1話
高校3年の冬。今年は雪があまり振らず、比較的過ごしやすいような季節だった。
そういや、君は寂しそうな顔をしていた。冬に降る雪が好きって話だったからね、まぁ、気持ちは分からなくも無いけど。
でも、俺は嫌いだよ。こんな季節。
だってさ、
「お前と会えなくなっちゃったから。」
そう、アイツーーーー楠木凛歌は、死んだ。
卒業式の日、凛歌は出席してなかった。結局、事故で無くなってた。凛歌の家は少々人っ気の無いところにあるから、朝、登校時に事故って、夜に見つかったらしい。昨日の夜、うちに電話が来て、知らされた。
卒業生代表だったのにも関わらず、あいつは…。
雪合戦、やれば良かったなぁ。
そう思って、窓にぽつぽつと打たれる雨を見つめる。もし、この雨が凍って、雪になって。凛歌が生きてれば。雪合戦出来たのに。
「いや、違うなぁ。」
…やれば良かったんじゃなくて、やれなかったのか。
涙が溢れる。こんな、環境なんかのせいで、自分と凛歌の思い出が潰れるなんて。そりゃさぁ、雪が降れば雪合戦してたよ。春になって、桜が満開になればお花見だって行ってさ。晴れの日が続けば外で手でも繋いでお散歩出来たのに。
「告白、してたかもなのに。」
なんでだ。凛歌は色んな人を笑顔にしてきたじゃないか。俺だって、あいつに救われた。なんで、凛歌にはスポットライトさえも当たらないんだ。最期さえも、素敵な日にならなかったんだ。
嗚呼、くそっ。くそっ。
「クソ!!!!!」
こんな世界なんて、神様も居ないような世界なんて、
「クソ喰らえ…。」
初めての感覚。自身の生まれてきた世界を憎く思えた。