15 では、出発です
王都へ無事に戻ってから、ジギルさんとマーサさんに熊のお肉をお披露目した。
「えっとですね。実は、結界が張れるようになったみたいだったんです。それもあって今回森へ行ってみて試したんです」
コントンのレベルアップについて説明し、その結界のお陰で熊肉をゲットした話をかい摘んで話した。
「すっごい勢いでこっちに来たんで、その反動でお亡くなりになっちゃったみたいで。勿体ないからお肉にして持ってきました」
そう言ったら、二人に呆れられてしまった。仕方がない。それで、自分の身は護れるから北へ行きたいという希望を話した。
「カイさん達だけじゃなく、友達が魔物と戦っているんです。皆が倒した魔物のお肉、勿体ないかなっと。だからお肉の料理をしに行きたいです。みんなにハンバーガーを提供したいなと」
私の言葉にジギルさんに大笑いされてしまった。なんだろう、カッコよく皆に美味しい料理を食べてもらいたいと言おうと思っていたのに、口からでてきたのはそんな言葉だった。
「まったく。あんたって子は」
マーサさんが笑いながらも呆れているみたいな口調で、そういいながら私の頭を撫でてくれた。
「だが、大量の料理を作るんなら今日みたいな装備じゃあ無理だろう」
ジギルさんがそんな事を言ってくれた。どうも、前向きに考えてくれるみたい。
「そうなんですよね。なにかキッチンカーみたいなものがあると便利だなと思うんですけど」
キッチンカーにキャンピングカーをあわせたような、寝泊まりできる移動キッチンみたいなものがあったら便利だなという話をしてみる。
「ジギルさん、そんなような便利な車、というか移動式の小屋みたいなのってありませんか?」
腕を組んで少し考えたように沈黙した後、ジギルさんはポンと私の頭を軽く叩いた。
「よし、ちょっと知り合いに聞いてみよう。だから、勝手に黙って出かけたりするなよ」
反対されたら、用意を整えてこっそり旅に出ていこうかしらとも考えていたことを見透かされたような気がする。コントンってちょっとえげつないスキルだから、二人には迷惑かけたくないなって思っていたのだ。
「はい。お願いします」
そういう事になった。そうして数日経った後、私は近くの工房へジギルさんと出向いた。
「おう、ジギル。そっちがハンバーガーの嬢ちゃんか」
ゴツい感じのいかにも職人さんという風体の男の人が出迎えてくれた。ここはあのスープの男の子がいる工房だ。どうやら魔道具工房のようだ。このゴツい人は工房の親方だという。
「いつも楽しみにしているんだぜ。んで、移動式キッチンだったな。幾つかの区画を組み合わせれば、そういうのができなくはない」
ハンバーガーと不労所得でとっても稼いでいるので、予算はたっぷり提示できた。大枠としては、部屋に取り付ける家具のようなものをボックスに組み合わせればできるのではないかという話だったのだ。
「これが部屋用のボックスだ。そんで、これに幾つか必要な用具を取り付けるって感じなら手軽にできるぞ」
用具のリストを眺めていく。最低限必要な道具は、広い調理台とコンロと冷蔵冷凍庫。おっと、忘れちゃいけない貯水槽。これは屋根部分で雨水タンクとかもいるかな。浄化槽も必要? あとオーブンはあると便利、という話を工房長のハイドさんとジギルさんと三人でああだこうだという話をする。
「でも、屋台みたいに引っ張っていくのか。嬢ちゃんの細腕じゃあ、無理だろう」
残念ながらこの世界、自動車がない。あればキッチンカーを希望したいところだ。ここにあるのは馬かゴーレム馬が牽く馬車とか。そうそうゴーレム馬がいるのよね。ここは私達がいた世界とは違って魔法があって、魔道具が発達している。魔道具は魔力をためた魔晶石っていうので動くんだよね。電池で動く電動機械っていうイメージが近いかな。洗濯機とかについていた石は、魔晶石だったわけだ。
で、ゴーレムは私の感覚だと電池で動くロボット。ゴーレム馬は額に魔晶石の部分があって、そこに魔力を注ぎ込むと動くんだって。なんか、浪漫だね。本物の馬が牽く馬車だと休憩とか必要になるんだって聞いたことがあるけど、ゴーレム馬にそれはないそうで。だから、魔力が一定上減るまでは進んでいく。感覚的にはこれが自動車に近いかな。
「そうだな。ゴーレム馬とかに牽かせて、馬車みたいに御者台があればいいんだろうけど」
ハイドさんの言葉に、ジギルさんは私の方をみて首をふる。
「いや、マッキーはゴーレム馬の免許がない。あれは取るのに時間がかかるんだ」
「んじゃ、移動はどうするかな」
二人の話はどんどん進んでいく。え、ゴーレム馬って免許が必要なの? 初めて知った事実よ。少し置いてけぼりを食らいつつも、楽しそうなおじさん二人が盛り上がり、大方の設計が整ったようだ。
そうして10日も経った頃、再び工房へジギルさんと向かった。仕事、早くない?
「わあ、可愛い」
オレンジ色の大きめでノッポな感じの可愛い小屋に車輪が付いているような形態。車輪は大きめで左右に二つずつついている。側面を跳ね上げると、そのまま「カウンター」になる仕組みのようだ。
「嬢ちゃんのキッチンカーだからな。可愛らしくしてみたぜ」
喜んでいる私を見て、親方が嬉しそうに言う。中を覗かせてもらうと、下段がキッチンになっている。その上にロフトみたいな形で寝る場所が確保できている。ベッドは無理だけど、布団を敷けますね。外に出て小屋の先頭に馬具がついているのをみて聞いてみた。
「これ、割と大きいですよね。ゴーレム馬はだめだって言っていましたけど、馬ですか」
だが、あのスープの少年が連れてきたのはロバだった。いやロバっぽいけど毛色がちょっとオレンジがかっている。
「こいつはローバンっていう奴でな。力持ちだし悪い路面も平気なやつだ。食べる量も馬よりも少ない」
「奮発してもらったんで、重さを軽減する魔道具も付けてある。こいつが小屋を牽いて嬢ちゃんは一緒に歩いてもらうことになる。コイツの歩く速度は人と同じぐらいだから、問題はないだろう」
そうしてマッキーはキッチンロバ車を手に入れた! イエーイ!! ロバにはガーベラという名前を付けた。
準備を整えて、王都の城門に来ている。ジギルさんとマーサさん、工房の親方達がお見送りに来てくれた。
「気をつけていくんだぞ。あまり危ないことはするんじゃないぞ」
ジギルさんは色々と注意事項を言ってくれる。マーサさんがそんなジギルさんをポスンと叩く。
「マッキーはちゃんと分かっているよ。全く子離れできない人だね」
なんて言って笑いながら。
「それでは、皆さん。行ってきます!」
カイさん達も、クラスメイトのみんなも、向かっているのは魔物が発生している北方の地。私達もそちらに向かって進みましょう!




