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30話 ララ・ダスティフォリア

「久しいな、シュバインス大佐。少し貴様に話があってな。いや、今はアルフレッドと名乗っているのか。」



コイツは何を言っている?



「どうしたララ? なんか変な物でもつまみ食いしたのか?」

笑いながら話しているが、心の中には嵐が吹き荒れているほど揺れ動いていた。



「そうだったか、やはり貴様はシュバインスでは無いな。奴ならもっと知性的な話し方をするからな」


「――さっきから何言ってんだよララ。シュバインスって誰のことを言ってんだ?」

半分答えは分かっている。

多分。


「陸軍最高顧問付 特別軍事兵団所属 ルークス・トレイヤ・シュバインス大佐。これが貴様がクリアナ王国内で最終的に獲得した地位と名前だ」


 陸軍? 俺が?

 大佐? 俺が?




「どうしちまったんだ! ララ! 冗談もここまで伸ばされるとツッコム方が大変ってもんだぞ」

確信している。これは冗談では無い。

あいつは俺がここに飛ばされる前の俺を知っている。

そしてまたコイツも俺が知るララでは無い。



「信じる信じないは貴様のその小さな脳みそを最大限活用して考えれば良い。だがそれが事実であることは、貴様が認めない選択をしたとしても何ら変わらない」


口内にあるすべての水分を飲み込む勢いで唾を飲み込み、質問の準備をする。


「お……前は、誰なんだ?」



「私はララだ、それ以上でもそれ以下でもない」

コイツはさっきから常に、冷たく悲しい雰囲気を身に纏っている。まるで何かから自分を守るように。




「違う。お前はララじゃない! あいつは明るくて、正義感が強くて、人の痛みに寄り添える良い子だ!」



「それは貴様が見たララという人間の、ほんの一部に過ぎないかも知れないという事は考慮しないのか? 貴様はあらゆる感情をそのまま濾過せずに外界に垂れ流せるのか?」


「それは……」

その時、ふと一つの疑問が生まれた。


「お前はララでは無い。ララであるならば、女神様との制約によって俺に過去や魂に関する事を話すことが出来ないはずだ。」


山岳地帯特有の突風が冷たい外気を身体に添わせながら通り抜け、音さえも一緒に持ってしまったようだ。

静まり返った月夜に二人だけの声だけが響く。



「――そうだな。しかし私はララである。それは断言しよう」

ここまで否定されるとな。

見た目はララの別人か? いや、双子を異世界に送るほど酔狂な女神では無いはずだ。



「ま、まあ良い。話があるって言っていたが何だ? 俺的には頭を整理整頓するために、早く帰って寝たいんだが」

これは事実だ。

俺の脳では処理し切れる保証はないが少し一人で考えたい。


「ああ、こんな話をしたかったわけでは無いんだ」



「貴様がこのままだと、ララ・ダスティフォリアは数ヶ月後――死ぬ」

 


なん……だって?


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