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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第二章
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■第二章 5ー1 初めてのお小遣い

本日の1本目です。



 昨夜もジズとの会話を明け方まで楽しんでしまった。そのため、かなり眠い。不思議と体の調子は悪くないのだが。

 大きなあくびをすると、右隣の席から、セシルがツッコミを入れてくる。

「本日も寝不足ですか? 連日ですね……」

「うん、昨日言った“渡るモノ”だっけ? まだ部屋にいたみたい。それで、ずっとおしゃべりしててさ……」

 浩介はセシルと会話しながら、いっしょに朝食を摂っている。ヴァネッサは2人のやり取りを無言で聞きながら、同じテーブルで食事中だ。

 本日のメニューは純然たる和食。おかゆに梅干し。それに、ほぐした焼き鮭と炒り卵、きゅうりの浅漬けが添えられているが。

 少し寝不足の体には、さっぱりとしててありがたい、と思いながら、浩介は梅干しを少しほぐし込んだおかゆを口に運んだ。爽やかな酸味が、寝ぼけてた頭をしゃっきりとさせる。

 ようやく少しだけ動き始めた頭で、昨夜の会話を思い浮かべる。

 さまざまな世界の話を聞いて、そのあとおっぱいについて熱く“語り合った”という記憶がある。うん、有意義に“語り合った”。

 そうしてやがて朝になると、先日と同じように、ジズたちは姿を消していた。元々、“いる”と感じるだけで声も聞こえないし、姿も見えていないのではあるが(つまり、朝になって声が聞こえなくなった、ということだ)。だが、浩介はあまり心配していない。『夜の遅い時間』とかいくつか条件を経たから浩介たちが話せている、的なことを言っていたし、多分夜になったらまたジズたちは現れるだろう。

 それにしても、昼間はジズたちはどこにいるんだろう? 『行く』とか『帰る』とかの感覚はない、とか言っていたし、部屋にいるってことか?そんなことを考えながら、ジズは梅がゆを食べ進めていった。



 朝食を終えると、3人での食後のティータイムが始まる。場所は、リビングが今は使えないため、場所は食事をしたダイニングで、出されたのはお茶ではなく「モカ」のコーヒー。フルーティな酸味と味わいを楽しみながら、昨夜のジズとの会話を浩介は細かく説明する。

「そうか。ほかの世界のことを語ったか。狼の人類? あいつらの世界にも行っていたのか。お前はそいつらには会ったことがあるだろ。しっかりと会話もしているぞ」

「へ? 会話もしてる? ……っスか?」

 そんな奇抜な知り合いはいないはずだ。しかも、それをヴァネッサが見ている? そもそもヴァネッサと知り合ったこと自体、ついこの間のことだし……と、そこで浩介は気付く。

「オオカミ……あ! 人狼!」

「そうだよ。やっと気付いたか。冷たい奴だな。しっかり会話をして、お互いの感情を混じり合わせてだろうに」

 精神世界のような場所ではあったが、確かに人狼と会話している。ってことは、同じ世界から来たはずの……。

「あなたが使っていた魔道具も、神宮司真理恵嬢が身に宿していた核も、もちろん対象に入ります。当たり前でしょう」

 今度はセシルが横から突っ込む。


——そっか……あいつらのいた世界に、ジズたちは行ったことがあるんだ。


 不思議な縁で出会ったモノたち。そして、新たに出会ったジズたち。不思議なつながりがあったみたいで、浩介は何だかうれしくなっていた。

「人狼もだけど、《颶風ぐふう》の核だったも元気しているかなぁ……」

 あの人狼の一件によって、ヴァネッサやセシルと出会うことになり、魔道具をめぐる事件に巻き込まれることになった。不思議な道具「魔道具」なんて物を初めて触ることになったし、そのとき左腕に装着した《颶風》は、浩介と相性が良かったようだった。

 考えてみれば、あの《颶風》の核も、あの人狼——「ママ」(本名は多分違うが、浩介は勝手にそう名付けている)のいた世界の存在だったはずだ。まだこの世界にいるはずだが……“その世界”に行けば、“彼女”とも話したりできるんだろうか。そんなことをぼんやりと浩介は考える。

「そうか、お前はあいつらと“会話”をしたいのか……“あちらの世界に行って”叶えると言うのは、とても難しいだろうな」

 前と同じように、浩介が口に出していない想いを拾い、ヴァネッサが答える。彼女は浩介が考えていることを、何故か知ることが出来て、こうやって不思議な“会話”が成立することがある。どんな仕組みなのかは知らないが、さすがは魔女と言うことだろう。

「やっぱり、ジズたちみたいに“向こうの世界”に行ったりは出来ないモンなんスか?」

「別にお前では無理、と言う話をしているんじゃない。この世界に生きる者、この世界に紐づいている存在は、この世界を離れることは出来ないものなのだよ。だから、ただ“観る”だけ。観測者になるのがせいぜいなのさ」

 そう言って、ヴァネッサは薄く笑みを浮かべた。

「そうそう、これを渡しておかねばな」

 ヴァネッサがセシルに視線を向けると、いつの間に取り出したのか、セシルが幅15センチ×縦6センチほどの紺色のポーチを差し出してくる。ポーチには同じ色の帯のようなものが巻かれていて、その中央にはコインのような帯留めらしきものが付いている。

「これを」

 差し出されたポーチを受け取ると、浩介はヴァネッサとセシルの顔を見渡した。

「で……これは何なの?」

「お小遣いと言うものです。あなた用のお財布ですね。ヴァネッサ様から渡すように言われて、用意していました」

「お小遣い? これ、お財布? お金? でも……」

 受け取っていいものか、迷う浩介にヴァネッサが口を開く。

「かまわん。必要になることも、今後あるだろう。必要な物があればこれで買うといい。が、ムダ遣いはしないように。例えば……そうだな、お前が秘密にしている、特殊な性癖の本だとか」

「! そんなナイショの特殊性癖なんてないっス! 名誉毀損っスよ!!」

 浩介の絶叫が、ダイニングに響き渡った。



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