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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第二章
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■第二章 4ー2 ジズはまだまだおしゃべりしたい

 夜になり、自室で昨夜のジズとの出会いを思い出していると、『何だか今日はご機嫌だね』と声をかけられる。いつの間にかいなくなったと思っていたジズ(とミオ)は、ずっとこの部屋にいたそうだ。『もう縁がつながったから、いつでもお話は出来るよ』とジズは言う。言われている意味は解らなかったが。

「朝になって、もう帰ったのかと思ってたよ」

と浩介が言うと、

「帰るってどこに?」

と返してくる。いや、聞いているのはこっちなんだけど、と浩介は密かに脳内で突っ込む。

「帰るって言われても困るかなぁ。帰る場所なんて、別に“どこでも”ないしなぁ」


——“どこでも”? “どこにも”じゃなくて?


 ジズのヘンテコな言い回しに、浩介は少し混乱する。

「どゆこと? 謎かけ?」

「えっとね……ボクたち、あちこちを旅してきてるんだけど、毎回移動してるって概念はないんだ。だから『行く』とか『帰る』って感覚もないんだ」

 ただ、そこにいる。今回は浩介の部屋にいる、ということか。

「ま、理解できないんじゃしょうがないよ。で、そんなことより、どうしてそんなにご機嫌なの?」

とジズが聞いてきて、浩介は昨夜と同じように、ベッドに腰掛けてジズとの会話を始める。

 昼間、メイド喫茶スタイルの少女•船川沙智と出会ったこと、彼女の声が可愛らしいこと、それ以前に彼女とは荷物の配達人として出会ったことなどを浩介は語る。

 話が終わり、ジズの『ご機嫌』と言う言葉で指摘されたことで、浩介は初めて、自分は浮かれていたことに気付く。

「そっかぁ……オレ、多分喜んでたんだな……」

「そうだね。喜んでいるね。昨日とは違って、ソワソワって感じ。贈り物をもらって、わくわくして箱を開けようか、それとももう少し待ってみようか、って迷っている感じかな」


——迷ってる? 何に迷ってるって言うの!?


 浩介が返答に困っていると、ジズが言葉を重ねる。

「そうあんまり考え込まないで。迷っているって言うのは、詳しく言うと、そう——『仲良くなれそうで、お友だちになれそうでうれしい』『まるで宝箱を見つけたみたいだ』『でも仲良くなるのは怖いな』『また独りになったらどうしよう』『じゃぁ、そもそもこの宝箱は開けない方がいいかも』——って感じかな」

 浩介自身が気付かなかった心の細部を、ジズはまたしても指摘してくる。

 浩介はギクリとするものの、指摘されたこと自体に不快感は感じていない。緩やかにカウンセリングを受けているかのようだ。


「で、そのとは仲良くなれそう?」

「どうだろう。とりあえず、名前は聞いて、こっちも自己紹介して。これからちょくちょく会いそうだし、次第に仲良くなったりすることもあるかもね」

「ははは。“仮の前提”が多いなぁ」

「“仮の前提”?」

「そう。『〜かも』とか『〜しそう』だとか、ね。別にいいじゃん、どういう風になるのか、先のことは今は解らなくても、言ったことと先の出来事が違っていても、さ。ボクは今、キミがどう思っているか、と聞いているだけだよ」

「自分がどう思っているか、か。それが言えてない、ってことか」

「そうそう。何だか、“間違えないように”しているだけ、そう気を付けてしゃべっているって感じだよ。もっと自由に話していいのに。ほら、ミオもそう言ってるよ」

 相変わらず、ミオがしゃべっている声は聞こえないが……2人(?)してそう言うのなら、そうなのかもしれない。

「そう言えば……話は戻るけど、昨日はいきなり話せなくなった——いなくなったって思ってたのに、どうしてオレたち、また話できるようになったんだろ?」

 浩介は今日も夕食を終え、自室に戻ってきたタイミングだ。タイミングも重要ってことかな?

 ちなみに、本日のディナーのメニューは、ナスのしぎ焼きと海鮮サラダ(ダイス状にカットしたサーモンの刺身が乗っている)、エノキと油揚げの味噌汁。小鉢で小さめの冷奴が付いてきた。ザ・和食、というか「おばあちゃん家の真心のこもったお夕飯」というか。洋館であるこのヴァネッサ邸に、「似合っている」かと聞かれたら少しだけ困るが。

 もちろん、味は絶品。味噌の味がよく染みたナスが、食欲をそそり、本日もまたご飯をお代わりしてしまった。

 最近、浩介は食が太くなった気がする。ウヘウヘ(ウハウハではない)気分の“ご褒美タイム”があるから、カロリーはしっかり消費しているはずだから、太ることはない、かも……と浩介は考えている。

 浩介の疑問に、ジズが答える。

「別にいなくなった訳じゃないってば。時間軸とかタイミングとか、えにしとか。いろんな条件が——そういったものがつながっていって、結果としてボクたちはお話出来てるって訳さ」

「ふーん……で、一体どんな条件なんだろ?」

「とりあえず『夜の遅い時間』『この部屋で』『浩介1人で』ってのが条件みたいだね。ほかにもあるんだろうけど……よく“見えない”なぁ。何か強力な因子があって、それに引き込まれているって感じはあるんだけど」


——“見えない”かぁ……。


 ジズの不思議な言い回しに、浩介は少しだけ気を取られる。

「そう言えば……『お話しできたことはほとんどない』って前に言ってたけど、話せたこともあったんだろ? そのときはどんな感じだったの?」

 浩介はベッドに横たわり、近くにいる(であろう)ジズに話しかける。

「そうだねぇ……この世界の言い方をすると、『いろんな世界に行ってみた』になるのかなぁ」

「ふんふん。で、いろんな世界って?」

「そうだね、見てきた世界、少しだけ教えてあげる」



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