何かを書いている。

嫌な予感しかしない。

昼。

ギルドに入った瞬間、空気が変。

ざわ……

ざわ……

俺を見るな。

受付嬢が妙ににこやかだ。

「参謀様、本日もお疲れ様です」

様が増えた。

「やめて」

「王都への推薦状、三通届いております」

は?

掲示板を見る。

新しい張り紙。

【我が町の参謀を王都へ推薦する会】

会ができてる。

設立者:八百屋。

なぜ。

内容を読む。

・畑防衛成功率九割(鳥が勝手に去っただけ)

・倉庫崩落未然防止(床の色が違っただけ)

・魔物討伐における的確な指示(梁が落ちただけ)

盛り方が雑。

「町として誇らしいです」

ギルドマスターまでいる。

「誇るな」

「小規模専門の参謀が王都へ」

専門やめろ。

外に出る。

横断幕。

【祝・王都進出目前!】

目前じゃない。

誰も確認してない。

ミレアが走ってくる。

「すごいですね」

「止めろ」

「もう町長も乗り気です」

町長巻き込むな。

広場。

即席演説台。

なぜか俺の似顔絵。

目がキラキラしている。

誰だこんな目に描いたの。

俺こんな希望ある顔してない。

町長が咳払い。

「本日、我が町の参謀を王都へ推薦する署名が五百を超えた」

人口三百だぞ。

「重複です!」

「熱意だ」

熱意で数増やすな。

パン屋が言う。

「王都で成功したら、この町に支部を」

支部?

俺の何の。

八百屋が叫ぶ。

「王都産野菜のルートが開ける!」

目的が俗すぎる。

鍛冶屋。

「王都の武器を卸してもらえるかもしれん」

俺武器持ってない。

町が完全に

“俺を踏み台にして王都利権を得ようとする会”

になっている。

勇者まで現れる。

「盛り上がっているな」

お前止めろ。

「君は町に愛されている」

愛が重い。

勇者が腕を組む。

「王都で通用するかは分からん」

ほら見ろ。

「だが、推薦されるだけの何かはある」

何もない。

あるのは立ち位置だけ。

俺は壇上に押し上げられる。

拍手。

多い。

無駄に多い。

「一言お願いします!」

断りたい。

断れない。

俺は咳払いする。

「……畑は守れます」

静寂。

パン屋が泣き出す。

「謙虚だ!」

違う。

限界だ。

その夜。

町中にポスター。

【王都も守れる参謀】

スケールを勝手に広げるな。

翌朝。

王都から正式な書簡が届く。

内容。

「小規模専門参謀とは何か」

知らない。

町の連中がざわつく。

「返事どうする?」

俺に聞くな。

「参謀の采配で」

やめろ。

俺は壁に戻る。

静かに言う。

「俺は行かない」

一斉にどよめく。

「なぜだ!」

「町に必要だろ!」

昨日まで売る気満々だっただろ。

パン屋が言う。

「……やっぱり、うちの参謀はうちの参謀だ」

急に情に訴えるな。

八百屋。

「王都は遠いしな」

現実的。

ギルドマスターがため息をつく。

「……推薦状は送っておく」

やめろ。

俺は空を見る。

武器なし。

魔法なし。

実績、誤解。

それなのに。

町が勝手に

俺を“希望”に仕立て上げている。

怖い。

翌日。

新しい横断幕。

【王都が放っておかない男】

やめてくれ。

俺は今日も壁際に立つ。

なるべく小さく。

なるべく目立たず。

規模がでかくなるな。

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