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51話 青空の下に立つ悪魔

 


「――クソっ、あのお人好しが。やはりあやつは頂点の器では無い」




 怒りと度が過ぎた正義感がこもったはず右手を下げると、メガネ男はそのまま牢屋から出ていきながら言葉を落とす。



「ララ・クリザイアル・ナラスラーバ……並びにダスティフォリアに言っておけ、お前は憎しみしか生まない憎悪の象徴だと。あの戦争の痛みは消えはしないとな」



 嘘だろ。

 このサディスティックメガネは、ナラスラーバのことまで知っているのか!?






 ――手枷足枷を取り払い晴れて自由の身になった俺たち。


 が、



「なんかすいません。俺たちだけ釈放されて……」

 蹴られた腹部を抑えながら謝罪する俺に、ブラックさんは優しく答えてくれる。




「いいんだ。お前たちも無実の罪を着せられただけの同志だ。私のことは気にするな」



 その言葉を聞いた俺たちは地下牢の階段を目指して歩き始める。







 ――青々しいキャンパスの中に白い雲が点々と浮かぶ。



 たかが青空を眺めることが出来てここまでの感動を覚えたのはいつぶりだろう。



 衛生兵に連れられ、収容所を出た俺達は、フェリサル様とやらが用意してくれた宿までの地図を片手に王都に繰り出した。



 シュメイラル王都は、王城を中心に放射状に伸びる白を基調として整備された幅五十メートルはある大通りが三本あり、その道から更に枝分かれする複雑な街並みである。


 大通りには野菜、肉、魚、日用品などの様々なマーケットが開かれており、人々が溢れかえり活気に満ちていた。



 そんなマーケットを俺とアクアリウムで仲良く? 進んでいく。




「――あああぁぁ、本当に死ぬかと思った。いやあれ普通に人間が人間に出来る行為じゃないですよね! 水神様!」


 青く晴れている空の下に青く顔を腫らす無適性者が、年甲斐も無く王都中に響くであろう声量で喚き、周囲を恐怖させる。



 そんな俺を見て満足げにニコニコした顔で眺める水神。



「いやぁー、青春だねぇー青年」



 どっ! こ! が! だ! 地下牢に収容させられて顔面蹴り一発、腹蹴り八発が青春とかどんだけいじめられっ子だ。可哀想に。



「ごめんねー僕回復魔導は使えないんだー。ダスティンに会えたら治してもらいなー」


 こんな時にシャルルさんが居れば!

 優しく治療し、夜の王都を案内してくれるに違いないのに!




「まぁまぁー、最後には助けてあげたんだからー」




「――許して……くれない?」


 わざと潤ませたであろう藍色の瞳でも、こんな可愛い子に上目遣いをされて許さ無い事ができる男なんているのだろうか。



「分かったよ。今度はもうちょっと早く助けてね。俺泣いちゃうから」


 雄としては非常に情けない吐露だが、これ以上の理不尽は御免被りたい。


「あっははは、ルークス君の泣き顔は是非見たいねー」



 あれこの子悪魔だったっけ?


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