■第一章 7−3−2(閑話) あの頃の2人
「時の流れか……」
ヴァネッサは先ほどの浩介との会話を思い出していた。今日は“精”の提供もなかったので、今は寝室に1人。いつもは一緒にいたがるセシルも今はいない。なので、1人の時間を楽しむように、ワイングラスを傾けている。
浩介にはこちら側と、人狼と呼ばれていたあの存在が元いた時空とは、時間の流れが大きく違う、という説明をしていた。“主観がどこにあるのか”によって変わるのだ。それは“こりら側”も同じなのだが——止めよう。自分が知っている知識を分け与える意味は今のところないし、できれば与えずに住むならそれもいいか、と考えている。
セシルにしてもそうだ。セシル自身が望むから相応の道具と知識を与えはしたが、元々何かをやらせるために連れてきた訳じゃない。なのに、あのコは納得できず、自分は役に立つ人間である、とアピールし続ける。
本来はあまり必要のない“精”の提供時にブースター役を嫌がらずに(というより積極的に)やってくれているが、実はあまり必要がない。だから別に付き合わなくても……と言いたいところだが、未だにヴァネッサは言い出せずにいる。
——何であんなに積極的なのだ? 異性に裸を見られること、普通の女性なら嫌がるものなのだが。
……止めよう。どの道2人共すでに“普通”ではないのだ、とヴァネッサは自分に反問する。迷うくらいなら、セシルを“拾った”くらいのときに、しっかりそういった事情に触れさせないようにするべきだったのだ。
ただ、“あいつ”と接するようになってからは——間違いなく変化がある。ヴァネッサ自身とは違うところに意識が向くようになっている、とヴァネッサは感じている。
そうか、だからか。なおのことブースター役をやるのに、以前にも増して積極的になのか、と納得する。
——そもそも、アピールしてる相手は私じゃなくて、実はあいつ自身に、だったしな。それを解らせるのは……多分今はまだ難しいだろうしな……。
セシルにとって、ヴァネッサは母親代わりなところがあり、ヴァネッサにとってセシルは“娘のように可愛い”……とまでは言わないが、多少気にかけているところはある。
肉親の愛情を知らないセシルにとっては、ヴァネッサは絶対的に信頼する“べき”相手なのだろうし、別にそれを裏切る気もない。だが、正直ここまで盲目的に信頼されると『あれ? いいのかな?』と考えてしまう。本来自分のことが最優先(というより自分のことオンリー)が魔女なのに、だ。
そう考えて“しまえる”濃密な時間をセシルとは過ごして来ている、とヴァネッサは思う。最初は言葉も碌に話せない状態だったし。幼児の域を抜けたくらいの頃からの付き合いだ。
——最初の頃は、飯食わせるのも一苦労だったものねぇ。
ヴェネッサは昔の2人の様子を思い浮かべながら、ワイングラスを傾けた。
投稿済みの原稿が、アップ時にヘンテコ状態
(文章が途中までしかアップできていない)
になっているのに今気づきました。泣
なので、追加分のアップと並行して、過去アップ分の
チェック&修正を、随時やっていきたいと思います。




