3:女神を名乗るそれ
ということで、俺は探索者が集まる集会場に来ていた。
遺跡探索は、仲間と協力してやるのが普通だからな。
やる気のある奴らは、神殿で能力に目覚めたその足で遺跡に向かうらしいが、そういう意味で俺は一歩で遅れている。
わけのわからない能力持ちが足を引っ張るなんて悪夢は、夢の中だけで十分だ。
だから、場合によっては探索者の道に見切りをつけることも考えていた。
だが、実際に試してみてわかったのだが、これは十分遺跡探索の役に立ちそうだ。
もちろん、身体能力は一般人のままだから、迷惑はかけるだろうが、それ以上の利益を提供できる。
見つけた宝物を鑑定することもできるし、遭遇した敵の弱点を見抜くこともできそうだ。
となればまずは、やることは一つ。
ともに探索をする、仲間を探すことだ!
「さて……とは言ったものの、どうしたものか……」
集会場には、俺と同じく仲間捜しが目的の奴らが集まっている。
今日、あたら意思能力に目覚めたばかりのルーキーや、そんなルーキーを仲間に引き込もうとするベテランたちが。
だから少なくとも、人が見つからなくて困ることはないのだが、さて。
「どうしたものか……」
鑑定能力を使って調べれば、優秀な能力を持つ探索者を見抜くことはできるだろう。
だが、それでは面白くない。
ロマンチストと笑ってくれて良い。俺は初めての遺跡探索は、運命的な出会いをしたパートナーと一緒にしたいんだ。
だから俺は、あえて『鑑定』が発動しないように抑え込むことにした。
目立たないように壁際によって、深呼吸。
「大丈夫、俺はやれる……大丈夫、俺はやれる……!」
ドクドクと高鳴る心音。
声をかけて、断られたらどうしよう。
俺のことをこき使うような、ブラック探索者だったらどうしよう。
使えないということで追放されたという話を、今までは他人事として聞いていた。
いざ自分もそうなる可能性があるとなると、どうしても足がすくむ。
「……ふぅ」
とりあえず、大きく息を吐く。
まだなにもしていない? そんなこと、知ってるわ。余計なお世話だわ!
もし俺の能力が、もっとわかりやすい『剣術』とか『魔術』だったなら……
などと後悔しても、もう遅い。いや、遅いとか早いとかじゃなく、意味もない。
だがいつまでも、こうしてうずくまっていてもだめだ。
今は、とにかく一歩前に踏み出す……!
決意を込めて、もう一度だけ息を吸って……
歩き出そうとしたときに、不意に真横から綺麗な声が聞こえてきた。
「あの、あなたも探索者を探してるのですか?」
…………はい。そうです。
と、話したつもりだが、口から出たのはかすれた息だった。
「やっぱり、そうなんですね! あの良かったら、私と一緒に組みませんか?」
「……どうして、その、俺なんかと?」
「別に深い意味はありませんよ? えっとそう、私と同じように壁際でじっとしてる人が居て、気が合うかなって感じたとか、そういうやつです」
はにかんだ笑顔で層口にする彼女は、黒髪黒目の乙女だった。
「わかった。俺に断る理由はない」
「よかった〜! それじゃあ自己紹介をしましょうか。私はすぐめ。能力は、女神です!」
「そうか、俺はぷぅた。能力は……その、鑑定ってやつだ」