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大魔女の従者  作者: ことぶきGON
第一章 月下の邂逅 篇
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■第一章 3−2 魔道具作りの秘密

本日もよろしくお願いします。


さて、1本目です!



 魔道具——それは、魔法と呼ばれる、選ばれた者たちにしか使えないさまざまなわざを、ただの人の身で使えるようにする道具のこと。

 この世界には“魔法”がある。世界のことわりを無視し、その者の願いを叶える“奇跡の御業みわざ”。どんな原理なのかも知れないし、魔女などの超越者しか繰り操ることは出来ない。が、魔道具があれば、その力の一部だけでも、使用出来る——物理法則を(ほんの一部ではあるが)自由に書き換えられる、魔道具とはそんな代物だ。

 そんな凄まじい能力を秘めたアイテムは、当然ながら時の権力者やそれに近しい者たちに狙われる。もしくはソレらを含む“裏事情”を知った者たちに。

 一時的に世の中が戦乱が吹き荒れた時代には、幾人もの魔道具製作者が争いに巻き込まれ、命を落としてきた。その結果、魔道具の作り手は数を減らし、一部権力者の庇護の元に生きることとなる。

 苦難の時代を越え、いくつかの一族が現在も残っている。そのなかの1つが、この神宮寺家だ。

 目線をコーヒーカップに落とし、真理恵はぽつりと言葉を続けた。

「……どんな苦労があったのか、ご先祖様たちがどんな思いをしていたのか。一応記録には残っているけど、私には想像することしか出来ないの。きっと絶望のなかで喘いで、それでも毎日を生き抜いて……。

 ってご先祖様を偲ぶのが本当はいいんでしょうね。でも、本当は……私たちの一族が重ねた“業”が、私たち自身に返ってきただけなのかも、って実は考えています」

「一体どういうこと?」

「それは魔道具作りそのものに原因があるんです」



 魔道具は、とても便利で凄まじい能力を秘めているが、簡単に作り出せるものではない。

 どんな能力を発揮できるのか? その効果範囲は? 継続時間は? それは作り手が設定できるものではない。秘めた能力は、すべて、どんな“核”を使用するか次第である。

「“核”って、それは作り手が作る物じゃないの?」

「“核”はそれ自体が超常的な存在なのです。我々が作り出すことなど出来ませんよ」

 まず前提として——魔道具作りの始祖は何かしらの方法で、時空を超える手段を持っていたらしい。そこで、“核”を生み出す存在と出会い、始祖はソレを利用した。

「つまり、時空を超えた先の存在の、体なのか魂なのかは知りませんが——その存在を変質させ、いくつもの“核”を生み出したそうです。つまり、私たち一族が生み出す魔道具って、そもそも何者かの犠牲の上に成り立っている。呪われた道具なんですよ、魔道具って」

 自嘲するような表情を浮かべる真理恵。多分、一族そのものを嫌っているのだろう。

「ってことは……あの狼男って……」

「その時空を超えた存在——“核”作成の犠牲者か、その関係者、といったところでしょうね」

「そうだったとしても、何で真理恵ちゃんだけ狙われるんだ?」

 魔道具作りに欠かせない“核”は、新たに生み出すことは出来ないそうだ。そもそも材料となる存在は時空の向こう側だし、作り出す技術も失われている今は、始祖が作り出したものしか存在しない。

 “核”は名家と呼ばれるいくつかの一族が厳正に管理していて、魔道具作りとは『すでに存在する魔道具のものを流用・再利用して行う』ことを指すらしい。

 原因が怨恨だとしても、新たなものを作り出すことが出来ない以上、原因は過去に生み出された“核”だろう。

 そして、一族の中でも神宮寺家が——その当主でもなく、当主“代行”である真理恵だけが付け狙われている。そこに何かしらの理由がありそうだが……浩介にはもちろん、解らない。類推もできそうにないし、何かの意図が隠されていたとしても多分解らないだろう。

 考える意味ないかも、とモヤモヤ考えることを放棄し、浩介は真理恵を見る。

「とにかく、こういった事情を完璧に知っているのは当主とその代行だけ。ほかの者たちは部分的に知っているだけです。聞き耳を立てている者がいないとも限らない。それで、部屋にわざわざ来てもらったのです」

「うーん。魔道具って何か凄そうだけど、そもそも見たこともないし、想像がつかないって言うか……」

「そうですね、魔道具がどんな代物なのか、外見もそうだし能力とかも理解しづらいでしょうね……じゃ、使ってみます?」

 浩介の視線を受け、少々悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、真理恵は提案した。




「……そうです。そのまま集中してください。体にある熱を、魔道具へと移すイメージです」

 座り込んだ体勢の浩介に、真理恵が背後から抱きついている状態。

 なんでこんなコトになってんの? とやや混乱しながらも、浩介は目を閉じたまま自分の腕への集中を続ける。この体勢だと、真理恵のロケットおっぱいは浩介の背中に押し付けられひしゃげている。

 想像していたよりも柔らかぁい——いやいや、集中、集中と、自分の煩悩と格闘を続ける浩介。女体に並々ならぬ情熱を持っている彼にとっては、これは結構な苦行である。

「慌てず……ゆっくりと……そのまま、《颶風ぐふう》へと雪崩れ込ませてください……向こうも拒絶して跳ね返してきていませんし、安心してもっと濃く、雪崩れ込ませて……」

 今、浩介の左前腕部には、真理恵の用意した魔道具が設置されている。籠手のような形状の道具で、前腕部中央辺りに、青い光を放つ宝玉のようなものが埋め込まれている。《颶風》とは、この魔道具にセットされている核の名称で、この魔道具自体の名称でもある。ちなみに、魔道具そのものは重厚な金属製に見えるが、重さはあまり感じない。

 使うには身に付けるだけでなく、正しい使用方法をマスターする必要があるとのこと。その指導のために、真理恵は浩介の背中に張り付いているのである。

 魔道具に慣れるため、と始まったこの体勢は、真理恵の部屋ではなく、少し大きめの板張りの部屋で行われている。エアロビクスとかを教えるスタジオ? とも最初は思ったが、そういった場所に付き物の壁一面の鏡とかはないし、どちらかと言うと何かしらの道場なのだろう。

 なお、何故そんな密着体勢になる必要があるのかと言えば——魔道具を起動させるには《マナ》とか言うエネルギーを使いこなす必要がある。現在の浩介と真理恵の体勢は、魔道具作りの一族に伝わる、親が子供にマナの使い方を教えるときに行う、伝統的な体勢らしい。説明しながら、真理恵は顔を真っ赤にしていたが。

 2人がこの体勢になってから、もうすぐ1時間が経とうとしていた。『体の熱を相手に移す』って行為は、ヴァネッサやセシルとの“ご褒美タイム”のときと感覚が似ているなぁ、とぼんやりと(集中を切らさないようにしながらだが)浩介は考える。

 ……と、そのとき、魔道具の核である颶風が、突然輝きを発し始めた。



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