ウィリアムの場合4
本日の投稿が少し遅くなりました。申し訳ございません。
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つってもなぁ…所詮は俺、ハズレ王子やってたからなぁ…
血筋正しい正妃様の第一子で正当な王の後継者で有る兄上がいて、俺は兄上の為にもバネッサの為にも王位なんて欲しいと思ったことが無かったから、自由にしてきたんだよなぁ…
もちろん、ハズレ王子なわけだから、『側近』なんてものも考えても無かったし、父上からも勧められることもなかった。
と、いうことはさ俺、現状王子っていう肩書き以外何にも持ってないんだよね。
なんだろう、自分で考えながら、あの女みたいにテヘペロってしたくなったのは…自分の思考にブルっと身震いした。
でもまぁ、こんな俺だけど、自由にさせて貰ってた分顔だけは広い。正当な側近になりそうな奴らはすでに大抵兄上の傘下に入ってる。
ただ、兄上より歳上の人達の中には敢えてそこから離れてるって人もいるし、今までの慣習にとらわれなくていいのであれば、俺の友人達もそれなり以上にできる奴は居る。
俺だって別に四六時中バネッサにべったりくっついてた訳じゃ無いからな。そりゃぁ、バネッサのところに行くときは俺1人だったけどさ。
頭の中で必要な人員をなんと無く描き、もちろんそれがダメだった時の次の手も描き始める。これがうまくいけば…将来国が回せるであろう人選を、今の立場では無く、自由にしてきた俺だからこそ選ぶ人選で…
数ヶ月かけて、なんとか人を揃えつつ、今までほぼ手を出してなかった父上の補助的な執務にも手を出し始めた。
父上より上の世代の中枢の人間達は、やっとそれなりにやる気になったのかと安心したみたいだぞ。なんて声も『側近』と呼べるものから耳に入ってくる様になった。
ただ…それと時を同じくして兄上の行状がまた一段とおかしくなってきた事は気付いていた。兄上と話をしたいのだが、なかなか時間が合わず、そして城内では閉じこもりがちになってしまった兄上がどう考えているのか、何を考えているのかが掴めない…そんな時を過ごしながらも、以前バネッサが語っていた構想、教会と擁護院と孤児院と女性救済院を一つに纏めた施設の設置に関する原案を練っていた。
「ウィリアム様!ウィリアム様‼︎」
放課後、例の構想について考えながらバネッサの迎えにでも行こうかと歩いていると、俺が認めたバネッサの友人で有る令嬢が、令嬢らしくないスピードと声を出しながら近づいてきた。それは、放課後バネッサが少し休憩しようと歩いていた中庭であのバカ達に取り囲まれたという報告だった。
は?一体全体兄上はどう舵をとってるんだ、バカかあいつらは。こっちの苦労なんて知りもしないで!
盛大に頭の中で兄とその周りの人間達を罵りながら中庭までの道を駆けて行くと、野次馬が片隅をチラチラ見ながら俺に気付いてすっと道を開けていった向こうにあのバカ達に囲まれたバネッサが見えた。
多分、他の奴らからみれば平然とした顔に見えるんだろうが、相当な衝撃を受けた時の顔だった。
ゆっくり近づいて行くと所々聞こえてくる言葉の中に『愛妾』、『パートナー』、『パーティ』なんてものが聞こえてきて、血がすっと冷めて行くのを感じた。
あのバカ達はバネッサに兄上の卒業パーティのパートナーを譲れといっているのか?それが何を意味するのか、それをする事でどんな揺れが生じるのかわからないのか?
バカなのか?バカなんだな。知ってたけど、クソ喰らえ。
「ねぇ、君たち自分で何の話をしているのかわかってる?」
バカの肩に手をかけ
「正式に認められた王子の婚約者相手に、何の話をしているのか正式に理解しているのかって僕は聞いてるんだけど?」
バカとバネッサの間に体を入れると背中にバネッサを庇った。
お前ら俺の姫に何をしてくれてんだよ。少しは物事を考えろ…まぁ考えられる様なことのできないバカだからこんな目立つとこでやってるんだろうけど
「この話は、兄上は了承しているのかな?であれば、僕から兄上と父上、それから王妃様に話は通しておくよ。
だが、アルもジェイクもこんな馬鹿げたことにかまけていて良いのかな?あぁ、もちろん宰相閣下と騎士団長にもこの話は伝えてもらう様父上にはお願いするけどね。
君たちは爵位を継げる立場でもないよね?君たちの婚約者は放っておいて大丈夫なのかな?
彼女とどうにかなったとしても。子爵家にはきちんとした嫡男が居るんだよね?君たちは揃って市井に下る予定なんだろうか?
僕の可愛い頑張り屋さんの幼馴染は君たちにとってもそうだったはずだけどね。何が君たちを狂わせたのかな?
まぁ、僕には関係のないことだけどね」
ほんっとにさ、少し年上の幼馴染としてお前らにはがっかりしたよ。自分たちの立ち位置が分かっているんだろうか?
王太子にほぼ決定していると思われている兄上の側近についたことで、自分の人生は全て安パイだとでも思っているんだとしたら、バカとしか言いようがない。
バネッサだけじゃない、お前達の婚約者だって痛い思いをしていることすら気づかないんだろうか?
この只々、自分の欲望だけで生きてる様な女に踊らされてる事に気づけない様な人間が人の上に立つ事を俺は許さない。






