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0:あなたの能力は『鑑定』となりました

 と、言われても。何かが変わった感じはしなかった。

 戸籍登録の時に伝えると、数百年に一人現れるかというレア役職らしく、珍しがられた。

 だが、それにしては地味というか……だって、鑑定するだけだろ?


 儀式の帰り道、試しに寄った武器屋に並ぶ、目の前の剣をじっと睨みつけてみた。

 だが、何もわからない。『鑑定士』というぐらいだから、一目で見抜けるのかと思ったが……

「おやじ、この剣は?」

「ん? ああ、ぷぅたか。それはな……

 うっかり聞いてしまったせいで、店主の蘊蓄語(うんちくがたり)が始まった。

 曰くこれは伝説の剣で、勇者の剣で、竜殺しの剣らしい。

 まあ、嘘くさいけど。

 そう思った瞬間だろうか。

 剣の上に青白い窓が現れた。

 そこにはこう書いてある。


・伝説の剣(偽)

・勇者の剣(偽)

・竜殺しの剣(偽)


「んだよ……偽物じゃねーか」

「偽物だとぅ!? 失礼な、ことを言うな!」

「だって偽物だから、しょうがないだろ。それよりも俺は、そっちの小さなナイフが気になるね。それは?」

「ああ、これは遺跡で発掘されたナイフだ。まあ、なんてことのない、ただの錆びたナイフだ」

 なるほど、遺跡で発掘……か。

 最近になって、発掘調査が進んでわかったことなのだが、俺の住むこの都市(いなかまち)は、数千年前にとある文明が栄えていたという。

 そこで発掘されたナイフというのなら、期待ができる。

「わかった、じゃあこれを売ってくれ」

「良いのか? 力も感じないし、切れ味も悪い……役には立たねえぞ?」

「良いんだよ。それに、ってことは安いんだろ?」

「まあ、そうなるな。銅貨一枚か、それ相当の何かと交換してやる」

「そんなもんか。待ってろ……」

 着物の袖からくすんだ色の銅貨を取り出して軽く投げつけると店主はそれを受け取った。

 代わりに俺は、並べられたナイフをつまみ上げて凝視する。


 たいていの場合、こういう、錆びて使い物にならないナイフみたいなのが、隠れた力を持っているものだ。

 もちろん外れも多いが、なんとなくこれからは何かを感じたんだよな……

 例えば……古代金属が使われているとか、破魔の力が宿っているだとか。

 そんなことを考えていると、ナイフの上に青白い窓が現れた。

 そこにはこう書いてある。


・神話級のナイフ(錆)

・古代金属が使われている。


 ほら見ろ、思った通りだ!

 古代金属ということは、魔力を流すことで状態を復元する仕組みが組み込まれていても不思議ではない。

 改めて青白い窓を見ると、気づいたら一行増えている。


・神話級のナイフ(錆)

・古代金属が使われている。

・魔力を流すことで、錆や欠けを修復し、真の姿を顕現する。


 どうやら鑑定(このちから)は、俺が知りたいと思った情報を表示してくれるらしい。

 逆に言うと、知りたいと思わなければ、つまり興味を持たなければ、何もわからないと言うことか?

 まあ、そのあたりのことはどうでも良い。

 それよりも今は、試しに魔力を流してみよう。

 魔力を活性化して、右手からナイフへと移していく。

 パキッパキッと錆が割れ落ちる音がして、その下から鮮やかな金属が姿を見せる。

「「おお……おおお……!」」

 俺と店主の驚嘆の声が重なった。

 その波紋は光を無限色に反射させ、握るだけで持ち手に勇気を与えてくれる。

 まさに、空にかかる虹のように。


雨弓(レインボウ)のナイフ

・持ち主に絶大な力を与える。


 鑑定を見ると、名称が変更されていた。

 雨弓か。なかなかに良い、業物だ。

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