表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小物の異世界生活  作者: おこげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/69

1

俺はまず、自分が死んだことを認めたくなかった。

理由は簡単だ。

死ぬほどの理由じゃなかったから。


「……カップ麺で?」

白い空間で、俺は三回聞いた。


「はい、カップ麺で」

答える女は、さっきから一ミリも悪びれていない。

地味なローブ。

だらしない座り方。

神々しさゼロ。

「もっとこう……トラックとか、階段とか……」

「期待しすぎ」

「死因ガチャ外れすぎでは?」


女は書類をめくりながら言った。

「君、運悪いから」

「雑に人格否定しないでもらえます?」

「で、俺は今どこに?」

「死後の待合室」

「待合室多機能すぎない?」

「最近混んでて」

「死者増えてるんですか」

「だいたい君みたいなの」


失礼極まりない。

俺は周囲を見回した。

本当に何もない。

椅子と机と、女神(仮)だけ。


「ちなみに俺、

善行とか徳とか、ほぼ積んでないんですが」

「知ってる」

「即答やめて?」


女はペンをくるくる回しながら言った。

「じゃあ説明するね。

君はこれから異世界行き」

「はいはい」

「勇者じゃない」

「でしょうね」

「チートもない」

「知ってました」

「努力前提」

「やめてください」


女は顔を上げた。

「でも一つだけ、救いがある」

「その言い方、信用ならない」

「君、小物でしょ」

「自己申告する前に言わないで」

「小物はね、案外しぶとい」


……褒めてる?

「異世界って危険ですよね」

「うん」

「命懸けですよね」

「うん」

「俺、無理なんですけど」

「でも行く」

「拒否権は」

「ない」


即答だった。

女は立ち上がり、指を一本立てた。


「ただし、君の世界設定は“低難易度寄り”」

「それ、どういう……」

「魔王はいるけど、遠い」

「遠いなら安心」

「近づかなければ」

「近づきません!絶対!」

「あと、村は平和」

「最高」

「税金重い」

「現実じゃん」

「ちなみに、

異世界での目標とかある?」

俺は即答した。

「安全第一」

「小物だねえ」

「生き延びた人が勝ちです」

女は少しだけ笑った。

「いいね。

そういう人、意外と長生きする」

「じゃ、行ってらっしゃい」

「ちょっと待って。

あなたの名前は?」

女は一瞬考えてから答えた。

「リーネ」

「女神?」

「元・調整係」

夢がない。


リーネが言った。

「無理しなくていいから」

「それ死亡フラグですよね」

「君の場合、

無理した瞬間が死亡フラグ」

ひどい。



目を開けたら、草の上だった。

空が青い。

俺はゆっくり起き上がり、

第一声をこう決めた。


「……まず、働かない方向で考えよう」

この異世界で、

一番小さい志を胸に。

物語は、

ものすごく情けなく始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ