■第一章 2−3 下働きから助手? へ
本日2本目です。
挨拶されたことで、浩介は改めてロケット嬢の顔をまともに見る。
にこやかな笑顔を浮かべる、お嬢様という印象の少女。黒髪ストレートのロングヘアーで、薄いベージュのワンピースを身に纏っている。身長は自分と同じ170くらいで、年齢も同じくらいか? と浩介はアタリを付ける。
——にしてもデカいなぁ……。
あまりガン見するのはいけないと思っていても、どうしても視線がその部分に誘導されてしまう。じっと見るのだけは避けないと、と葛藤する浩介の様子を気にすることなく、神宮寺嬢は会話を続ける。
「今回はこちらの都合に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。アイツ、ご存知の通り見境がないようで……特に先日は満月だったでしょう? やはり満月だと興奮する性質なんでしょうかね。それにしても、相手は神宮寺家の中でも私だけを付け狙っているようで……あんなケモノにモテてもしょうがないんですけどね」
「いや、まぁ……えっと……」
神宮寺嬢は表情をコロコロ変えながら、身振り手振り付きで次々と言葉を繰り出す。その様子に、浩介は慌ててしまう。アクション付きだと、ご自身のロケットもアクティブに動き始めるのですが……などとは絶対に言えない。視線を誘惑されないよう、抵抗するのに精一杯だ。
さらに、浩介は伊達にコミュニケーション不全を自覚してはいない。うまく返答できず(もちろんそれは事情がよく解らないせいでもあるのだが)、このまま会話が成立する気はしない。浩介はただ聞き役になっているだけ。まあまあ、と両手を軽く突き出し、何とか彼女をなだめようとするのが精々だ。
「あぁ、お嬢さん、こいつ、事情は何も知らないから」
「えぇ⁉︎ ひょっとして一般の方⁉︎ ヤだ、あたしったら……」
横から口を挟むヴァネッサの言葉に、恥を感じたのか、神宮寺嬢は顔を赤らめ、両手で顔を挟み込む。その仕草と表情に、浩介はドキンとしてしまう——そのポーズのせいで、胸部装甲は彼女自身の両腕に圧迫され、存在感がマシマシになっている。
「とにかく、事情は知らないが役には立つと思うぞ。どうだ、お嬢さん。先ほどの話、こいつを使ってみてはどうかね?」
「へ? 一体何の話?」
どうやら浩介が来る前に、ヴァネッサと神宮寺嬢は何らかの話をしていて、その“何かしら”に浩介は巻き込まれることになる、ということらしい。
気になるのは、“魔女”であるヴァネッサが、“人狼に関連する神宮寺穣との案件”で、浩介を“何かしらの役柄に指名している”、という事実。一体何をやらされることになるのか知らないが、期待されても応えられる気がしない。
「えぇ……そうですね。貴女のご推薦であれば間違いはないのでしょうが……お願いできるのでしょうか?」
「え!? ちょっと待ってください! 何の話なのか全然判らないんですけど!? ヴァネッサさぁん!?」
知らない間にヘンな話がまとまりかけている!? と警戒し、パニックになる浩介を見て、ニヤニヤしながらヴァネッサが答える。
「要するに私の仕事の助手をしろ、という話だ。屋敷の下働きだけだと仕事のやり甲斐もないだろう? 助手の仕事、一度くらいチャレンジしてみてはどうかね」
ヴァネッサのことは(魔女だとかそういったことは抜きにして)ここ数日のやり取りで信頼してはいる。が、間違いなく狼男も絡んでいる。そんなコトに一般ピーポーが首を突っ込んでいいのか、と浩介の脳内でアラームが鳴り始めている(気がする)。
「そう言えばこの方、事情を何も知らないんでしたね。本人の意向を無視して進めていい話ではないのでは?」
神宮寺嬢が真っ当なことを言う。そうだ、もっと言ってくれ、と内心願う浩介。
「本人が了承するかは判らないな。お嬢さんが直接、今、本人に聞いてみてはどうだ?」
ヴァネッサの言葉に、数秒考え、神宮寺嬢は
「えっと……じゃぁ。あの……お願いしてもいいのでしょうか?」
と、浩介の目を見ながら問いかける。手のひらを胸の前で組んで、上目遣い。すなわち『お・ね・が・い❤︎』と言わんばかりのおねだりポーズで。しかも、両手を組んでいるため、破城槌がまたしても両サイドから圧迫され、自己主張している。
こんなモン、うなずくに決まっとるわぁ! と、浩介は心の中で絶叫した。
本日はもう1本投稿予定です。




