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27話 Fランなめんな!!

 作業員の叫び声が声が採掘場にの天井まで響き、また俺たちの耳に届くまでの一瞬で数十匹のカラバイスが自由落下してくる。


 おいおいおいおい! こんな量の化け物ララなしで捌けるはずが無い! ララに助けを求めて九十八坑道に向かうか? いや、ここで無適性者とは言え俺が離れるわけにはいかない。


 どうする考えろ!! もういっそ扉を開放してしまうか!? 


 だめだ、こんな場所で暴走でもしたら、モンスターを倒せても洞窟自体を破壊してしまっては元も子もない。




「――フッッ!」



 目の前が、破裂音と共に一瞬で緑色の世界に包まれる。

 大自然の中三百年以上生き続ける大樹が芽吹かせる、清々しく生命力に溢れた幼葉の様な緑では決してない。

 ドス黒い色素が数滴混ざり、黒く濁った緑の液体だ。



 俺から貰った安物で、空中に薄汚い花火を咲かせた張本人は、この圧倒的絶望の状況下にまるで見合わない、爽やかな笑顔でこちらを見る。


「皆さんのことは任せます。僕はさっさとコイツらを片付ける事にします」

 そう言い残し、空中を駆けて行った。


 コイツは誰だ。俺が知ってるフレアはこんな頼り甲斐があるセリフは吐かないはずだ。

 訳は分からないが、コイツと一緒ならもしかしたら生きて帰れる気がしてきた。


 ララに続きフレアにまで。

 あーー。本当に他力本願な勇者だなと自虐の念が漏れる。

「こんなんで勇者志願者は笑っちゃうな……」



「――ハッ!」

 その、鍛え上げられたであろう見事な斬撃の軌跡を辿るように、カラバイスの破裂音が空気中を半拍遅れて振動する。


「お、俺があげた剣だよな、なんで鋼があんな簡単に切り裂けるんだよ……」

 そんな感心して剣技を見上げている俺の足元に、フレアの斬撃から辛くも生き延びた強運の持ち主が現れた。



 やるしかない。集中しろ。目の前の奴のことだけ考えろ。




 ――集中……前しか見るな。




 ――エネルギーを感じろ、目標を見ろ、ここで俺がやらないと必ず皆に危害が加わる。



 どいつもコイツも絶対俺を馬鹿にしてるよな……



「――格闘士 開放 『真波一撃(しんはいちげき)』!!」




「……あれっ?」

 俺の渾身のパンチは見事に空を切り、カラバイスの間合いに自分からノコノコ入る結果になった。


 そんな無様な俺に容赦無く鋭い牙を突き立て、このチャンスを逃すまいと襲いかかるカラバイス。



 ――やばっ。




()()()()




 身体が反応した。

 エネルギーを余すとこなく集約し、拳に乗せた。


「アアアアァァ!」

「――Fランなめんな!!」



 カラバイスの鋼は粉々に砕け散り、宙に舞い上がる。

 もはや何も身に装備していない、ただ大きいだけの蜘蛛は炸裂音だけを残し壁に激突し、砂煙をあげていた。



「ハァ、ハァ。なんとか……あれ」


 目の前の脅威が一時的とは言え去った安心感からか、足が震えて上手く立てない。



 ――トンッ


 倒れ掛かった先には、高級生地の滑らかさとその下に感じる逞しい胸筋を感じた。

「ル、ルークスさん。あ、ありがとうございます。あなたが居なければ皆さんの安全は保証できませんでした」



「フッ、あんだけ暴れ回って下さった命の恩人様が、たかが一匹の倒しただけの雑魚を誉めすぎではありませんかー? 性格戻ってるし」


 命を救ってくれた人に対する態度としては最悪だが、俺のちっぽけなプライドが素直にお礼を言う事を拒んだ。

 強いイケメンは悪だ。なんて多分俺は思ってない。


 とはいえ、あれほどの数のモンスターをこの短時間で倒せるなんて……


「すごいな兄ちゃん! あの量のカラバイスに襲われて生きてるのが不思議なくらいだ! 本当に助かったよ!」

「いやはや。ここまでの剣技を持っているとは……是非ワシにここの責任者としてフレア殿にお礼をさせてもらいたい」


 あーー。やっぱりフレアだけ賞賛されますよね。

 うん。分かってる。

 絶対的に俺の方が貢献してないけど、ちょーっとはお礼言ってくれてもいいんじゃない?



 一匹倒す苦労がお前に分かるのかジジイ!


 そうして子供のように拗ねている俺の左脇腹にいきなり、猛烈な勢いで人体らしき物体が直撃した。


「ルークスルークス! 無事だった!? 怪我は? 痛い所無い?」

 そう言って俺を心配している、仮称ララは身体中にカラバイスの体液を浴び、識別困難になっていた。


「どんだけの量殺したらそうなるんだ……」

 すると緑の物体は顔らしき部分に指のような物を近づける。


「んんーー。多分多分百匹は倒したかな!」

 はい。もうこの子に関してはレベルが違うとまた痛感する。


「フレアもフレアも! ルークスと皆を守ってくれてありがとうね!」

「い、いえいえ、ララさんが坑道の敵を倒してくれたからこそですよ」

 そう言い、握手を交わす二人。


「ーー。」




「でも何でまたこんなにもの、モンスターが出てきたんだ」

 困惑する作業員達。



「それなんだけど。あたし分かったの」

 ララが真剣な顔で喋り始める。


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