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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第一章 月下の邂逅 篇
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■第一章 1−3 魔女

さて、どだ!

アウトか? セーフか!?



 ……カッチコッチカッチコッチ。


 どこかで何かが、時計のように正確なリズムを刻んでいる。


——このリズム、何だか心が落ち着くと言うか、聞いていると眠くなるよなぁ……。


 と、そこで微睡の中にいた浩介の意識は、はっきりと覚醒した。

 いやいや、そうじゃないだろ、と、横たわっていた体を勢いよく起こす。


——狼男はどうなった!?

  あの美少女は!?


 慌てて周囲を見回すと——浩介は見覚えのない、豪奢なベッドの上にいた。畳3畳はありそうな大サイズ。こんなもの、洋モノのテレビドラマとか映画とかでしか見たことがない。その上で清潔そうなシーツをかけられて、浩介は熟睡? 気絶? していたようだ。

 この部屋自体、浩介には見覚えがない。ここ一年ほど根倉にしている自宅——6畳一間(トイレ・風呂共同)の貧乏アパートの一室ではもちろんない。

 ベッドの近くにはこれまたビックサイズの本棚に、クローゼット? 木製のご立派な家具が備え付けられていて、間違いなく“お金持ち(よくわかんないけど貴族とか? 明治時代の華族?  とか??)”のお住まいに違いない。で、こんなトコで、なんでオレ寝てんの? と若干パニックになりながら、上半身を起こした姿勢のままで漠然と考える。

 じっくりと自分の記憶を探る。最後に覚えているのは、通勤で使っている公園の道。


——深夜で、狼男みたいなモノを見て、死んじゃうかも、とか焦って、あとはスンげー可愛い女の子とかエロい女とか見て……エロい女が何かを言っててそこから記憶がなくなって……あれ? あれ全部夢? まさかの夢オチ!?


 狼男らしき生き物や、それを吹き飛ばす美少女との出会い、それがすべてが夢だった、と言われたほうが納得はしやすい。どちらも現実に出会うことがなさそうな人? たちである。でも、そうなると”この場所”と、このベッドで寝ていたことの説明がつかない。清潔そうなシーツの柔らかな肌触りも、しっかり全身で今も感じている。


——ひょっとして、まだ夢の中にいる?


 どうすれば現実世界に——“いつもの生活”に戻れるのかを、浩介はウンウン唸って考え始める。が、考えはまとまらない。何せ、何故ここにいるのか、あのとき何があったのか——とにかく情報が少な過ぎる。

「で、そろそろ良いかね?」

 いきなり声をかけられ、浩介は自分の右やや後方へと慌てて振り向く。

 そこには全裸の美女が、豪奢な籐製の椅子に坐っていた。気絶する前に出会った、巨乳のお姉さまだ。

 坐っている椅子は、エマニエルの椅子だとか言うはずだ。エロい映画がある、と聞いて確認した、DVDのジャケット写真で見たことがある。

 それに負けないほど、色っぽい……いや、こちらの美女の方が勝っている。……いやいや、圧勝だろう。何故か彼女は全裸だし。

 ゆったりとした椅子に深く座った彼女は長い足を組み、ロングの黒髪は胸元に垂れていて、巨乳の頂の先端を隠している。全裸だけど全部は見せない、高度なエロさだ。超・圧勝である。

「ふふふ……なかなか心地いい視線だな。熱くて、全身が痺れるようだ。私の体は気に入ったかい?」

 浩介の視線を感じながら、彼女は扇情的なセリフを口にする。

 相手は何気ない口調で話しているが、コミュニケーション能力に難がある浩介は、アウアウと慌てふためくだけ。視線は自分が寝ていたベッドを彷徨うだけで、相手の顔を見ることも、様子を伺うこともできない。

 と、そのとき自分が何も身につけていない全裸だということを自覚する。


——あれ? 何で全裸? 本当にオレの身に、何があったの!?


 全裸だと言う事実+美女のセリフで、浩介の頭はオーバーヒートしかけている。

 美女は浩介の様子を楽しんでいるようで、ニヤニヤしながらさらに問いかける。

「おや? 自分の姿に気づいたのかい? でも、もう1つの事実にはまだ気がついていないのか。そのあたりで落ち着かないと、“そこの彼女”に呆れられてしまうぞ」


——“そこの彼女”?


 美女の言葉で、ようやく自分が寝ているベッド——自分が寝ていた辺りの近くに、シーツがこんもりと膨らんでいることに浩介は気づいた。

 恐る恐る、シーツをつまんでゆっくりとめくり上げて……


——なんであのときの美少女が寝てんの!? しかもこっちも全裸!?


 浩介は何と、あのときお仕着せを着ていた美少女と同衾していたのである。しかもお互い全裸で。

「ああ、きちんと感謝するんだぞ。嫌々ながらも、素肌を晒しながら、いろんなモノをお前に提供し、看病していたのだからな」

 すでに会話ができない、ではなく、言葉を話すこともできなくなっている浩介は、口をパクパクとさせている。その様子に、ついに美女は爆笑を止められなくなる。

「ぷっクククク、あはははははは! そう焦るな! 別に責任を取れだとかそのセシルが言ったりはしない! とにかく深呼吸でもして落ち着いたらどうだ!?」

 そう言われ、浩介は無理矢理に深呼吸を何度も繰り返す。

 美女は爆笑は収まったが、ニヤニヤしたまま会話を続ける。

「……落ち着いたところで自己紹介といこうか。神崎浩介クン。私の名はヴァネッサ・アメリア・フォーセット。世界と事象の“観測者”にして、幾億の神秘を操るモノ——俗な言い方をすれば“魔女”という存在さ」



本日ももう2話続きます。



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