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小物の異世界生活  作者: おこげ


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発端は、パンだった。

朝。

パン屋の前に張り紙。

【本日 新作:超巨大ふわふわパン

(数量限定1)】


1?

ケンカ売ってるのか。

開店前から行列ができていた。

町人A。

町人B。

なぜか鍛冶屋。

あと子ども。

俺は通りすがり。

関係ない。

はずだった。

「参謀殿」

呼ぶな。

パン屋が俺を見つける。

「順番で揉めそうでな」

帰りたい。

理由は単純。

一個しかない。

なのに欲しい人が五人いる。

平和な町で一番厄介な案件だ。

町人Aが言う。

「昨日は俺が買えなかった」

町人Bが言う。

「いや俺もだ」

鍛冶屋が言う。

「朝飯まだだ」

子どもが泣きそう。

地獄か。

俺は言う。

「半分にしろ」

パン屋が首を振る。

「中身が偏る」

どういう構造だ。

ミレアが後ろで観察している。

絶対メモ取ってる。

「抽選にするか」

と俺が言うと、

町人Aが言う。

「運は信用ならん」

小規模な不信感やめろ。

「じゃあ競争」

「何で?」

「早食い?」

買う前から食うな。

議論は加熱する。

パンはまだ焼き上がっていないのに。

そのとき。

子どもが小さく言った。

「みんなで食べればいいじゃん」

沈黙。

大人たちが固まる。

パン屋が腕を組む。

「だから偏るんだって」

真顔で。

俺はため息。

そして言う。

「じゃあこうしよう」

全員が見る。

やめろ期待するな。

「今日買ったやつは、明日買えないルール」

「順番制」

静かになる。

単純。

だが。

公平。

鍛冶屋が言う。

「明日まで生きてたら食えるな」

縁起悪い。

町人Aがうなずく。

町人Bも渋々うなずく。

子どもはよく分かってないが笑う。

パンが焼き上がる。

やたらでかい。

本当にでかい。

顔くらいある。

なんで一個にした。

初日は町人Aが買った。

抱えて帰る。

みんなが見送る。

なんだこの儀式。

翌日。

また行列。

だが一人減っている。

平和。

三日目。

事件が起きる。

パンが、失敗した。

膨らみすぎて割れた。

形がいびつ。

パン屋が頭を抱える。

「これは売れん」

いや売れ。

並んでいた町人たちが言う。

「それでもいい」

「味は同じだろ」

優しい。

結局。

その日は“割れパンの日”になった。

むしろ人気が出た。

意味が分からない。

数日後。

掲示板に新しい紙。

【超巨大ふわふわパン 予約制】

発展するな。

町人が俺に言う。

「参謀殿のおかげだ」

違う。

俺は順番を提案しただけだ。

ミレアが言う。

「小規模社会における資源分配の成功例」

やめろ論文化するな。

夜。

宿でパンをかじる。

普通サイズ。

これでいい。

俺は思う。

巨大核より難しい。

パン一個の方が。

翌朝。

また張り紙。

【新作:超巨大ふわふわパン改

(今度は2個)】

増えた。

争い再燃の予感。

俺はギルドの壁に張り付く。

目立つと巻き込まれる。

学習済みだ。

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