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二度目の冒険は『低レベル縛り』でいきましょう~『自称』ドMの女勇者ちゃんと一緒に、魔王になったヤンデレ妹を討伐します~  作者: フーラー
第6章

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6-3 この時代に、マルティナの歳で『初心な少女』な奴がいると思ってたのか?

それから数時間たって、俺は必要なアイテムを全て荷物袋に入れ終え、陛下に別れを告げた。



(それにしても、よかった……)


陛下には、ロナに関する『あるお願い』をしたが、これは聞き入れてくれた。

正直、この話が通らなかったらどうするべきかは考えていなかったためだ。



(陛下になら……この世界の行く末を任せられるな……。マルティナのこともお願いしたし、これで後顧の憂いはない、か……)



なんだかんだで、俺は陛下に世話になることが多かった。

特に今回渡してくれたアイテムは、どれも希少なレアアイテムばかりだ。これを気前よく渡してくれたのだから、俺はそれに報いなくては。


そう思いながら、俺は天幕に戻ってきた。



「ただいま、マルティナ」

「おかえりシイル! ご飯できてるよ!」


そういって、マルティナは俺にスープを渡してくれた。

彼女の得意料理であるソリャンカだ。現実世界ではロシアなどでよく食べられている。



「へえ、旨そうだな。……ところでセドナは?」

「うん、ここに来るまでに負傷した兵隊さんのお世話をしたいってさ。今日は朝までコースだって」


なるほど、彼女は衛生兵だったのだから、そういう仕事の方が寧ろ本領か。

そう思いながら、俺は頷いた。



マルティナはそういうと、俺にしなだれかかってきた。


「だからさ、シイル……今日は朝まで二人っきりだね……」

「ああ、そうだな……」



ニルバナの話が真実だとすると、マルティナは……俺に好意があるということだ。

正直、認めたくはなかった。


俺はロナの気持ちを蔑ろにしたせいで、彼女を魔王にまでしてしまった。

そんな俺が、打算抜きで誰かに愛される資格はない。そう思ってたからだ。


だが、マルティナは俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、ぽつりと呟く。



「ねえ、シイル……? 魔王城に向かうのが明日って、本当?」

「ああ。もう兵士たちの準備ができているらしいからな」

「そうなんだね……やっぱ、ニルバナが色々やっていたんだろうね」

「ったく……。なんていうか、あいつの掌の上って感じだよな……」



正直『俺たちが到着した、その翌日に軍隊が魔王城に向けて行軍を開始する』なんて、タイミングが良すぎる。ニルバナは、よほどうまく計画を練っていたのだろう。


そう思いながらも、マルティナはぽつりと呟く。



「シイル? ……やっぱさ、シイルはおかしいよ?」

「どうしてだ?」

「だってさ。今夜は二人っきりで、明日は死んじゃうかもしれないでしょ?」

「……そうだな……」

「なのに、あたしを抱こうとしない。変だよ」

「……は?」



一瞬、聴き違いかと思った。

だがマルティナは、突然俺を天幕の中に引っ張りこんでくる。

その瞳は、いつもの可愛らしい少女の目じゃない。どこか覚悟を決めた目だ。


「うわ!」


思わず俺は耐性を崩し、布団の上に倒れこんだ。

そしてマルティナは上着を脱いで肌着だけの姿になると、上から俺を覗き込んだ。



「……前からずっと言ってたよね。あたしはシイルの『モノ』だって。それにあたしは『ドM』だって。だから、シイルがあたしに何してもいいんだってこと、何度も伝えてたつもりだよ?」

「……あ、ああ……」

「それに、何度もアプローチしたよね? こうやって薄着で、シイルにくっついてさ? ……なのに……シイルはあたしを抱こうとしない。変だよ?」

「変って言われても、まだ14歳だろ、マルティナは……」

「だから何? 普通にお母さんになってる年齢じゃん」



そういえば、この世界では14歳で結婚するのは珍しくない。

マルティナにはまだ、性知識はないと考えていたが、それは大きな誤解だったのだ。


……俺はどうして、こう女性の気持ちが分からないんだ。

そう思っていると、マルティナはフフ……と小悪魔のような目で微笑んだ。



「けどさ。理由は分かってるよ、シイル? ……シイルは優しいから、理性が邪魔してあたしに何もしなかったんだよね? ……だからさ、あたしが助けたげるね? いつもシイルが助けてくれたお礼だと思って?」

「……それは……!」


そういうと、マルティナは懐にある小さな布袋から『野生の護符』を取り出した。

……装備すると能力が大幅に上がり、装備して戦うと『理性を失う』というヤバいデメリットを持っている。以前セドナが落としたと言っていたものだ。



「どうしてお前が持ってるんだ!?」

「あの爆発のあと、落ちてきたんだ……。セドナに返そうとも思ったけど、事情を話したら、あたしにくれたんだ。『シイルはマルティナのことが好きなのは分かるよ。だから、お前がそれを使うのは、あいつにとって幸せに決まってるよな』って……」



……そうだ、セドナはロボットだった。

あいつは、いわゆる『家族としての好き』と『異性としての好き』の区別がついていないのだろう。俺はそう思うと、心の中であいつに毒づいた。


そしてマルティナは俺を押さえつけながら、俺にぽつりとつぶやく。


「何度も言ってたけど、改めて言うね、シイル? ……あたしは、シイルが好き。だから、シイルがしたいことは、心でも体でも、何でも受け入れたいと思ってるの。……フフ、凄く『都合の良い女』でしょ? 喜んでくれないの?」

「……俺は……マルティナにそんなことを望んでない!」


確かに、人格を持たずに主人公を一切否定せず、そして体はいつでも差し出すヒロインはある意味男性にとっては『理想の女の子』だろう。だが、俺はその役をマルティナに押し付けたくはない。



「はい、できたよ? シイル?」



だが、マルティナは俺の意見を聴かずに、野生の護符を俺の服に取り付けた。



「…………!」

「いいよ、シイル! ……あたしを『モノ』みたいに扱って!」



そして次の瞬間、俺はマルティナを抱きしめていた。

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