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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第一章 月下の邂逅 篇
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■第一章 3−1 本家のお嬢様?

今日はこれでラストです。

 かくして、浩介は神宮寺家へと出張することになった。

 ヴァネッサが追加で受けた依頼は、ヴァネッサの手の者が、少しの間神宮寺邸で過ごし人狼の襲撃に備えると言うもの。実際に襲撃があったらセシルがフォローするので、次期当主の話し相手になっていればいい、と言うことであった。荒事もない(予定だ)し、これも立派な助手の仕事だ、と浩介は自分を奮い立たせる。

 ……が、実際に神宮寺邸に到着してから今日で3日。襲撃はなく、やっていることは本当に神宮寺真理恵の話し相手になっていることだけであった。

「本当にそう思いませんか? そもそもあんな話を、当の私に! 当主代行である私に! わざわざ言ってくるんですよ!?」

「あぁーー確かにレディに言うことじゃないとは思ったかな」

 初対面からわずかな時間しか過ごしていない浩介に対し、真理恵は遠慮なく話してくる……というより、今日は朝からずーーーーっと暴言を吐きまくっている。

 それも当然かな、ストレス溜まってるみたいだし、と浩介は納得する。

「大体、お客様である浩介さんに対しても失礼な態度だし! 何を考えてるのよ!」

 真理恵はそのストレス源に対し憤慨する。

 そう、真理恵は神宮寺一族の次期当主ではあるものの、本家以外の分家連中からは認められていない様子だった。そのため、表向きは問題なく見えるが、軽くいじめを受けているような状態で、(正式な当主代行である)彼女の意向は無視される、意見は聞かない、暴走して勝手なことをする、わざと指示とは逆のことを行う。あげくにセクハラめいた言動や無遠慮な視線を浴びまくっている状況だ(ただしお触りNG、という不文律があるようだが)。ちなみに、現当主は彼女の父で、今は病床にあるらしい。そのため、ほかの者たちの彼女への態度は、父親は把握していない。多分。

「ねぇ! そう思うでしょ!?」

「いやぁ〜〜八つ当たりしてんのかな? とは思ったけど。自分でヴァネッサに直接依頼したんでしょ? 向こうは言いくるめたかったんだろうけど、得体の知れない“魔女”の一味だからね、今のオレ」

 神宮寺邸に着いた初日に、クライアントである真理恵からは、


 ・敬語を使わなこと

 ・自分のことは名前の真理恵と呼ぶこと(せめて、と『ちゃん』付けは許してもらった)


を、強く(泣きそうな表情で)頼まれている。そのため、真理恵とはフランクな調子でやり取りをしている。いろいろと話をしていくと浩介と彼女は同い年であることが解り、それもあって彼女はより親近感を感じているのだろう。その割りは、彼女の口調はやや硬い気もするが……真理恵なりの精一杯のフランクさなのだろうし、浩介は深く考えないようにしている。

「それにしても、やっぱりおかしくないか? 真理恵ちゃんだけがあの人狼に狙われてるって。そう言えば『神宮寺家には狙われる理由がある』って言ってたけど……ソレ、聞いちゃマズいの?」

 浩介の疑問に、真理恵は不平垂れ流しを止め、説明を始める。

「そう言えば事情をほとんど知らないんでしたね……まず、我が神宮寺家が、魔道具作りの名家であることだけは聞いていますね?」

 そんなことを確かにバネッサから聞いている。一般には知られていないが、この日本には“魔道具”という物が存在し、それを生み出す一族が古くから存在している、その中でも特に長い歴史があるのが、真理恵が属する神宮寺家である、と。

「そもそもの原因は、その魔道具にあるのです。詳しくは夜にでも教えてあげましょう」

「え? 大丈夫なの? 一応真理恵ちゃんはお嬢様なんだし、他の人の目もあるでしょ?」

 夜に女性(ロケット装備)の部屋に訪れるのはマズイ気がする。自分も性別上は男だ、という言い方は控えめで、セクシャルな内容には目がない“野獣”だと浩介は自覚している。諸々(妄想の)実行力には我ながら疑問が残るが。

 しかし、真理恵はその心配を笑い飛ばす。

「ははは。この屋敷の人たちはそんなモノ気にしませんよ。だって私、ただの“お飾り当主代行”ですから」

 屋敷の使用人? たちにこっそり言われている自分の名称を口にし、真理恵は遠くへと視線を向けた。


 その日の夜——浩介は真理恵の自室にいた。年頃の男女が夜に同じ部屋にいる、というシチュエーションは少しマズい気が(部屋に入る直前まで)したが、真理恵自身が

「かまわないですよ。私の動向、気にする人もいませんし」

と言うため、オドオドしつつ彼女の部屋にお邪魔している。

 神宮寺邸は和風の屋敷で、かなり広い。広大なエリアは高い壁に囲まれていて、おそらく都市部の一丁目くらいのサイズがある。そこに、和風建築の屋敷や蔵がいくつも建っていて、蔵の1つが浩介の居場所として提供されている。一応、『魔女の一派が護衛として来ている』という触れ込みなので、その蔵は真理恵のいる本家邸宅に隣接している。

 神宮寺邸には本家、各分家の邸宅があり、さらに各家ごとに使用人もいて、神宮寺邸——いや、この神宮寺エリアにはかなりの人数が寝泊まりしている。浩介の感覚からすれば神宮寺町と言っても差し支えがない、と感じている。その頂点(仮には、だとしても)の真理恵に対し、この神宮寺エリアに行き交う人たちは彼女に興味がなさそうで、真理恵(と同行者の浩介)に軽く会釈はするものの、話しかける者もいない。

 お家騒動的な感じの理由でもあるのか、何故か真理恵になるべく接触しないようにしているように見える。なのに、わざわざ夜まで待って事情を話す? その理由は?

 いくつもの疑問点はあるが、その事情を真理恵は教えてくれるだろうか? 浩介はいろいろと考えながら、じっと真理恵を見つめている。

「えっと……とりあえず、お茶でも飲みますか? それともコーヒーがいいかな?」

 そう確認した後、真理恵は部屋に設置されているキッチンらしき場所で、コーヒーをドリップし始める。使用人がいるはずなのに、真理恵は自ら給餌をしているようだ。

「お待たせしました。さて、まずは魔道具自体について説明を始めましょうか」



明日も複数投稿予定なので、

ぜひお付き合いくださいませ。



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