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終電逃してお泊り編 -駿side脳内再生-

太一を見送った後、俺はまだ羽田を支えている振りをして手を放さないでいた。

「あ、ごめん。ありがとう。」

と言いながら羽田が離れようとする。

「まだフラついてるじゃないか。危ないから支えてやるよ。」

と腕から手を放し、腰に手を回した。

その手に羽田がピクリとしたので、俺はドキッとしてしまった。

慌てて何か話さなくてはと、

「そういえば、羽田は終電大丈夫なのか?」

と聞いた。もちろん、羽田の最寄り駅に辿り着ける終電が10分程前に出てしまったのは承知の上だ。

酔っ払いのクソ親父と太一と絡んでいるうちに時間が経っていた。

「あ……どうしよう…タクシーで帰ろうかな?」


ああ、帰したくない。

ダメ元で家に誘ってみるか。


「お前さえよければ俺んち来るか?ここから近いし。」

「え…でも…」


ダメか…そりゃそうだよな…

何とかして羽田をお持ち帰りしたい。


「あ、何気にしてんだよ。何もしねえよ。

信用できないなら寝ないで始発で帰ればいいし…」

焦って早口でそう言うと、

「いや、信用してないなんて…そんなことないけど…」


イエ——ス!!お持ち帰り決定!!!


「じゃあ、行こう。」

俺はMAXまで上がったテンションを必死に抑えながらタクシーに向かって手を挙げる。

「広尾まで。」


太一が言ってたな…「お前のマンションは女のテンション上げれる場所だから、本気の女が出来たら家に呼べ。」って

やっとだよ。やっと羽田を連れて帰れるぞ、太一。


タクシーを降りて羽田を連れてマンションに入っていく。

羽田はエントランスですでにテンションが上がっているらしくキョロキョロと興奮気味だ。

エレベーターに乗り最上階のボタンを押すと、目を丸くしていた。


部屋に入り照明を点けると

「凄い…何、この部屋? どうしてこんな都心の好立地のマンションの最上階に住めるの?」

とリビングの向こうの夜景に釘付けになった。


太一、ありがとう。言った通りだな。


羽田がやけに夜景に食いつくので、

「バルコニーに出てみる?」

と誘ってみた。

「出たい!!」

「遅い時間だから静かに…な。」

「そっか、そうだね。」


意外と外は冷える。

俺は部屋に戻ってブランケットを取ってきて羽田の肩にかけてやった。

「ありがとう。」

と小声で言う。

俺が『遅い時間だから静かに』と言ったので小さい声でお礼を言ったのかと思うと、やけに愛おしく抱きしめたい気持ちになった。

「寒くない?」

「うん。大丈夫。これ温かいから。

凄いね。ホント凄い。毎日見てるんでしょ、これ?」

「いや、住んでるとそんなには…そんなに喜んでもらえて俺も嬉しいよ。」


なんかいい雰囲気じゃないか?

このまま後ろから抱き締めてもいいかな?


 ********************


「羽田。こっち向いて。」

「何?」

笑顔で振り返る羽田の顎を持ち上げ、俺は優しいキスを落とす。

「キスするなんて聞いてない。」

膨れる羽田の頬に一つキスをした後、唇を貪るように吸い尽くす。

「ん…待って…」

「随分待ったんだ。もう待てない。」

俺はせっかく掛けてあげたブランケットと羽田の上着を剥がし、ブラウスの下から手を忍ばせる。

「ここじゃイヤ…」

柔らかい感触を確かめた後、羽田の手首を掴み寝室へと連れて行く。


 ********************


「そろそろ入らない?」

羽田の一言で我に返った。

「そうだな。」


バルコニーでは何も出来なかった…でもまだチャンスはある。

そうだ。先に風呂に入らせて奇襲作戦といくか。


「風呂入るか?」

「あ、出来たら…」

「ちょっと待ってろ。お湯溜めて来るから。」

俺はワクワクしながら風呂の湯を溜める。


部屋着も必要だよな。


家政婦の宇部さんが洗濯してキチンと畳んでくれている部屋着を用意する。


俺の服なんて、嫌がるかな…


「風呂の準備出来たからいつでも入れるぞ。

あ、そうだこれ洗ってあるからキレイだと思うけど、よかったら…」

そおっと差し出してみると意外にも羽田はすんなりと受け取ってくれた。

「あ…ありがとう。じゃあ、借りるね。」

服を見ながら何かをふと考えている様子の羽田が気になる。


もしかして、やっぱり俺の服じゃイヤか?


「あの…部屋も凄く綺麗だし、洋服も畳み方が綺麗だよね。」


気になったのはそこか…

もしかして他に女の影を感じてるのか?


「ああ、それは俺じゃなくて宇部さんがやってくれるから…」

少しだけカマをかけてみる。

「俺自身はズボラだけど、宇部さんはきっちりしていて…女性ってきちんとしていてホント助かるよ。」


何となくだけど、眉間に力が入っているように見えるな。

ヤキモチ妬いてるのか?

あまり、引っ張るのも良くないからバラすとするか。


「ああ、女性って言っても65歳の家政婦さんだよ。」

「家政婦さん?」

「ああ、毎週2回来てもらって掃除も洗濯も料理の作り置きもしてもらっててさ。昔から…俺が子供の頃から世話になってる。プロの仕事って凄いだろ。」


あれ?ホッとしてる? 脈ありか?


「一緒に入るか?」

またもやカマをかけてみる。

「え?どこに?」

「風・呂。」

恥ずかしがって即断られると思いきや

「いじわる。でも一緒に入ってもいいけど?」

「え!?」

「う・そ。一緒に入る訳ないでしょ!じゃあ、お先にお風呂入りまぁす。」


なんだとぉ——!!!

この小悪魔!!!

可愛すぎるだろ————!!!

もしかしてこいつ自分の可愛さを分かってて俺を弄んでるのか?


脱衣所で服を脱いでいる羽田を想像すると俺のムスコがいても立ってもいられなくなった。


やばい…落ち着け俺。鎮まれ俺。


微かに浴室の扉が開く音がした。


今頃うちの風呂に羽田が入っている。落ち着け俺。鎮まれ俺。


どうにも鎮めることが出来ずに立ち上がり脱衣所の扉を開けようとドアノブに手を掛ける。


あ、鍵かかってる。

そっか。そりゃ、そうだよな。


仕方なくリビングに戻り羽田が出てくるのを待つ。

「ありがとう。気持ちよかった。お風呂も広くて素敵だった。」


うわっ。俺の服着てる羽田ヤバい。

可愛すぎる。落ち着け俺。鎮まれ俺。


「っていうか成田、入ってこようとした?」


ヤベ。バレた?


俺は表情を読み取られないように横を向いて精一杯の嘘をつく。

「そんなことする訳ないだろ。」

「ふ~ん、そうなんだ…じゃああの音は何だったんだろう? ね。」


完全にバレてる…


「お…俺も風呂入って来るわ。」

膨張しきっているムスコの存在が羽田にバレないように風呂に逃げる。


くそっ。なんの修行だよ。

こんなの勃たない訳ないだろっ。


シャワーを浴びながらなかなか鎮まらなかったモノを慰めてやると少し落ち着きを取り戻した。


このお湯、さっき羽田が入ってたんだよな。


俺は羽田の後の湯を堪能した。色々考えてはいけない映像が頭を(よぎ)る。


これから一緒のベッドで…

いや、考えるな俺。また…


 ********************


「羽田、おまたせ。」

そう言いながら、俺は羽田を力強く抱き上げる。

「重いでしょ。降ろして…」

「重くなんかないよ。まだ少し髪が濡れてるじゃないか。」

そう言いながら羽田の髪にキスを落とす。

そしてベッドに降ろし、押し倒す。

「ずっとこうしたかった……美優…」

「名前…呼ぶなんてズルい…駿…」

美優の両腕を彼女の頭上でホールドする。

「美優、好きだ。抱きたい…」

「うん。抱いて。思いっきり…」


 ********************


だから、考えるな俺。


またしてもムスコが充血してきてしまい、自分の妄想力を呪った。


仕方がない、もう一回…


浴室を出て羽田のいるリビングへと戻る。

「ふぅ。さっぱりした。」


そりゃ二回も抜けばな…


「じゃあ、寝るか。羽田はこっちのベッド使うだろ?」

二回も抜いてしまった疲労感でいつも泊まりに来る太一へと同じ対応を羽田にとってしまった。


あ…ヤベ。一緒のベッドに寝るつもりだったのに…


後悔してももう遅い。ベッドルームが二つある事をバラしてしまった。


アホだ、俺。


仕方なく「じゃ、おやすみ。」と言って自分の部屋へと入って行った。

部屋に入って、自分のポンコツっぷりを心底悔しがった。


くっそぉ。なにやってんだよ。


またしても千載一遇のシチュエーションだったというのに…



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