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異世界召喚されたけど、ハンバーガーを売ってます  作者: 桃田


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 同行している三人の冒険者や勇者の称号を持つ華山は、行く手を阻む魔物を剣で切り裂く。少し後ろに控えていた賢者の称号をもつ真山は、魔法により形成した火矢を叩き込む。


 魔物たちの遺骸は、放っておけば次の魔物を寄せることにもなるので竜崎が【浄化】によって消失させる。彼女の浄化は理から外れたものを消し去るものであり、魔物たちの存在を消すという。

 そうやって進んできた森の奥深く、黒い塊がグルグルと渦巻いている。周辺の木々は捩じ曲がり、黒ずんでその生命を終えている。その場所に、ようやくたどり着いた。


「これが、瘴気溜まり……」

 最果ての森まではまだ遠い。だが、薄くとも瘴気が流れ出しひろがっていたことで、陰の気が溜まっている地点には矮小とはいえ瘴気溜まりが形成されてきている。彼らはそれを初めて目にした。

「竜崎さん、大丈夫?」


 少し顔色が悪い竜崎へ、心配そうに真山が声をかける。真山の隣に立つ華山が厳しい顔つきで黒い塊を見つめている。


 瘴気溜まりの周辺は陰気が強くなりすぎるためか、魔物ですらも近寄らないようだ。お陰で魔物はいないのだが、陰気は人の体にも影響を及ぼすようで、一緒にいる彼らも顔色が悪い。呼吸をしている空気も重い感じがするし、なんとなく気分も沈んでいくようだ。あまり長い時間このままでいるのは、よくないだろう。


【浄化】


 黒い塊が徐々に薄れ、消失した。辺りの枯れ果てた木々はそのままだが、空気が澄んだように感じるのは気の所為ではないのだろう。


「戻るには日が暮れる。今晩はここで過ごそう」

 案内兼護衛と言われて同行している三人の冒険者たちと共に、野宿の用意にとりかかる。一息ついて、焚き火を眺めながら、携帯食を口にする。


「ハンバーガーが食べたいな」

 勇者の華山がぽつりと呟いたのを聞いて、賢者の真山がちょっと苦く笑う。


「そうね。テリヤキバーガーがいいわ」

 竜崎が答えて、ふっと笑う。


和里田(わりた)さん、元気かしら。この旅が終わったら、またみんなで食べに行きましょう。楽しみね」

 そう続けた竜崎の言葉を受けて、真山はちょっと遠くを見る。


「そうだね。和里田(わりた)さんには頑張ってもらって、ラーメンを作って欲しいなぁ」

「あ、俺も食べたいなラーメン。できればカレーも食べたい」


 味気ない携帯食を食べながらも、あれが食べたいこれが食べたいなんて話になってしまった。

「なんだそんな美味そうなものがあるんだ」

 一緒に来ている冒険者達も一緒になってそんな話に興じる。


 野宿も多くなったが、それにも慣れつつある一行だった。念の為、結界石を四方に設置している。

先程の浄化で清浄となったこの場所には魔物が近づいてくることもないだろうし、新たに産出されることもないだろうから本当に念の為にすぎない。


だが、こうした一つ一つの手順はこの先を考えれば癖にしておいた方が良い。

 北方にある最果ての森への道程は、ただ進むだけならばもう少し早く着く。だが、薄く漏れた瘴気によって小さな瘴気溜まりになりそうな場所が幾つか形成されており、それらの場所を浄化しながら進んでいるために時間がかけていかなければならない。長丁場になりそうなこの旅程を、ずっと気を張り詰めたままで進めるわけもない。だから、気を抜きすぎてはいけないが、少し気楽にできるときはそうした方が良いだろう。冒険者達はそう思って、彼ら三人には今日はこれ以上何も言わずに話を合わせていた。


 竜崎は、魔法の師匠に能力は使うほどその威力が増すと教わっている。だから、こうした《《寄り道》》は決して無駄ではないはずだ。この先、一つ一つをこなしていくことこそ、自分の力になると信じている。


(小さな瘴気溜まり、魔物の討伐。確実に力がましているのを実感できるもの。大丈夫。皆も頑張っている。きっと最果ての森にたどり着いて、瘴気溜まりを除去して帰る)

 木のカップに注いだお茶を一口のみ、ほうっと息を吐く。





 竜崎さん達が旅立っていった。


 だけれども、状況は思わしくないようだ。王都でも物が少しずつ足りなくなって物価がどんどん上がってきている。各地からの輸送に滞りがでているとかいうし、王都周辺の農業地帯も魔物の出没頻度が上がっていると聞く。


 隣国でもスタンピードが起きたそうな。クラスメイトが派遣され、色々と活躍したらしい。皆、無事だといいな。あれから皆にと、ハンバーガーセットなどを王城へ出向いて差し入れしている。兵士長のドミニクさんに言付けて、渡してもらっているから届いていると思う。皆は忙しくて食べに来られないって聞いたから。私にできるのって、このくらいだから。


 それでも久しぶりに王城に残っているクラスメイトが食べに来てくれた。差し入れのお礼に来てくれたみたいだ。


「バラバラに派遣しない方がいいってことで、戦闘班の人達は一つの部隊として、あちこち派遣されたりしているんだ」


 クラスメイトを一つの部隊にして活動するというのは、竜崎さんの提案が通ったからだろう。


「差し入れしてもらったハンバーガーは、送ったんだ。みんな喜んでいたよ。携帯食ってね、マズイんだって。でも栄養価だけは高いっていうんで、そればっかりだって」


 人は無理だけど物資のやり取りができる魔法陣があるそうで、それでハンバーガーたちを送ってくれたんだそうだ。


「生産系は、王城で生産を続けるグループと戦闘系の班に付いていくグループに分かれたんだ。薬なんかを調合できるからって、佐藤は戦闘班にくっついていってる。この前は悪かったって言っていたよ」

 ポツリポツリと話をしてくれるけれど、皆少し疲れた顔をしている。


「王城組も移動することになったんだ。だから、しばらくはココにこられなくなっちゃった。元気でね。戻ったら顔出すから」

「うん。そっちも元気でね。戻ってきたら皆に奢るよ」


 手を振って彼女たちは帰っていった。


 よくハンバーガーを買いに来てくれる冒険者の人達は、現状について色んな話をしてくれた。カイさん達の噂話も聞いている。無事に活躍しているみたいだ。カイさん達が先達みたいになって、竜崎さんの行く先の魔物を減らしてくれているのかもしれない。なんとなく、そんな気がした。


 竜崎さんたちは瘴気の発生源を浄化するために、聖女と勇者一行という形で旅立ったんだとも聞いた。瘴気に当てられた大型の魔物が何体も出現するようになっているから、前にいっていたみたいにあちらこちらの汚染された土地を浄化しながら進んでいると聞いている。







夢を見た。


 言われるがままに、人を殺していた。俺の手はどす黒く染まった。

 ある男を殺した時に、その子供は俺が殺した男にすがった。

 子供が俺を見た。

「ヒトゴロシ」

 その子供に、かつての誰かの面影を見た。両親が死んで、悲しんでいた姿。

 感情がほどける。


 目が覚めた。


(コントンのレベルが上がりました)

 レベルがコントンになった。


 誰かに呼ばれている。手を伸ばされている。そんな漠然とした想いに囚われている。

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