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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第一章 月下の邂逅 篇
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■第一章 2−1 生活が一変した!

本日ラストの投稿です。


 浩介が目覚めたとき、彼はまたしても全裸であった。が、前回とは異なり、ベッドには浩介1人。全裸サンドをしてくれていたヴァネッサとセシルはいない。どこまでが現実でどこからが妄想なのかが判断できない(起きた出来事は浩介好みの内容だったし)。

 夢だったとしたら、もう一度ヴァネッサとセシルに会えたらいいな……なんて考えていると、ベッドのある部屋のドアが乱暴に開かれる。

「いつまで寝てるんですか。いいかげん朝食を摂っていただかないと、ヴァネッサ様に迷惑です」

 会いたかったうちの1人が、浩介をやや荒い口調で叩き起こしてきた。表情は初めて出会ったときと同じく不愛想。右手には、身長ほどの長さの柄が付いた箒。左手には回収した使用済みのものなのか、ざっくりとまとめられた白いシーツが抱え込まれている。

「あ……え……」

 自分が全裸だったことを思い出し、浩介は体にかかっていたシーツを慌てて引き寄せる。

「何を呆けているんですか。さぁ、さっさと支度してください。シーツを洗わなくてはいけないのですから、いい加減邪魔です」

 余計なことは言わない。感情をあらわにすることもない。必要なことを淡々と言う。セシルはどうやら、元々表情の変化にとぼしいようだ。だが、先日のヴァネッサとのやり取り——あれを見ると、感情が表情に出ることがまったくない、ということではないようだ。2人にしか理解できない、独特のキーワードとかもありそうだし、その辺りは2人の付き合いがきっと長いからだろう。あのときの2人くらい、とは言わないが、少しだけでも2人と仲良くなれたら、と浩介は考えながら、ベッドの脇に置いてあった服を着始めた——。



 ……などと考えたのが1週間前のことだった。

 全裸で目覚めた後、身支度を終え、軽い朝食をいただき、主人であるヴァネッサに挨拶して屋敷を出ていこうと考えていたが

「なんだ? 出ていくのか? バイトに行かなきゃ? そんなものとっくに解雇されるんじゃないか? 何せ初めての精の提供だったわけだしな」

 ヴァネッサの言葉に驚愕し、スマホから慌ててバイト先へと電話をかける浩介。彼はその際に知ることになるのだが、その段階でベッド上で気絶してから、すでに3日が経過していた。つまり、バイト先には丸2日間音信不通になっていて(しかも何故かスマホの電源がオフになっていた)、人使いの荒い無慈悲なオーナー様は、

『シフトに出て来ない、か。ああ、いつも通りバイトがバックれたか』

と思い、どこにも連絡せずに放置状態。空いたシフトを埋めるため、事情を知らないバイトリーダーだけが苦労した、ということだ。すでに退職扱いになっているからもう来なくていいよ、制服はロッカーから勝手に回収しといたよ。……と軽く言われてしまう。

 味気ない話だな、と思った。バイト仲間とかに、仲が良い人がいれば、少しは対応が違っただろうか。だーれも心配してはいなかった。いなくてもお店は回っていた。虚しさが心に溢れてきて、軽くため息が出てしまう。

「何だ? 仕事無くなったことが辛いのか?」

 浩介の悩みをズバリと指摘するヴァネッサの言葉に、自分が情けない表情をしていることに気付く。正確には今までの人付き合いの薄さもため息の原因だが、

「……そんなに情けない顔してました?」

と返すと

「雨の日に捨てられた小汚い子犬のような、という言葉がぴったりかと思います」

電話をしている間、ヴァネッサのそばに控えていたセシルが横から肯定する。

「まぁ、落ち込むこともあるまい。とりあえず、行くところがないならこの屋敷にいればいい。幸い、空き部屋は豊富にあるのだし。仕事? じゃぁ家の仕事をやろう。家で働けばいい」

 そんなヴァネッサの一言で、浩介はヴァネッサ邸で働くことになった。立場は従者見習い。主人であるヴァネッサの身の回りの世話や、彼女のお仕事のサポートなどである。

 給金? ソレハタベモノデスカ?

 そんなノリで、浩介の新生活はスタートした。給金はないが、三度の食事+おやつは供されるし、着る物も当然支給。根城にしていた安アパートは(ヴァネッサの手によって)解約され、荷物一式は邸宅に(セシルの手によって)運び込まれ、家賃の心配もなくなった。

 今は従者の先輩であるセシルの指導を受けながら、屋敷の清掃を行っている。

「慌てず、焦らず、丁寧に。これを心がけて仕事は行ってください」

 浩介の支える脚立に乗り、窓を拭きながらセシルが言う。浩介は同僚? 後輩? となったが、いまだ彼女は浩介の顔を見ながらの会話は少ない。同じ場所で働くことにはなったとは言え、心の壁はまだまだ厚みがありそうだ。

「それにしても、窓の数多いよな。この屋敷、何平米くらいあるんだろ」

「さあ? 詳しいことはヴァネッサ様に聞かないと判りませんが、多分空間歪んでいますから、ヘーベー、と言われてもあまり意味がないのではないか、と」

 さらりとセシルは答えるが、空間を歪めるって……さすがは魔女である。

 あのとき、狼男が目の前に立ち、恐怖で体が硬直していたが、トラウマとかの心理的ダメージはほとんどないらしい。そうならないように、ヴァネッサが何かしらの手段を取っていたかららしい。


——初対面の相手にも、しっかりサポートしてくれてたんだな。


 そんなことを考えているくらいに余裕は出てきている。

 ちなみに、浩介が目を覚ましたあの晩、3人で行ったのが“精”の提供だったらしい。人間の精力——生命エネルギーとか?——をやり取りする方法で、あまりやり過ぎると、人によっては廃人になることもある、とのこと。回数は2、3日に1回くらいのペースで、というのがヴァネッサの提案だった。

 直接エッチができるわけではないが、美女&美少女の全裸サンドなんて、ご褒美以外の何者でもない。何せ浩介は“魔法使い候補生”なのだ。1も2もなく、浩介はその申し出に頷いていた。

「何か不埒なことを考えていますね」

 窓を拭き終わったのか、セシルがいつの間にか浩介の顔を覗き込んでいた。

「え? いや……ははは」

 笑って誤魔化す浩介。当人の1人であるセシル相手に、ご褒美のコト考えてました! とは言いづらい。最近知ったが、浩介はエロ関連のことを考えているとき、判りやすくニヤけているそうだ。特にヴァネッサをネタに「巨乳を揉みしだいて……」と妄想していると、セシルはとたんに不機嫌になる。契約(というより口約束?)に基づいてはいるが、今の3人の関係が、健全なのかふしだらなのか、浩介には判断がつかなかった。

「……っと。今日拭く窓はこれで最後だよな」

 浩介は先ほどまでセシルが乗っていた脚立を片付け始める。

 今の彼の姿は、いわゆる従者のようなスタイル。黒のスラックスに吊りベルト、白シャツに濃い紺色のネクタイ、普段は上着を着ているが、本日は上半身にベストを身に纏っている。

「脚立は、奥の物置部屋に運べばいいんだよな?」

「そうですね。そのあと、夕食の食材を保管庫からキッチンに運んでください。本日必要なものは、このメモに書いてあります」

 セシルが差し出してきたメモを受け取り、浩介は書いてある内容にざっと目を通す。屋敷のレイアウトにも少しずつ慣れていている。身分は従者の1人ではあったが、やっているのは今のところ屋敷の下働きだ。が、特に不満はない。まだまだ重要な仕事を任されてはいないが、本日は夜にあの“ご褒美”がある日だ。

 顔がニヤけないように注意しながら、浩介は脚立を運び始めた。



まだまだストックがあるので、

同じペースで投稿する予定です。


明日以降もお付き合いいただけるとうれしいです。

(お引越しせずに済めば、ですがw)。


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