6:遺跡探索(3)
鑑定能力で『財宝』の存在が明らかになったというのに、なぜ彼女は物憂げなため息を漏らすのだろう……
少し考えたが、わからなかったので「まあ良いか」と思うことにした。
何か、彼女には彼女なりの理由があるのだろう。
もしかしたら、お宝が見つかるか見つからないか……みたいな、ドキドキを味わいたかったのかも知れない。
だとしたら、俺の財宝あるよで興をそがれたののかも……
まあそんなの、俺には関係ないことだが。
「……とにかく、いこうぜ。気をつけろよ、古い遺跡だが、もしかしたら魔獣が隠れていることかも知れないからな」
内心では「そんなわけない」と思いながら、念のために鑑定をする。
遺跡の入り口に重なるようにして青い画面が表示された。
・魔獣:なし
・危険度:超安全
思った通りの結果だったのだが、さっきみたいにため息をつかれても困るから、この結果は口にしないことにしよう。
「え、まさか魔獣なんていませんよね……鑑定は、しなくて良いですからね! ……私の能力なら大丈夫だと思うのですが」
しなくて良いと言われても、すでにしているわけだが。
言っても余計なことになるだけだし、話題を変えてごまかすことにしよう。
「そりゃ、スグメさんは女神だからな。神ってつくぐらいだからすごいんだろ? 何かあったら頼りにするからな!」
「……ぷぅたくん、神々のことを馬鹿にしていますか?」
「いや、いやいや、そんなわけじゃないんだが……」
「それなら、良いですが」
突然圧が強くなった彼女に、たじろぎながら返事をすると、スグメは納得したように頷いた。
なんだ? そういう宗教の人だったのか?
彼女の前で、神のことを話題に出すのは止めた方が良いかもしれない。
俺は彼女を鑑定できないが、できていたら『ネタバレ禁止』とか『やばめの宗教』とかが表示されていたかもしれない。
……もしかして、組む相手を間違えたか?
「ぷぅたくん、よからぬことを想像していませんか?」
「そんなわけないだろ。それより、とっとと遺跡を攻略しちまおうぜ! さあ、隠された財宝を俺たちの手で暴き出そう!」
いや、気のせいだ。気のせいってことにしておこう。
そうして俺たちは、遺跡に足を踏み入れた。
俺はこの歳になって初めて遺跡に入るわけだが、中の様子は本で読んで想像したものとは少し違っていた。
なんというかもっと、内部構造が入り組んでいて迷路みたいになっているのかと思っていた。
だが実際は、そうではなくほぼ一直線の一本道だった。
道なりに歩いて行くと、それだけで最奥にある部屋にたどり着いてしまう。
さすがは危険度が『超安全』なだけはある。というか……
「お宝は……?」
「さあ、どこかに隠されているんじゃないですか?」
彼女はどこか、遠くを見つめるようにしてそう呟いた。
まあ確かに、そんな簡単に見つかるようなら、他の探索者たちが持ち帰らないわけがないか。