54話 状況整理
「はい……ララ・ダスティフォリア様はシュメイラル王国二十一代目国王フェリサル・エリア・インベラーネ様と婚姻の儀を執り行う運びとなりました」
「――は?」
「これはまたーー往生際が悪い男だねー」
「ど、どういう事だ! ララが結婚!? しかも王様と!? なんで!?」
「んー。それも後で僕から話した方が良さそうかなー。さっきの話とも一応繋がってる話だしこの人達から聞くより信憑性が少なからずあるんじゃないかな?」
到底理解出来ない話だが、確かにまだアクアリウムの口から聞く方が納得できる可能性があると思った。
「ララ様は今後、皇后陛下となるべく王城に住まわれる予定ですのでお見知り置きを」
なんだよ、それ。
「それでは我々はこれで失礼します。しばらくの間はこのホテルを自由にお使いください。それとここでやっていくだけの金銭はこちらに置いておきますので」
テーブルにゴンっと金貨の塊を置くと、一礼し黒服の男女は部屋から出て行った。
「うわー。これまた凄い量のお金だねー。これならもう一生クエストに行かなくて済むんじゃないのー?」
そうやって軽口を叩くアクアリウムの横で呆然とするしか出来ない俺がいた。
「ま、とりあえず今は少し寝た方が良いねー。君たち人間ならばここくらいが体力の限界だろうから」
「いや、でもこんな感情で眠れるわけが……」
そうだ。この状況でぐーすか寝れるほど俺の精神は図太くないし、能天気でもない。
次から次へと問題が出て来やがる……!
「まーまー。とりあえずシャワー浴びてベッドで横になりなよ。僕その間に買い物してくるからさ」
シャワーか。
確かに頭を整理するためにも一回入るべきか。
「分かった。そうさせてもらう」
「はい! ルークス君素直でよろしー」
――温かな水が頭を経由して全身に伝う。
その通り道の左顔面に温水が染みてじんわり痛む。
「はぁー。なんだってんだ本当にこの世界は」
まず、クエストの目的地はブラッキーナが仕込んだモンスターが出現。
それを撃退後、ナラスラーバの出現と俺の過去を知るような謎の発言。
仲間のはずだったフレアと戦闘、身分暴露。
またその後、誤認逮捕で地下牢で拷問。
そして……ララのいきなりの婚姻情報。
いくらなんでも一人の人間が一日で処理出来る情報量を完全完璧にオーバーしている。
それを処理出来るか出来ないかもアクアリウムの話次第か。
――「貴様がこのままだと、ララ・ダスティフォリアは数ヶ月後――死ぬ」――
――「貴様が勇者の定義を知る事こそがダスティフォリアの願いを叶える最重要なファクターだ」――
やはりここが一番の懸念材料であり、最優先で解決しなければならない議題だ。
勇者の定義。
くそっ! 転生前にそれくらい教えるもんだろあの性悪女神め。