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小物の異世界生活  作者: おこげ


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35/69

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昼下がりだった。

俺はギルドの端で干からびていた。

依頼は畑三件。

生活費枠、安定。

平和だ。

突然。

空が暗くなる。

雲ではない。

巨大な“影”。

町全体が薄暗くなる。

音はない。

ただ、影だけ。

全員が空を見る。

そこには何もない。

なのに影。

理不尽。

ミレアが目を細める。

「王都の第零種」

やっぱりお前知ってる。

「動きました」

軽いな。

「本体は王都上空」

「影だけがこちらへ」

影って何だ。

日光浴びたくないのか。

町人がざわつく。

「日食?」 「呪い?」

パン屋が言う。

「売上落ちる」

一番現実的。

影は動かない。

町の真上で固定。

嫌な感じ。

暑くも寒くもない。

ただ、圧迫感。

ミレアが地面にチョークで円を描く。

観測開始。

やめろ研究モード。

「核は物理的干渉ではなく」

「概念干渉」

嫌な単語。

説明を雑にまとめると。

第零種は“可能性を増幅する装置”。

王都で起動すると、

影響範囲の町の“傾向”が強まる。

嫌な予感しかしない。

数分後。

異変が起きた。

ギルド掲示板。

依頼が増えている。

普通に増えている。

しかも。

全部“判断が必要な案件”。

・井戸を埋めるか否か

・防壁を高くするか否か

・税を変えるか否か

重い。

町人の議論が止まらない。

普段は適当なのに、

今日は全員本気。

妙に熱い。

ミレアが言う。

「町の特性が増幅」

「この町は“決断依存型”」

知らん特性を生やすな。

つまり。

俺が毎回小規模判断してきたせいで、

町が“判断待ち体質”になっているらしい。

やめろ。

俺のせいか。

影が揺れる。

空気が重くなる。

町人が一斉に俺を見る。

やめろ。

「参謀殿、どうする」

知らん。

俺は猫担当だ。

ミレアが冷静に言う。

「放置すると」

「町全体が決断過多で崩壊」

何それ。

「逆に」

「決断を減らせば?」

「影は弱まる可能性」

つまり。

“考えるな”ってことか。

俺は深呼吸。

そして言う。

「今日は全部保留」

町人がざわつく。

「でも」

「でもじゃない」

「井戸も保留」

「税も保留」

「防壁も保留」

「今日はパン食って寝ろ」

雑。

一瞬、沈黙。

次の瞬間。

妙に空気が軽くなる。

影が、薄くなる。

ミレアが空を見上げる。

「反応あり」

本当に効いている。

なぜだ。

町人たちが少し笑う。

「まあ明日でいいか」

「急がなくても死なないな」

空気がゆるむ。

影がさらに薄くなる。

どうやら。

この町は“頑張りすぎると増幅される”。

ゆるいと安定。

最悪だ。

ミレアが言う。

「第零種は可能性を拡張する装置」

「ですが」

「町の本質は変えられない」

影が、完全に消える。

空が明るくなる。

王都の方向で小さな光。

どうやら本体は安定したらしい。

町人が拍手する。

なぜだ。

俺は何もしてない。

保留しただけ。

ギルド掲示板。

依頼が半分に減る。

残ったのは。

【畑の水路掃除】

安心感。

ミレアが隣に立つ。

「面白いですね」

「影一つで社会構造が露呈」

楽しそうだな。

「お前」

「王都行かないのか」

「今は観察対象がここに」

軽い理由で残るな。

俺は空を見る。

さっきまで世界規模。

今はただの青空。

「結論」

ミレアが言う。

「この町は大規模に向かない」

知ってる。

「だからこそ」

「中心に影が落ちる」

やめろ。

意味深に締めるな。

その夜。

掲示板に新しい張り紙。

【本日の議論禁止】

誰が書いた。

たぶん俺だ。

無意識。

俺は思う。

巨大核が動いても、

結局やることは同じ。

決めない勇気。

保留の才能。

最悪な適性だ。

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