出張先で嵐に遭遇編 -美優side脳内再生-
官能的シーンが含まれています。ご注意ください。
「成田さん、羽田さん。お疲れ様でした。
お二人にはお世話になりました。本当に助かりました。こちら、大したことは出来ませんが、是非お召し上がりください。
また東京からこちらにお越しの際は是非改めてお礼させてください。」
イベント担当の岡山さんから一席を設けていただき、大阪支社の担当者の宮古さんからは
「今回は自分の手違いにより本当にご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。」
と平謝りされ成田と私の大阪業務は終了した。
明日には成田と東京に戻るのか…大阪楽しかったな…
午後の新幹線だから、午前中は成田とゆっくり過ごせるのかな…
ホテルでゆっくりとバスタブに浸かっているとベッドに置いていたスマホがなっている。
急いでバスタオルを巻いてスマホを取りに行くと成田からの電話だった。
「なあ、このホテルの最上階にバーがあるんだけど飲みに行かないか?」
「でも、今お風呂入ってて…」
「風呂? 今?」
「そう。電話がなってたから慌てて出てきたの。」
そういうと成田は黙ってしまった。
間が悪いな。
お風呂入る前だったら…
「じゃあ、あと30分したら…で、どう?」
30分か…30分なら髪乾かして、簡単なメイクして…間に合うかな…
このまま大阪の夜が終わっちゃうのも寂しいし。
成田と二人でお酒飲みたい。
「わかった。支度出来たら連絡するね。」
電話を切ってから急いで髪を乾かし、薄くメイクを施す。
鏡を見ると『やっぱり何か物足りない』と思い、成田と一緒に買い物した時に買ったマスカラをつける。
そして、成田に買ってもらったフェミニンなワンピースに身を包み成田に連絡する。
出張最後の夜に二人でホテルのバーで飲むなんて、何か起きちゃいそうな予感がしてならなかった。
「もしもし。羽田です。ごめんね。お待たせしました。」
約束の30分より少しオーバーしてしまったことを謝ってからエレベーターホールで待ち合わせをする。
「なんだか、ざわざわしてるけど今部屋? 誰かいるの?」
「いや…テレビ…かな…」
なんだか歯切れの悪い成田の声の向こうからエレベーターが到着する音が聞こえた。
「え? もうエレベーターホールにいるの? ごめん。急ぐね。」
「いや…今来たところで…」
待たせてイライラさせちゃったかな…
電話を切らずに、部屋のドアを開けるとそこに耳にスマホを当てている成田がいた。
「エレベーターホールってすぐそこだしさ…迎えに来た方が早いかと…」
「そんなに飲みたかった? ごめんね、待たせちゃって。」
一部屋だけ挟んだ所にあるエレベーターホールの上行きのボタンを押す。
最上階のバーはカウンター越しに夜景の望める雰囲気のいい店だった。
「俺はマティーニ。羽田は何にする?」
「カクテルってよく分からないんだけど、甘過ぎなくてフルーティで爽やかなのってありますか?」
「そうですね。ではバナナリキュールとウォッカとジンジャエールをベースにしたアンパイネンはいかがでしょう?」
「じゃあ、それをお願いします。」
「かしこまりました。」
「じゃあ乾杯。」
長い脚を組みマティーニを口にする姿がサマになっている成田はいつもにも増してイケメンだ。
他の女性客がこちらをチラチラと見ている程で、私が隣に座ってていいんだろうかと思ってしまう。
「大変だったけど、大阪楽しかったね。」
「そうだな。」
アルコールが少し入ったせいかいつもの厳しい成田ではなく、優しい顔をして私の目を見つめている。
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「そんなに見つめないで…」
「今日は自分の部屋に帰るのか?」
「そんな目で言われたら…」
「じゃあ、一緒に俺の部屋に行くか。」
「成田…」
エレベーターの中で握った手を引っ張られ軽いキスが落とされる。
部屋に着くと、ドアが閉まったと同時に成田は私を激しく抱き寄せ深いキスをする。
「お前が欲しい。」
気が付くとワンピースが脱がされていて下着だけになっていた。
ブラの左のストラップが肩から外れて左の乳房が露わになる。
成田は左胸の突端を口に含み丁寧に転がす。
唇へのキスに戻りそのままベッドに向かって後ずさりするように押されていく。
踵がベッドの縁にあたり後ろ向きにベッドに倒れ込む。
その勢いで成田は私に覆い被さる。
「美優…」
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「羽田…そろそろ帰るか。」
「あ…うん。」
カクテルを2杯ずつ飲んだところで妄想とこのシチュエーションの終了が告げられる。
エレベーターに乗ると、さっきの妄想で成田と繋いでいた右手と唇がやたらと寂しかった。
成田は私の部屋の前で少しだけ立ち止まり、何か言いたそうにしている。
「どうしたの?」
「あ、いや。なんでもない。」
やっぱり誘ってくれる訳ないよね。
「じゃ、おやすみ。」
成田は斜め向かいにある自分の部屋へと帰ってしまった。
私の妄想は妄想のまま終わった。
翌朝、コーヒーを飲みながら支度をしても時間を持て余す。
そう言えば午後の新幹線なので、ホテルをチェックアウトした後にかなりの時間がある。
一昨日の大阪に来た時よりも購入した服や会社のみんなへのお土産で意外と荷物が沢山だ。
大荷物で大阪の街をうろつくのもな…
成田はどうするつもりなんだろう。
ふとテレビを点けると情報番組の天気予報コーナーを放送しているところだった。
「今日の午後の天気です。春の嵐が吹き荒れ暴風雨となるでしょう。近畿から中部、北陸にかけて線状降水帯が発生するかもしれません。充分にお気を付けください。」
帰りは雨か…
傘買わなきゃな。
とお気楽に考えていた。
成田にチェックアウト後にどうするか相談してみようと電話をしてみる。
「おはよう。今日チェックアウト後にどうする?」
「このホテルに荷物を預けられるみたいだから、少し街に出て帰る前に荷物をピックアップしにくるっていうのはどう?」
「いいね。そうしよう。」
「支度は出来てるのか?」
「うん。もう出れるよ。」
「じゃあチェックアウトして朝飯食いに行くか。」
チェックアウトを済ませて荷物を預かってもらい二人で大阪最後の日を堪能しに出かける。
すると、さっきまで覗いていた青空がみるみるうちに暗雲に覆い尽くされ途端に大粒の雨が落ちてきた。
「そう言えばさっき天気予報で、今日春の嵐って言ってた。」
「まじか。ごめん。リサーチ不足だったな。」
急いで雨宿りのために近くの店に入る。
ガラガラと大きな音を立てて雷も轟き始めた。
外の様子を見ていると、道路に叩きつけるように雨が激しく降っている。
光ってから間もなくバリバリバリっと大きな音が鳴り響く。
「雷が近くなってきたな。」
窓の外には頭の上に鞄を掲げて走る人、傘が強風で上向きになって困ってる人を残し、大雨と強風と雷雨のせいで行きかう人々は建物内に収納され殆どいなくなっていた。
暫く待っても雨が静かになる様子がないので、スマホで雨雲の様子を調べてみる。
「大変! 岐阜羽島と名古屋の間に落雷があって新幹線が全面運休になってる。復旧の見込みがないって。」
「今日中には帰れないってことか?」
「どうする?」
「ホテルに延泊出来ないか聞いてみよう。」
そう言って成田がホテルに連絡を入れてみる。
「そうですか…わかりました。
みんな考える事は一緒だな。もう満室だそうだ。他のホテルも片っ端から調べてみよう。」
「そうだね。」
2人がかりで調べてみてもどのホテルにも空きはない。
「出遅れたな……周辺で大きなイベントがたくさんあったからな。」
とりあえず店を出て、荷物を取りにホテルへ戻り直接交渉してみることにした。
「申し訳ございません。先程、満室となってしまいました。」
直接交渉でも無理なものは無理だった。
まだやっと正午を回ったところだ。もしかすると今日中に復旧するかもしれない。そう思い新大阪駅の近くまで移動することにした。
「この辺のホテルも全滅だな。」
二人とも大雨の中の移動でびっしょりと濡れてしまっていて4月のこの時期ではまだ肌寒く体温を奪われていく。
「何か温かい物を食おう。」
近くのビストロに入り、店内の温かさにホッとする。
温かい飲み物と食事を注文し、暖を取りながら空きのあるホテルを探す。
「空きがないな。」
大雨が収まらないまま外はもう暗くなりかけていた。
ふとネオンが瞬き始める時間に成田が「空室」の文字を見つけた。
「あ、空室…」
私も振り返ってその文字を確認する。
「あれって…」
ラブホのネオンだ。
「背に腹は代えられなくないか?」
「でも……」
「心配するな。何にもしないよ。」
「心配はしてないけど…」
「…俺にとってはかなりの修行の場になりそうだけどな…」
「え? 何か言った?」
「いや、何も。」
「分かった。行こう。寒いし、お風呂入りたい。」
そうと決まれば、空室のネオンの光るラブホを二人で目指す。
「ますますびしょ濡れだな。先に風呂入れよ。」
部屋に入るなり成田がそう言ったので
「ありがとう。」とだけ言って駆け込むようにお風呂に入る。
早くでなきゃ。成田だって寒いよね。
バスローブを纏い髪も乾かさずに急いで出る。
「早いな。ちゃんと温まったか?」
「うん。急いで入って。成田も風邪引いちゃうから。」
ふと成田を見ると、上半身だけすっかり脱いで半裸の状態でズボンも脱ごうとしている所だった。
背が高く、スタイルがいいとは前々から思っていたけど、綺麗に筋肉の付いた姿態だった。
「ちょ…ちょっと…ここで脱がないで…」
「ああ、ごめん。服が濡れて冷たかったから。」
あんな綺麗な肉体美…顔だってこの上なくイケメンなのに…
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「美優。こっちへおいで。」
美しい姿態の成田がこちらに向かって両腕を広げている。
私は思わずその胸に飛び込み、鍛えられたその胸板に顔を埋める。
「まだ髪が濡れてるじゃないか。俺が乾かしてやるよ。」
ソファの端に座った成田の足の間にちょこんと身を置くと成田は丁寧に私の髪を乾かし始めた。
「綺麗な髪だな。」
そう言いながらまだ少し湿った私の髪にキスをする。
「よし。乾いた。」
ドライヤーをテーブルに置いた途端後ろからギュッと抱き締められる。
「成田…何もしないって…」
「そんなこと言ったか?」
「ううん。言ってない。」
バスローブの紐が解かれ私の身体に優しく手を這わす。
「擽ったい。」
成田の右手が私の頬に置かれると親指で頬を撫でながら深いキスを落とされる。
唇が離されると私を抱き上げベッドに運ばれる。
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「ふぅ~。温まった。」
バスローブから成田の逞しい胸板が覗いている。
私は妄想と現実が交錯して一瞬、胸に飛び込みたい衝動に駆られた。
いけない、いけない。妄想とごっちゃにしちゃダメよね。
「あれ? まだ髪が濡れてるじゃないか。俺が乾かしてやるよ。」
「え?」
バスルームからドライヤーを持ってきた成田が、ソファの端に座りその長い脚の間に座る様に手招きをする。
「羽田、こっちこいよ。」
私はさっきの妄想と同じシチュエーションが起こっていることにドキドキしてしまう。
妄想の成田と同じように丁寧に髪を乾かしてくれる。
「お前、髪綺麗だよな。」
何? 何が起こってるの? 妄想通りの展開なんだけど…
「ごめん。ちょっとトイレ。あとは自分で乾かして。」
だよね。そのままあの展開になる訳ないよね。何もしないって言ってたし。
ここはラブホだ。アダルトグッズの自販機やコンドームが目に入る。ベッドは当然一つしかない。
先にベッドに入ってるのもやる気満々っぽくてどうしたものか…
かといってソファは横になれるほどの大きさはない。
やっぱり二人でベッドに寝るしかないよね。
成田がトイレから出てきて
「寝るか。」
と布団を捲る。
「そ…そうだね。」
と私はなるべく端の方に横になる。
「そんな端じゃ寝てる間に落っこちるぞ。」
「あ…うん。」
意識しまくってるのがバレバレだ。
成田はこんなに平然としてるのに…
私ばっかり意識して恥ずかしい。
思い切ってベッドの真ん中にズリズリと移動すると
「バカ…お前…俺を殺す気か…」
と成田の一言にふと下を見るとバスローブが開けて紐だけになっていた。
「きゃ——!! ごめん。」
気まずい雰囲気で背中合わせて横たわる。
見られた…あんな綺麗な肉体の彼にこんな身体を…
それでも手も出してくれないって、本当に私に興味がないんだね…
落ち込んで眠れないまま長い長い夜を過ごすことになった。
次回は明日18時更新予定です。