8 クラスメイトと再会します
そんな風に毎日が過ぎていき、この世界に連れてこられて1年が経った。
訓練中心だった元クラスメイト達は、休日に城下町に出るようになっていた。そうして、王城の外へでるようになったクラスメイト達は、ハンバーガーを売っている私の店にもやってくるようになった。
真っ先にここを訪ねてくれたのは竜崎さんと向田さんの二人だった。
それはお店を開業して間もない頃。私ってば皆と別行動が多かったし、食事もズレていたせいもあって、クラスメイトの大半は私が城下におりたことを知らなかったらしい。自分達も訓練、訓練で真面目に取り組んでいたものね。
「お城の人に聞いたの。今まで知らなくてごめんなさい」
そんなふうに最初に謝られてしまった。
「和里田さん、元気そうで良かった。みんなそれぞれで分かれていたから、貴方がお城から出たってしばらく知らなかったの。もう少し前にお城の人に話をきいたのだけれど、訓練に目処がつくまで城下にでられなかったので、今まで会いに来られなかったの。言い訳みたいでごめんなさい」
竜崎さんは、加奈子とも仲が良かったから私のことも気にかけてくれていたみたい。でも、聖女さまだから色々と忙しかったんだと思う。
「いやー、謝られるようなことなんてないよ。私の能力って魔物関係ではなんの役にも立ちそうになかったし。だから、お城からとっとと出ちゃった方がいいかなと思って。私も、皆、訓練とかで忙しいかなって何も話をせずに出ちゃったし」
ちょっとワタワタしちゃった。謝られるようなことなんかないのに。私だって誰にも相談も話もしていないから、気が付かなくて当たり前なのに。
「今はね、私の能力、料理に向いているって判ったから良かったよ。でも、ごめんね。そちらの役に立ちそうもなくって」
そう笑顔で言える。だって、本当に気にしてくれていたことが分かったから。
「そうなの。お店を開いたって聞いたの。なにかお祝いをと思ったのだけど何が良いかよく解らなくて。よかったら飾ってくれるかな」
竜崎さんがくれたのは、花束と花瓶だった。そういえば、お店を開くときに花輪とかを送ったりするよね、それかな。
「ありがとう。じゃあ、さっそく飾らせてもらう」
そう言って、お店の受付カウンターに花束を飾る。
「まあ、取りあえず二人共、料理食べていって。ここ、テイクアウト専門だから食べるとこないか。中入ってよ、狭いけど」
そうして、2人にハンバーガーとフライドポテト、スムージーをご馳走した。本当はね、シェイクを作りたかった。だけどシェイクはできなかったんだ、だって作り方を知らないから。スマホでググればいいんだけど、そんなものないからね。
それでも、久々のファストフードに二人ともとっても喜んでくれた。
「ハンバーガー、食べられるなんて思わなかった」
竜崎さんの顔がほころんでいる。
「フライドポテト、◯ックの細いのも美味しかったけど、この少し太めも美味しいね」
向田さんもニコニコだ。フライドポテトはこの地域のお芋さんの形で細めよりもちょっと太いほうが良いかしらと思ってそうしている。でも、言われて今度細いのも作ってみようかって思った。
お土産に皆の分を渡した。ハンバーガーとフライドポテト、嫌いな人はいないよね?
それが宣伝になってしまったらしい。話を聞いて、ハンバーガーを食べた他の面々が自分たちの訓練休みの時などに、訪れてくれるようになったのだ。
「すげえ、本当にハンバーガーが売ってる」
「おい、餃子とかシュウマイがあるぞ。ラーメンはないのか」
「おお、ラーメン食いたいな」
「ごめん、ラーメンは無理。調理方法っていうか、スープとか中華麺の作り方がわかんない」
「残念」
そんなふうにやり取りしていくの、楽しい。因みに、その時その場にいた人達の中では、ラーメンスープと中華麺の作り方を知っている人はいなかった。
ただ、スパゲッティの麺を重曹で茹でると中華麺ぽいっていう情報が手に入った。でも、重曹ってここだとなんなのだろう。
入れ替わり立ち代わりやってくるクラスメイト達。一人で来る人はいなくって、大体が3、4人でやってくる。単独行動は控えているみたい。
やっぱり、みんなハンバーガーは好きだよね。でも、ごめん。ラーメンはマゼコゼでもできそうもない。
「そっか、お前の力って料理向きだったんか。でも、良かったじゃん。手に職ついてさ」
なんてことを言ってくれたのは、佐々木君だ。確か戦闘系の称号じゃなかったっけ。腰に剣を差しているから剣士かな? ちょっと安心したような表情で笑ってくれたので、きっと前向きな意味で言ってくれたんだと思う。
「頑張って、ラーメンの作り方を研究してくれ」
なんて彼と一緒に来ていた佐藤君が付け加えていたけれども。うん、私もラーメンが食べたくなった。でも、料理全般の能力を持っているわけではないので、すぐには無理だと思うって答えておいた。
「すぐじゃなくたっていいさ、期待しているな」
ちょっと真剣な顔をする佐々木君。
「スープ考えると醤油がほしいよなあ。醤油、ここでは見かけないけど」
「でも、塩ラーメンとかもあるじゃん」
そんなやりとりをして、一緒に笑いあった。
私とあまり話をしたことのないクラスメイトも「コントン」で「グチャグチャ」って出た結果が印象深くて、私のこと覚えてくれていたみたい。私自身は、結果を見た直後は、どう考えていいかも判らなかったけど。
そういえば、王城にいた時に顔を合わせると皆向こうから声をかけてくれていた。あの時、私自身は自分のことだけで目一杯になっちゃっていたけど、皆気にかけてくれていたんだ。今になって気がついた。
王城でもハンバーガーが噂になっているのだそうだ。竜崎さんが持ち帰った私のお土産が、注目の的になったとか。
クラスメイトとは、お互いちょっと気まずかった雰囲気も最初はあったけど、色々とおしゃべりとかできるようになってすごく楽しい。
さて、ハンバーガーや中華まん、餃子などなど私の提供している食べ物は、人気になったからか、ハンガーガーとかを売る屋台とかも出てきました。
どんどん売ってください、流行ってください。だって、レシピは商業ギルドに登録したのだ。そのレシピを買って商売してくれているんです。
そうです。レシピが売れれば、それの一部は私の懐に入っちゃうのです。不労所得ってやつですね。おお、異世界転生モノっぽい。
でもね、味も量もうちのが一番おいしいって言ってもらった、カイさんに。そうでしょう、そうでしょう。元祖ですもの。一度に作れる量だって、私がトップですよ。コントンさんはハンバーガーを作るのに大変有能なのです。
私にとっては、穏やかな日常が過ぎていく。このまま緩やかに日々が過ぎて言ってくれるといいな、そう思っていた。




