22 最果ての森
夢を見た。
後ろから刺された。刃には毒でも塗ってあったんだろう。
もう、俺は用済みということなのか。
「失敗しやがって。生き残りがいて、こいつの顔を見たとかいう話だ」
「こいつから足がつく可能性があるから、始末しろってさ」
目が霞んでいく。
「おい、死体は見つからないところに持っていけ」
「見つからない所って?」
「そうだな、ここからなら最果ての森が近い。その奥に捨ててこい」
ぼんやりと話し声が聞こえる
「そんなところ、人は入れないっすよ」
「端まで行って、奥の方にはゴーレムにでも運ばせりゃいいだろう」
だんだん、気が遠くなる。
俺は死ぬのか。
魔法は使えないが、魔力は強いほうだと言われた。
だから、なかなか死にきれないのだろうか。
血みどろの手のままで、人を殺し続けただけ。
ゴミみたいに廃棄されるってわけだ。
散々利用した奴らは、のうのうと生きているのに。
ほとんど身体は動かない。荷物のようにして、どこかへ運ばれていく感覚だけがあった。
目が覚めた。まだ夜半だというのに。黒っぽい瘴気が濃くなっている森の中だから、緊張しているのかな。キノコ、なかなか見つからないな。でも、何か、大切なものが見つかりそうな、そんな予感がした。
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最果ての森。そこはすでにどす黒く歪な姿に変貌していた。
瘴気が濃く漂い、木々はねじ曲がって枯死している。生き残ったものは魔物と化して獲物を待ちわびて蠢き、魔物同士も喰らい合い、より強大な異形へと変わり果てていた。
ここまで案内を頼んでいた冒険者は、離れた廃村で待機してもらっている。瘴気のあまりの強さに、彼らでは先に進めなかったためだ。称号のおかげだろうか、竜崎達三人は奥に進めた。それでも、決して楽な道ではない。瘴気のせいで空気が黒く染まり、ねっとり絡みついてくるようで体が重く感じる。
「くそ、この瘴気の濃度ではこれ以上進めない」
最果ての森の浅い部分までは辿り着いたものの、竜崎達は立ち往生していた。この森に至るまでは頻繁に現れてた魔物も、深部に入るにつれて、かえって姿を見せなく成っている。
「森って話だけど、まるで荒野だな。黒く薄汚れたような枯れ木ばかりだ。そのくせ奥の方は暗くても通せないっていうのは、不気味すぎるぜ」
華山が苦い顔をしてこぼす。葉を落とし、ひしゃげたような木々は、まるで断末魔の叫びを上げて朽ち果てたかのようだ。
「ここから、中心に向かって徐々に浄化をかけてみるわ」
竜崎が決心も新たに断言する。
「竜崎さん。あまり無理をするなよ。少しずつ進めていけばいいんだから。魔物の対応は任せてくれ。そうは言っても、ここにきて魔物も少なくなったけどな」
真山が柔らかく笑い、竜崎の肩を叩く。華山も表情を改めて頷いた。そんな二人を、竜崎は頼もしく思う。
浄化を始めた。だが、瘴気の範囲は多少狭まったものの、完全になくなる気配はない。一気に能力を使いすぎたのか、竜崎がよろめき、真山が慌てて支えた。
「何度かに分けて浄化をしていけばいい。最初っから飛ばさなくても大丈夫だよ」
華山が軽く言った。彼女が身を削って行なった浄化の甲斐あって、周囲はわずかに明かりが差した。しかし、森全体でみれば変化が微々たるものだ。それでも、周辺の空気はいくぶん軽くなった気がした。
三人は拠点を作ろうと、ある程度の広さを確保できる場所を見つけた。マットを出し、竜崎を横にして少し休ませる。
廃村で確保した食料もあるが、時間がかかるようなら一旦戻ることも考えたほうが良いかもしれない。そんな話をしながら、華山と真山は野営の準備を進めた。
それから三日が経った。遅々として進まぬ作業を、彼女たちは根気よく続けていた。
その時だった。空気までをも染め上げていた瘴気が、一瞬で霧散した。温かな光が、森の奥から溢れ出す。
「……何が、起きた?」




