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21話 工業都市ココモア大洞窟①

 男の威厳を保てたという意味でも本当に助かった。


「ふん。確かにまあまあ暗黒魔導に精通しているようだが、まだ少し甘いな。どこがどうとは言えないが、少し……甘いな」

 コイツにお礼を言うのは何故か自尊心が拒否するのだ。


「そ、そうですよね、僕なんかが出しゃばってすいませんでした」

 やめてー? なんかすごい良心が痛むからやめなさいよ。


「ルークス。ダサい」

 目を線にしたピンクサラサラロングヘアーの女の子が俺の心に針を投げつけてきた。

「……ごめんなさい」




 ローファストフィッシャーの群れを見事撃退することに成功した俺達はココモア大洞窟に向け砂漠をひたすら歩く。


「そういえば、さっきなぜララさんは戦闘に加わられなかったのですか?」


「それはねそれはね! あたしがルークスの先生だからだよ!」

 もちろん初耳です。

 確かに、扉の調整は勇者になるために重要な要素であるのは理解しているが、専属の教師が付いていたなんて俺は知らない。


「は、はぁ。でもお二人は非常に仲が良さそうだったので何か特別な関係なのかと考えていました」

 特別な関係? あぁコイツもそうゆうことを考えてしまうお年頃な一人の男だったのか、夜一人で慰める同士よ。お前のことを見誤っていた。許してくれ。


「てっきり御兄弟かと思っておりました」

 やっぱこいつ苦手だ。真面目で性格穏やかなイケメンと仲良くなれるはずも無いのだ。


 しかも今の発言は必ずララなら『違うもん違うもん! ララとルークスは同い歳なんだよ!』と甲高く張り上げた声でツッコんでくるはずだ。


 それを予想して待っていたのに一向に俺が想像した、ツッコミが聞こえてこない。


 逆に低く、悲哀のこもった復唱だけが聞こえてきた。

「――兄妹かー……それでも良かったよ」


 言葉の意味が少し分からなかったが聞き流すことにして、ひたすら砂漠に足跡を付けて進んでいく。




 二時間後、ララがお腹が空いたと喚きながら進んでいるとやっと岩山に囲まれ、工場から蒸気が絶え間なく噴き出ている工業都市に着いた。


 そこは岩山に無数の穴が空いており、鉱物のリアカーを引く者、休憩終わりで洞窟に向かう者、やっと仕事が終わったと気持ちよさそうに背伸びをする者など様々な人々が働いていた。


「すごいですね。噂には聞いていましたがここまでの規模とは、シュメイラルの重要資源財源に認定されているだけあって、驚かされますね

「洞窟っていうからただの山に穴が空いてるだけだと思っていたけど、こんなに発展しているなんてな」


「ルークスルークス! お腹減った! ご飯食べたい!」

 コイツ完全に俺らが無一文なことを忘れてやがるな。


「金がない。さっさと終わらせて帰るんだ」

 そう言うとララはその場にうずくまり、ここから動かない宣言を大声でしてしまった。

 俺と同い年のはずの女性がここまで子供っぽい行動をするのかと驚いていたら、腰あたりの高さから、掠れてヨボヨボな声が聞こえてきた。


「――あーー……そこの兄ちゃんや、あんまり妹さんをいじめたらいかんぞ? お腹を空かせておるようじゃが、お金がないのか?」


「恥ずかしながら、その通りです。クエストの途中ですが前金をかくかくしかじかの理由で無くしてしまって……」

 そのかくかくしかじかの本人は未だうずくまり自分の膝に籠城している。


「そーかい。そーかい。そんなに急ぎのクエストじゃないのなら、わしらと飯でも食わんかい?」

 それを聞いたララは即籠城をやめ、おじいちゃんの話の続きを欲した。


「おじいちゃん! ありがとう! ララお兄ちゃんからご飯あげないって、言われて倒れそうだったの!」

 あんだけ俺より年齢下に見られることに嫌悪感を抱いていたのに、この切り替えの速さとは。つくづく女性とは恐ろしい者だと痛感する。


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