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49話 無数の刃跡




「ああ、すまないな礼儀を欠くつもりは無かったんだ。私は王立憲兵騎士団元副団長 ブラック・ククール・カイルスという者だ」




 なんでそんな重役様が、俺達と同じ手枷足枷を身につけて、こんな冷え切ってカビ臭い牢獄でバカンスを楽しんでらっしゃるのだ?



 もしそうゆうお好みのプレイだとしたら、レベルが高難度過ぎやしないか。



「そんなお偉い様がなんでこんな所に?」



「――八年前の戦争で……はめられたんだ」



 え!? 嘘だろ!?



 ……ああ、そうゆうことか。

 気持ち悪い勘違いをしてしまった。



「もう一度問うが、お前達は何者なんだ?」

 姿が見えない元副団長を名乗る男はまた低音で問いかける。



「俺はギルドメンバーのルークス・アルフレッドです。こっちの女の子は……」



「はーい! 僕はアクアリウムって言うよー。職業は……ドラゴンでーす」


 あれ職業なの? 

 俺も天下不滅の無適性者でーすと言うべきだったのか?



「ドラゴン!? 入ってきた時から凄まじく強い魔導反応だと思ったが……。」


「にゃははー。それが普通の人間の反応だと思うよー。この子が特殊なだけでねー」

 目を線にして笑うのは龍化した時と同じだった。




「――王殺しの大罪人が随分と楽しそうだな。ブラック」



「ーー!」




「――レナードか」


 ランプを持った部下を二人ほど携えた、見るからに性格悪そうなメガネ男が檻の外から俺たちを見下ろしている。


 それよりも王殺しってなんだよ。



「大罪人の貴様と人殺しの華姫が揃うとは……今日はなんと言う厄日なんだ」


 華姫? コイツもララのことを知っているのか。

 人殺し……あの戦争でララは何をしたんだ。


「何回言わせるつもりだレナード。お前もあの場に居た精鋭の一人なら分かるはずだろ! 俺は先代を殺めるような恥晒しでは無い!」

 追加された二つのランプの淡い光に照らされ、謎の副団長様の顔がようやく晒される。


 ゴツゴツとした岩のような身体つき。無数の刃跡が縦横無尽に刻まれた顔面、力強い目つきの奥には並々ならない生命力を感じる。



「もうよい。貴様はフェリサル様のおかげで生き永らえているだけの惨めな罪人だ」

 そして男は懐から錆び付いた鍵を取り出し、牢の鍵穴に刺す。


 おっララの交渉が成功したのか!

 良かった。

 首が繋がったままお日様を拝めそうだ。





「――っぐぁぁ!」


 左側頭部に脳細胞を大半死滅させるであろう衝撃が襲う。


 一瞬何が起きたのか理解出来なかった。


「――ルークス君!」

「レナード貴様いきなり何を……」



 痛いのか?


 ……ああ。痛いな。

 何されたか理解してくると余計にめちゃくちゃ痛い。


 くそっ。頭を蹴るなんて普通の人間なら少しは躊躇するものだろ。

 シャルルさんならしかね無いけど……



 やばいな。

 目線のピントがいつまでも合わない。

 まるで地面が上下左右どこにでもあるようだった。


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