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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第二章
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■第二章 1ー1 魔女の屋敷の大掃除?

本日の1本目です。


「もっと腰に力を入れてください。ソファーを動かすだけですよ?」

 セシルの指示で、豪華な革張りソファー(2人掛け)を1人で持ち上げ、リビングの端に移動させようと浩介は苦戦している。

「……やはり、力仕事では頼りにならないですね。スポーツとか経験ないでしょう?」

「ンなこと言われても、事情、知ってる、で、しょうに!」

 持ち上がる高さは2センチほど。それを中腰の状態でズラすのは、なかなかに難しい。

 力を込めた両腕と腰、踏ん張る両足をプルプルさせながら、こちとら生粋の帰宅部! その事情は説明したことあるし、知ってるだろ、と浩介は言い返す。脳内で。今は重い物を持ち上げようとしているところだし、言い返す余力もない。

 セシルの場合は体格は細くて小さいが、ヴァネッサの“特別な力”で少ない筋力は増強されていて、このソファーを苦もなく持ち上げることが出来るらしい。そんなパワーが体に秘められているとは思えない、と全員が全裸でいるときに浩介が言うと、ヴァネッサがあっさりと種明かしをしてくれている。

 考えてみたら、あの巨躯の人狼の突進を弾き返したり、横から吹っ飛ばしているのだ。何か秘密がなければおかしい。

「……何ですか? じっと顔を見ていても、何もあげませんよ?」

 そのままの中腰姿勢で考え事をしていた浩介は、結果セシルの顔をじっと見ていたようだ。

「ふんぎぃ……いや、別に何もない、よ。それより、今日の、晩ゴハン! は何か! なぁって……」

「今日はあなたのリクエストのハンバーグです。付け合わせはブロッコリーですが、もちろんお残しは許しませんよ?」

 慌てて誤魔化した浩介の言葉に、律儀にセシルが答える。相変わらず、浩介を手伝う気がないらしい。2人で運べば(セシルは筋力にブーストがかかっているし)簡単に終わるのに、彼女は口を挟むだけ。多分、彼女は浩介に無茶振りをすることを楽しんでいる。

 “ご褒美タイム”を何度も経験しているせいか、セシルとの心理的な距離は、だいぶ縮まっているように思える。彼女は慣れてきた相手には、遠慮がないと言うか……でも、ひょっとしたら甘えているだけかも? どの位言っても平気か、子供が親の愛情を確かめるって言うやつ? そう考えると、セシルは可愛らしい性格をしていると思える。

 ちなみに、ご褒美タイムとは、魔女であるヴァネッサに、精——生命力とか、マナ? だとかを分け与えること。これはお互い全裸で行われるため、女体に並々ならぬ情熱を持つ浩介にとってはご褒美にほかならない。さらに、この行為にはセシルも必ず加わる必要があるらしい。浩介の精をセシルが増幅させて、それをヴァネッサが受け取る、という仕組みだとか。どう言う仕組みなのかはいまだに理解で出来ていないが。

 こういった事情なので、浩介はヴァネッサとセシル、2人の全裸姿を何度も拝んでいる。彼も健全な男性な訳だし、シチュエーション的には“野獣”になる可能性もある訳だが——何故かそういった一線を超えた行為をしようとは考えが及ばない。多分、精を分け与えることで、そういった方向性のエネルギーが現象しているのだろう。

「どうしたんです? もうへばりましたか?」

 よもや自分の裸を妄想しているとは思わない(であろう)セシルが、なかなか動かない浩介に対して声を掛けて来る。

「いや、大丈夫……じゃぁないかな。けっこうヘバってる」

「仕方ありません。大物はこれが最後ですし、片づける前にお茶にしましょう。これが片付いたら、いよいよヴァネッサ様のお部屋の掃除です。これまで以上に神経を使わなければなりません」

 ほら、やっぱりこっちを気遣ってる。すんごく判りづらいツンデレだよなぁ、と浩介は思い浮かべる。もちろん口には出せない。それは、女性慣れしていない浩介でも流石に判る。

「ヴァネッサの……部屋? 何かすんごい物とか出て来そうなんだけど」

「もちろん、常人が目にすることがないだろう物が溢れています。取り扱いに最新の注意が必要です」

「そんなトコにオレみたいな素人を言っちゃっていいの?」

「さぁ? 最悪、あなたが黒焦げになったり、体が半分壁にめり込んだり、記憶が3週間ほど飛ぶくらいでしょう。『あまり心配はいらない』とヴァネッサ様もおっしゃっていましたし」

「それ大事なコトだよね!? どう言う意味で『あまり心配はいらない』なの!? 『あまり』ってことは一応、心配があるようなコトになるってこと!? 触っちゃいけないモノとかもあるんでしょ!? それに黒焦げになるとか!」

「運が悪ければ、ですよ。見つかるのは脱ぎ捨てた肌着の可能性もあります」

「そりゃぁ魔女の下着なんて『常人が目にすることがない』かもしれないけどさ。体が半分壁にめり込むって……」

「ヴァネッサ様の肌着(使用済み)ですから、それくらいのセキュリティーは当たり前です」

「魔女のセキュリティー怖い! 下着見ただけで壁にめり込むの!? 過剰防衛って言葉、知ってる!?」

「ヴァネッサ様は花も恥じらう妙齢の女性なのです。迎撃するのにやや力が入ってしまうのは仕方がないことだと思います」

「魔女なのに“妙齢の女性”って! ヴァネッサってそもそも歳いくつなのよ!」

「……女性の年齢を訪ねるのは禁忌タブーだったと思うのですが」

 急激にセシルの声のトーンが下がり、浩介は慌てる。まずい、失言した! と後悔するが、セシルの目付きが異様な鋭さを発し始める。

「ごめんなさい! 失言でしたぁ!」

 全面降伏で慌てて頭を下げる(頭の角度は90度直角)浩介。それに冷たい視線を向け、セシルは告げる。

「次にベッドに入るときは覚悟しておいてください。今のことはヴァネッサ様に全部報告しておきます」

 何されるんだろ? と若干恐ろしい気分になるが、セシルの言葉で同時に“ベッドに上がる”シチュエーションを浩介は思い浮かべる。一糸まとわぬ姿のヴァネッサとセシルの姿が、ありありと脳裏に浮かび、自然と浩介の顔がだらける。それを見て、セシルが嘆息する。

「……まったく。さぁ、時間を無駄に出来ません。やっぱりお茶はナシにします。ソファーを移動させるのも後回しにします。さっさと次の作業に向かいますよ」

 ヴァネッサの私室は、いつもご褒美タイムを行っている巨大ベッドのある部屋の隣。さらに、このリビングからも扉で繋がっている。その部屋に続く木製の扉のドアノブに、セシルは手をかけた。



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