表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

1話 発掘者と河童と岩

 時代は変わる。

 ここ数年で世界初の魔力で動く冷蔵庫・照明器・通信機と生活をより便利なる製品が次々と開発された。

 また工業だけでなく医療も発展し、治せない病気も少なくなった。

 世界は豊かになり、世界はより小さくなった。数十年後の人はこの時代のことをこう言った。



「魔法産業革命」と。



 光があれば影がある。緩やかに衰えていく産業も当然ある。例えば町を照らしていたランプは照明器に取って代わられ。通信機によって配達屋の需要は小さくなった。


 そして完全になくなった産業も一つ。命を懸けて「迷宮」に潜り、生活に便利な道具や材料を採取する「発掘者」は過去の仕事になった。

 発掘者でにぎわっていた迷宮も過去の遺産となっていた。



 ーーーーーーーーーーーー


「まずいまずい!!早く逃げるぞ!!」


 フードを被った男が息を切らしながら全力で坂を駆け降りる。


「うぎゃぁぁ!!最後に新鮮なアリベルさんのキュウリが食べたかった!!」


 フードをかぶった男のすぐ後ろに涙を流しながら駆け降りる、「河童」がいた。



 彼らは追われていた。生物ではない。転がる岩にである。その岩はどんどん加速して、徐々に二人に近づいてくる。


「何、ばかなこと言ってんだ!!そもそもレインが見え見えの罠に引っかかるからだろ!!そもそもこんな古典的な罠に引っかかりやがって!!」

「いやいや!!アリベルさん。私知っているんだから!!アリベルさんが私に危険な先頭をさりげなく行かせていたこと!!」

「なに!!河童のくせにそんなに頭が回るとは・・・」

「河童を舐めないでください!!種族差別です!!」


 二人はお互いの頬を思いっきり引っ張り合う。


 そんなことを言っているうちに、岩は目の先まで近づいていた。男はそれを見て、一つため息をつき、口を開いた。


「・・・しょうがない。あれ使うぞ」

「あれですね!!それがいいと思います!」


 男と河童はうなずく。男は翻しフードの裏から透明の光を放つ石を取り出す。


「レイン!!つかまれ!!」

「はい!!わかりました!アリベルさん!」


 河童は男に勢いよく抱き着く。


「だから腕つかむだけでいいんだって!!やめてくれよ!!また変な噂立つだろ!!」


 男は河童を引き離そうと押し返す。しかし河童は全く動かない。


「だって怖いんだもん!!」


 河童は鼻水を男の服に擦り付けながらそう言った。


 そう言い合っているうちに、岩が目の前に。数秒後には男と河童がただの肉の塊になる。そんな距離に来ていた。


「あぁ!!もう行くぞ。」


 引き離すを諦め、男は石を頭の上に掲げる。二人の目を合わせ、叫んだ。


「「テレポート!」」


 河童と男の声が迷宮内を反響する。瞬く間に石の輝きが増し、一面を真っ白に包む。


 目のくらむような光が収まる。その場には転がり続ける岩のみ。男と河童の姿はなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ