8:お宝発見?
扉が開くと同時に、湿った空気が俺の頬をなでた。
ほこり臭く、生ぬるい風だ。
おそらくこの隠し扉を開けるのは俺が初めてなのだろう。
つまり俺は今、古代の空気を吸っているのか……そう考えると感慨深い。
通路を鑑定してみても
・隠し通路
と表示されるだけだ。
多少味気なさはあるが、魔獣や罠の反応がないのはありがたい。
……まあ、この遺跡事態が「危険度:超安全」と鑑定された以上、隠し通路にも人に危害を加えるようなものがないのは、ある意味確信できていたことではあるのだが。
「ぷぅたくん……? どうしたのですか、立ち止まってますが」
「いや、感動してな。どんなお宝が俺たちを待っているのかと想像して、緊張しているのもあるかも知れない」
「ぷぅたくんは、どんなお宝があると想像しているんですか?」
「そんなのわかるわけないだろ。見つけてからの、お楽しみだ!」
「(この場合、どうなるのでしょうか……)」
お宝部屋を前にしてテンションが湧き上がる俺に対して、彼女は冷静に何か考え事をしているようだ。
……まあ、人には人の考え方がある。
彼女には何か思い当たる節があるのかも知れないが、口に出して言わないということは、たいしたことではないのだろう。
細長い通路を進んでいると、彼女は何かを思いついたようにこちらに視線を向けた。
「ところでぷぅたくん、知っていますか?」
「知っているって、何を?」
「遺跡というのは二種類あって、一つは大昔の持ち主が他界してそのまま放棄されたもの。もう一つは、大昔の持ち主が引っ越しなどで放棄されたもの。だから遺跡で見つけたものは、発見者のものということになるのです」
「そんなこと、知ってるぞ」
何を言い出すのかと思えば、そんなのは遺跡探索の基礎知識じゃないか。
……まあ、そういうことをあまり意識せずに探索者をやってる人も多いとは思うが。
「では、こんなのは? この遺跡は、ぱっと見た感じですが、綺麗に整備されているようです。言い方を変えると、生活感がありませんでした。つまり……」
「法規遺跡の可能性が高い……ってことが言いたいのか?」
「おっしゃるとおりです。ぷぅたくん、考えて欲しいのですが、普通、引っ越しをするときにお宝を残したままにしますか?」
「それはまあ……あまり考えられないか」
だとしたら、最初に鑑定した「財宝(未発見)あり」というのはどういうことだ?
改めて遺跡自体を鑑定しても、
・遺跡(初級)
・財宝(未発見)あり
結果は変わらなかった。
不審に思いながら通路を進んでいくと、小さな隠し部屋にたどり着いた。
うっすらと埃の積もったそこには、財宝を飾るための空棚が並んでいる。
「……」
絶望的な光景を前に俺が絶句していると、彼女は部屋の隅で何かを見つけた。
「ぷぅたくん、見てください! 金貨が一枚落ちていました!」
まさかと思い、遺跡を改めて鑑定する。
・遺跡(初級)完全攻略済み
・財宝(未発見)なし
よし、とりあえず今日は帰るか。