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疑似恋愛

 ホームで並んだ三人は、なんとなく、一緒に電車に乗り込むこととなる。


「で、大和先生と奈々はどういう関係なんだ? …なんて、聞くだけ野暮か」

 ふふ、と笑って遥。


「いや、違います! 奈々とはもう、別れたんで。な?」

 凪人が全力で否定した。それを見て奈々が片方の眉をピクリと上げる。

「別れた? 私たち、別れたっけ?」

 凪人の腕に絡みつき、上目遣い。そんな奈々を振りほどこうと必死の凪人。


「なんだ、二人とも、修羅場なら余所でやってくれよ?」

「いや、全然そんなんじゃっ」

 オタオタする凪人を見て、奈々がくすくす笑う。面白い展開だ。


「冗談よ。遥、私と凪人は仕事上の関係なの。彼、モデルやってて」

「ああ、モデルの話は聞いてる。そうか、奈々のとこの雑誌だったのか」

「ま、そういうこと。()()()?」

 わざとらしく凪人に同意を求める。凪人が憮然とした顔で頷いた。


「で、二人一緒にってことは、大和先生は今から仕事か? あまり無理すると、この前みたいに、」

「あ、いや、違いますっ。さっきたまたまバッタリ会っただけで」

 なぜか慌てて奈々との距離を否定する凪人。そんな凪人に、奈々はある意味、興味津々であった。


(これって…そういうことよねぇ? まさか凪人がねぇ。ふ~ん)


 てなもんである。

 ちょっぴり悔しいような気もするが、それ以上にこれは面白い。これはもう、けしかけるしかないだろう!


「凪人、せっかくだから遥と一緒に行ってくれば?」

 ニヤニヤしながら、言う。

「へっ? 一緒にって、どこへ?」

「遥のぉ、大事なぁ、あの人のと・こ・ろ」

 凪人の目がきらりと光ったのを、奈々は見逃さなかった。


「はぁ?」

 しかし、遥が途端に顔を歪める。


「なんで大和先生を連れて行かねばならんのだ」

「あらぁ、遥、布教活動してるんじゃないのぉ? 彼の人気、最近イマイチで、このままじゃ一位の座が危ういんでしょ?」

 人気がイマイチ……。一位…って、


(やっぱりホストなのか…、)


「それは、まぁ、彼のファンが増えるのは嬉しいことだが」

 モゴモゴと言い淀む。

「これってチャンスだと思わない? 凪人を取り込んだら、どうなるか教えてあげましょうか?」

「なんだ、チャンスって」

 奈々はフフン、と笑うと、ピッと指を立てて言った。

「彼、SNSでフォロワー五万を超えてるわよ? しかも芸能事務所入って、これからもっと増える予定。もし凪人があんたの側についたら、影響力抜群じゃない?」

 奈々の言葉に、遥の目の色が変わり始める。


「それが、インフルエンサー…、」

 ぶつぶつと呟く。

「いや、俺インフルエンサーじゃないんですけど」

 遥がガっと凪人の手を掴む。

「ふぇっ?」

「大和先生、私と一緒に来てくれるか?」

 なんだか妙な展開になってきた。


(俺がホストの推しになる…のか?)


 色々納得出来ない凪人である。

「あの、えっと、はぁ」


(なんで断らないんだ、俺!!)


「そうこなくっちゃねぇ」

 バン、と奈々が凪人の肩を叩いた。




 奈々は途中の駅で楽しそうに手を振って去っていった。残された凪人は、複雑な思いで遥と肩を並べていた。


「では、簡単に彼の話をしようか」

 満面の笑みで凪人を見る遥。恋する女の目だ。凪人はこの顔を知っている。今までは、この視線をいつも自分が独り占めしていたのだから。なのに今は…、


「まず彼は、世界征服を企んでいるわけだが」


「…は?」

 のっけから真剣な顔でとんでもないことを言い出す遥を、じっと見る。しかし遥はそんな凪人の視線などお構いなしに続ける。


「とにかく性格が素晴らしいんだ。優しいを通り越して少しおかしいのかもしれないな。あの、()()()()()()()()()()()()()()ときなんかは、」


(は? は?)


「まさかそのまま養子にするなんて思わなかったからな! 普通そこまでするか?」

「いや、あの、え? 誘拐?」


(何を言ってるんだ? 犯罪者なのか?)


 出てくるワードが強すぎて呑み込めない。

「十二歳の少女を愛し続けるっていうのもな、なんて言ったらいいか、尊い…、」

「はぁぁ??」

 十二歳と言えば、まだ小学生。


(犯罪者!! 間違いなく、それは犯罪者だぞ、おい!)


「不毛なのはわかっているさ。絶対に私のものにはならないと知っている。しかし、これが推さずにいられようか!」

 拳を突き上げ、熱弁する遥。


「あの、谷口先生、その人って犯罪者なんですか?」

 恐る恐る聞いてみる。

「んん、そこは、まぁグレーかもしれないな。しかし警察関係者に知り合いがあるから大丈夫だろう!」

 ぐっと親指を出す、遥。

「いや、それ…大丈夫ではない…、」


 眉間に皺を寄せ、凪人。


 女は危険な男に弱い、というのは何となく聞いたことがある。しかし完全なる犯罪者相手に肩入れするのはどうなんだ? しかもそんな奴に貢いでるって、問題だろう!

「そんな奴のどこがいいんだ…、」

 思わず呟いてしまう凪人に、遥がピクリと反応する。


「きっとお前にもわかる! 漫画とDVDはこの週末に私が貸そう! まずは自分の目で、確かめてくれっ」


 両肩をガシッと掴み、遥。


 ……ん?


「漫画…?」

「ああ、そうだ。『カレントチャプター』というコミックの主人公、サカキ・マサル。彼は男の中の男だぞ!」


 目をキラキラさせてそう言っている遥を見て、凪人は一気に全身から力が抜けていくのだった。


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