14話 河童と発掘者と二層
夜が明け、探索2日目。
「・・・」「・・・」「・・・」
言葉数は少なくなった。すでに12時間ほどたっていた。
「だめだな。見つからない」
アリベルはそう言いながら、干し肉とパンを一緒にかじる。
「これだけ探して、見つからないということは、徹底的にやってますね」
レインはむしゃむしゃキュウリをかじりつきながらいやそうな顔をする。
「・・・」
グラスは視線を落とし、言葉数が少ない。
「どうするんですか?アリベルさん」
レインはかじっていたキュウリを飲み込み聞いた。
「どうするもなにも、遺跡に除草剤まかれたのと一緒だからな。いつ生えてくるかわからない」
その言葉にグラスはしゅんとする。
「だから二層に向かう」
その言葉に二人は唖然とした。
一層と二層の難易度は桁違いである。一層は適切な魔法、適切な装備、適切な技術があるか確かめる層である。なければ攻略は困難だがあれば攻略は難しくない。しかし二層になると話が変わってくる。二層では敵の種類が増え、出会う頻度も高くなる。消耗戦になる確率も高く、少人数での攻略は難しい。
そんな層に、一層でさえ攻略が難しい発掘者二人と、発掘者でもない学生が挑む。それが無茶であることは火を見るより明らかであった。
「アリベルさんいくらなんでもそれは・・・」
レインがアリベルを止めにかかる。両者ともその表情は真剣だ。
「ここで引き返してどうなる。スイレン草をとれないままだぞ」
「それはそうですけど」
レインも他に解決策がないためか語気は弱い。
二人の議論が10分ほど続いた。その議論は平衡線のままだった。
「これ以上二人に迷惑かけられません。今までありがとうございました!!私こんなに親身なってもらえて嬉しかったです」
そう言ってグラスは頭を下げる。その表情は笑っていた。
その表情を見てレインは決意した。
「やっぱりアリベルさん僕もやります」
レインはグラスの表情を見て、覚悟を口にする。
「怖いですけど、このままだと負けっぱなしですもんね。「発掘者は依頼人を見捨てない」ですもんね」
そう言って、レインは棍棒を構えた。
「別に研究者をやめるのは止めない」
アリベルはそう言って、彼女の肩を叩く。
「でも、やめるなら自分の意思でだ。じゃないと後悔が残る」
そう言ってアリベルはにやりと笑い、自分の胸を指した。
「私、やります」
立ち上がる。
「いや、やりたいです!!私もやられてばっかりで腸が煮えくり返っているんです!!」
彼女の言葉は強い。ここまで押し込めていた、怒りが爆発していた。なぜ自分がここまで研究の邪魔をされなければいけないのか。今までの理不尽に対してグラスは激昂していた。
「そのために二人の力をあともう少しだけ貸してください!!」
そう言ってグラスは頭を下げた。
グラスの宣言にアリベルと、レインは見合わして笑みをうかべ、頷いた。
こうして彼らは二層へむかう決断をしたのだった。
「それじゃあ二層までの道のりを説明するぞ」
そう言ってアリベルは森奥深くを指差す。
「といっても別に難しい話じゃない。ここをずっと行けば階段がある。そこを降りれば二層だ」
「しかし一応門番がいます」
「門番ですか?」
「心配するな。門番は別に強くはない。火魔法さえ使えればな」
アリベルはそう言って歩き始める。
「明日の朝に、二層への階段へ向かうぞ」
三日目の朝。
『ギャァァァァア!!!』
植物の魔物は火に包まれる。そして茨は力なく地面に倒れこむ。
『ッギィィ・・・』
植物の魔物は黒炭になる。
「前見た魔物と一緒でしたね」
そう言ってグラスはほっとした表情を見せる。
「だから緊張しなくていいって言っただろう」
そう言ってアリベルは剣をしまう。
「ここの門番は一層で絶対敵と戦わせるためにいるのだと言われています。だから別に強いわけではないんです」
目の前には二層へ続く階段がある。
「じゃあさっさと二層へ行くぞ」
アリベルたちが階段に進み始めた。