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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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4/85

スープ美味しかった回

翌朝、俺は決意していた。

今日は、何もしない。

理由は三つある。

一、死にたくない。

二、痛いのは嫌だ。

三、昨日のスープが思ったより美味しかった。

つまり、この村はまだ捨てる段階じゃない。

朝食を食べながら、

俺は冒険者ギルドの方向を見ないようにしていた。

見たら、行かなきゃいけない気がする。

気のせいだが、気のせいは人を殺す。


「今日の予定は?」

女将に聞かれた。

「未定です」

「昨日もそう言ってたよ」

「継続案件です」


女将はため息をついた。

「働かないと、泊められないよ」

「脅迫だ」

「現実だ」

異世界、容赦がない。

仕方なく俺はギルドの前まで来た。


入らない。

ただ、前を通るだけ。

掲示板を横目で見る。

・ゴブリン討伐

・薬草採取

・行方不明の羊探し

(羊……?)

一瞬、心が揺れた。


「いやいやいや」

羊は可愛い。

可愛い=油断。

油断=死亡。

背後から声。


「お、新顔」

振り向くと

昨日スライム安すぎと愚痴っていた冒険者。


「登録した?」

「してません」

「じゃあ依頼受けられないな」

「それを守りに来ました」

「?」


会話が成立していない。

そのまま立ち去ろうとした瞬間。

「人手不足なんだ」


受付嬢が言った。

「一番簡単なのは、村の外で草を刈るだけ」

「草」

「草です」

「敵は」

「いません」

「報酬は」

「銅貨三枚」

俺は真顔になった。

「……その草、噛みませんよね?」


受付嬢が首をかしげる。

「草が噛むわけないじゃないですか」

(この世界、信用できない)

俺は慎重に聞いた。


「過去に、草が原因で死んだ人は?」

「……一人」

「いるじゃないですか!」

「雷に打たれただけです」

「それ草関係あります!?」


考える俺。

草刈り。

敵なし。

低報酬。

だが、

「最初の依頼」というフラグが

全身にまとわりつく。

ここで受けたら、

次は「ついでに洞窟」とか言われる。

知ってる。

物語はそうやって人を殺す。


「すみません」

俺は丁寧に頭を下げた。

「今回は、見送らせてください」


周囲が静まる。

冒険者たちの視線。

(やばい、

村八分コースか?)

受付嬢は少し驚いた顔をしてから、

メモを取った。


「……分かりました」

「あ、怒ってます?」

「いえ。たまにいます、そういう方」

「そういう方?」

「何もしない才能の持ち主」


刺さる。

外に出た瞬間、

俺は全力でガッツポーズした。

「生き延びた!」


何もしていないのに、

勝利感がすごい。

昼。

村の外れのベンチで、

俺はパンをかじっていた。

遠くで、

草刈りに出た冒険者が叫んでいる。

「うわっ、蜂だ!」

「毒あるやつだ!」

(ほら!)

俺は静かにパンを噛みしめた。


「……今日も、判断は正しかった」

夕方。

宿に戻ると、女将が腕を組んでいた。

「で、稼ぎは?」

「ゼロです」

「誇るな」

「生存報告です」

「明日までだからね」

期限が切られた。

俺はベッドに倒れ込む。

「……いよいよ逃げ場がなくなってきた」


だが、まだだ。

俺には

受けないという選択肢がある。

英雄にはなれなくても、

小物として、

今日も俺は完璧だった。

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