表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/59

急な出張編 -駿side脳内再生-

月曜の朝、エレベーターを待つ羽田を見つけ声を掛けようと思ったら久米島が隣にいるのでイラっとして奴にヘッドロックをかましてやった。


俺の羽田に気安く話しかけるんじゃない!!


執務室に行くと課長に呼ばれ、大阪のイベント会場でトラブルがあったことを知らされた。

担当は大阪支社の社員だけど、大阪ではどうにも対応出来ないというので俺が在庫を届けに現地に向かうことになった。

幸い、課長が誰か一人アシスタントを連れて行っていいと言ってくれたので俺は迷わず羽田を指名した。

さすが羽田はその話を聞いた直後にオンラインで新幹線のチケットを取るという有能振りだ。

しかし急とはいえ、女性が2泊3日で出張となると色々不都合があるだろう。

俺は羽田と一緒に買い物デートを楽しんで、映画『プリティウーマン』のリチャード・ギア張りに色々買ってプレゼントしたいと思っていた。

なのに、羽田ときたら

「そんな、とんでもないよ。服は3日間同じの着てればいいし、化粧品は簡単な物ならいつも持ち歩いてるし…」

なんてしおらしい事を言う。


俺はお前と買い物デートがしたいんだよ。

ただ羽田と一緒に大阪の街を歩きたいのに…


東京駅までタクシーで向かい、沢山の紙袋に入れた商品を持って新幹線のホームへと走る。

時々振り返って羽田の様子を窺いながら小さな体で大きな荷物を持って一生懸命に走る羽田に萌えてしまう。

新幹線に無事乗り込んで腹が減ってることに気付いた。

幸い発車まで少し時間がある。

俺は羽田を車内に残してホームにあるデリカステーションに弁当を買いに走る。


あいつ、たしか肉好きだよな。特に牛タンが好きだったはず。


牛タン弁当とペットボトルのお茶を二つずつ掴んでレジに並ぶ。


結構混んでるな。


あまり時間がないというのにレジまで数人並んでいる。

やっと会計が済んだところで発車のメロディーが鳴りだしてしまった。


やべ。


俺は一番近くのドアに滑り込んだ。


あっぶね。間に合った…


弁当とお茶を抱えて車内を歩いているとドア前で羽田が呆然としているのが見えた。

「何落ち込んでんだよ。」

声をかけると羽田がホッとした顔で泣き出してしまった。

「お前…何泣いてんだよ。」

俺は泣かせてしまった申し訳なさと泣き顔の可愛らしさについ羽田の頭を撫でた。

すると、羽田は泣きながら俺の胸に顔を埋めてきた。


うわっ。ヤバい。これは…


自分の胸に羽田をより深く抱き寄せた。

「ごめん。ホッとしたら涙が出ちゃった。」

急いで離れる羽田に少しがっかりしながら

「心配させて悪かったな。」

と素直に謝った。


 ********************


俺はもう一度羽田を抱き寄せる。

羽田は俺の目を潤んだ瞳でジッと見つめながら

「駿、大好き。」

と可愛らしいその顔で俺を殺しに来る。

「俺も好きだ。」

どちらからともなく自然に唇が重なり合う。


 ********************


「はい、ごめんなさい。通りますよ。」

大荷物を持った老婦人が二人を割って通行する。


あああぁ…おばあちゃん……邪魔したのは悪かったけど、こっちも邪魔された……


会場に到着すると、取引先の担当者の岡山さんが待ち構えていて事なきを得た。

研修時に叩き込まれた商品のディスプレイを二人で施す。

会場の熱気に汗だくになっていると羽田もうっすらと汗をかいて頑張っている。

ふと、普段は苗字を呼び捨てする羽田から『主任』なんて呼ばれるとちょっと腰が砕けそうになる。


お前、不意打ちはないぞ。

俺を萌え死にさせる気か?


仕事終わり。ホテルへと向かう道々、羽田を食事に誘ってみると意外にもあっさりOKされた。

タクシーの運転手にお薦めの店を聞いてみると気さくに連れて行ってくれた。

羽田はメニューをワクワク顔で見て、気になる物を片っ端から注文する。

「お前…そんなに食えんのか?」

「大丈夫。残さず食べるよ。」


この小さい体のどこにそんなに食べ物が収納されるんだ?

四次元ポケットでもあるのか?


可愛い顔で旨そうに次々と胃の中へと流し込んでいる様をつい見つめてしまった。


羽田は何してても可愛いな。


「そろそろホテルに行くか。」

自分でそう言って『羽田にホテルに行こう』って…

と際どいワードを言ったことに意識してしまう。でも羽田は

「そうだね。チェックインしなきゃいけないし…」

と冷静だった。


ホテルへ向かう途中、さっき断られたけどもう一度明日の買い物デートに誘ってみる。

「明日、何時にする?」

羽田は暫く考えた後、

「じゃあ、9時半頃ホテル出発でどうかな?」

とこれもOKを貰えた。

俺は嬉しすぎてガン笑顔で

「OK。じゃあ9時半な。」

と答えた。


翌朝。羽田と買い物デートが嬉しすぎて早くに目が覚めてしまった。

ゆっくりコーヒーを飲みながら支度しても約束の時間までまだまだある。


早く羽田の顔が見たい。


俺は自分の欲求を押さえきれず、気付いたら羽田の部屋のドアをノックしていた。

「ちょっと早めに出て朝飯でも食わないか?」

「うん。いいね。そうしよ。」


またしてもOKだ。

昨日から無敵じゃないか? 俺。


かと思うと、近くのファストフード店で二人で朝メニューセットを頼んで横並びの席に座ると

「ねえ、あんまりくっ付いて座らないで。」

と言う。


えええぇぇぇぇーーーーっ

そんな事言われたら俺、ショックで立ち直れない。


「だって、昨日と同じ服で私…汗くさいから…」


なんだ。そういう可愛い理由か…だったら


「そんなの俺の方が…」


離れてやるもんか。


「大丈夫だよ。全然臭くない。むしろいい匂いだよ。」

うっかり本音を言ってしまった。


昨日の夜、眠れなかったのをいい事に大阪の買い物スポットを調べまくった。


羽田を連れて行くのにあまりダラダラとしてられないしな…時間もないし…


ファストフード店を出て、予め下調べしておいた羽田が似合いそうな服の店に向かう。

店に入るとどれを着ても似合いそうな服ばかりでキョロキョロしてしまう。

その中で2着だけ羽田に試着してもらう。

本当は片っ端から着させて、どれもこれも買ってあげたい。

でも、今日は時間もないし後ろ髪を引かれる思いでたった2着だけを厳選する。

試着室から出てきた羽田はやっぱり可愛かった。

俺好みの美優が俺好みのワンピースを着てる。

「良く似合ってるじゃん。

じゃあ、こっちも着てみて。」

もう一着も早く見てみたくてフライング気味にカーテンを開けてしまう。


はい。可愛い。


俺は今、無敵のリチャード・ギアだ。

羽田になんでも好きな物をプレゼントしたい。

次は下着だな。


羽田と一緒に女性用のランジェリーショップへと入る。

俺が一緒に入って行ったことで羽田は驚いていたけど、店内には意外とカップルの客も多い。

下着も俺好みのを選ぶと羽田はすんなりと受け入れてくれた。

そしてここで俺にとってラッキーこの上ないハプニングがあった。

羽田のブラのサイズを知ってしまった。


D65、D65、D65。


頭の中で何度もリフレインしてしまう。


Dサイズって…意外とあるんだな。


俺は顔がニヤけていくのを止められず、変な妄想をして恥ずかしい事にならないように必死に耐えた。


その後、俺の買い物につき合わせた羽田が試着した俺に向かって2回も

「カッコいい。」

と言ってくれて昇天しかけた。

他の女性から言われ慣れてるセリフでも羽田に言われるとこんなに嬉しいモノなのか。


化粧品売り場の前を通った時に羽田に似合いそうな口紅を発見したけど、

「口紅は持って来てるから。」

と断られた。

もう少し最強リチャード・ギアでいたい俺はマスカラを勧めてみた。

羽田の顔を見つめているとその長い睫毛に自分で塗ってみたいと思って目を瞑らせた。

CMかなんかでマスカラを塗っているのを見たことがある。

その記憶通りに羽田の睫毛の根元から先に向かってブラシを動かす。


これでいいのかな?


売り場の女性店員がこちらを見てヒソヒソしている。


出来た。

意外と上手くないか?俺。


「いやぁ、()()さんに塗ってもらうとか、めっちゃ羨ましいわぁ。」

店員がそう言うので俺はいい気になっていた。

羽田が否定するまでは…


「彼氏じゃ…これ、下さい。」

俺がショックを受けている間に、俺の手からマスカラを捥ぎ取りさっさと自分で会計を済ませてしまった。


はぁ~

買い物デートって言っても、羽田の彼氏になれた訳じゃないもんな…


落ち込みながら2日目のイベント業務に臨んだ俺だった。




次回は明日18時更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ