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バネッサの場合4

あれからどうなったのか正直よく知らない。

あの日、王城についてウィルが陛下のところに行った事と、予定通りレオ様の卒業パーティに向けてドレスを作る様に指示を受けた事位しか解らない。

レオ様や取り巻き達やケイトリンさんは学校に来ているみたいだけど、見かけることも無い。

平和だ。


変化といえば、何故か王城までの馬車はウィルと一緒になった事位だろうか?

あの日、馬車の中で散々泣いて、悔しい思いをぶつけたのに、ウィルは「俺は知ってるよ」って「バネッサはすごく頑張ってると思ってるよ」って「誰が見てなくても、俺はずっと見てたよ」ってまるで小さい子みたいに何度も頭を撫でてくれてた。

たった数ヶ月しか違わないのに…昔から私が泣くとこうやってお兄さんぶるんだから…


だから、ウィルがいると弱くなる。

悔しい時も、悲しい時も、辛い時も、何故か気がつくとウィルがそばに居て泣かない私を甘やかしたり、一緒になって怒ったりして泣かせてくれる。誰も知らないはずの私を知ってくれている幼馴染は、私のことを泣き虫だって思ってる。

きっと、ウィル以外の誰もそんな風に思ってないんじゃ無いかな?


多分、馬車の中の短い時間だけ、張り詰めてる私を甘やかすために一緒にいてくれてるんだろうって思ってる。

産まれて初めて、自分が歩んできた人生や進むべき未来に対して不安を感じているから。でも、それを表に出すわけにはいかない。

だって私は公爵家の令嬢で、王子の婚約者という立場で、将来王妃となるかもしれないって定められた人間だから。迷うことも、不安に感じることもなく、決められた道を歩まなければいけないのだから。











卒業パーティの当日、私は何故か公爵家では無く王城でお支度をしている。用意されたのはシルバーグレイのAラインのドレスの上に紫がかったブルーのオーガンジーを重ねた冬の湖の様なドレス。

レオ様の藍色の髪やブルーグリーンの瞳の色というよりは、私の色のドレスを身に纏うべきだと思う。寒々しい色を持つわたしには似合っているのよね。

緩めのシニヨンに結った髪にブルーストーンのお飾りと、イヤリングとネックレスは紫がかった青みのあるサファイヤを身につけた。


本当なら、私の部屋に来るはずのレオ様は現れず、何故か正装をしたウィルをエスコートに卒業パーティに向かう事になった。



「ねぇ、この2人だと卒業パーティに関係ないと思うのよね…」


ウィルも私もまだ1年生だ。卒業するまであと2年ある2人が何故連れ立って卒業パーティに行かないといけないのか…

そしてその先に楽しいことが待っていると思えない。


ウィルは苦笑いしつつ「王族の務めってやつなのかなぁ?」なんて嘯いてるし、確かにそうなんだけど、私達じゃ無くてよくない?


「レオ様は?」

「兄上は先に学園に行ってる。父上も全て了承済みだから、バネッサは安心して俺についてくれば良い」


自信満々にウィルは言うけど、在学生の私達が貴賓としてあの場に行くのはどうなんだろう?もう既に処刑台に向かってる様な陰鬱な気分にしかなれない。


「俺がいるから大丈夫だって」

「大丈夫よ、会場につけば笑顔でいるわ。それが私の役目ですもの」


「無理に笑わなくて良いんだけどなぁ」なんて呟きながら膝の上でぎゅっと握りしめた拳を柔らかく包み込まれた。

だから…ウィルは私を甘やかしすぎだと思うのよね。












会場に到着するとすぐに貴賓席へと案内された。

本当であれば、卒業生であるレオ様のパートナーとしてこの会場に入るはずだったんだけどな。気づかれない様に少し俯き小さく嘆息すると、公爵令嬢の仮面を付け会場に視線を向けた。


…目立つのよね……

当たり前の様にレオ様の隣で『キャハっ』なんて声が聞こえそうな笑顔の彼女と、愛しそうに見守りながら頷いているレオ様の姿がそこにあった。


あぁ、やっぱり彼女をパートナーとしてここに来られたのね…

それも仕方のない事。私はもともと愛されていたわけじゃ無く、血筋などから政略的に選ばれた岳の婚約者ですもの。愛されないという事も、こうやって憐れみや、憐憫の目を向けられる事も慣れていかないといけないのね…


「バネッサ、君は何も恥じる事も自らを貶める事もないんだ。胸を張って堂々とこの場にいるべき人間だということを忘れなくて良いんだよ。

俺がいる。何かあればここに居るし、いつだって君を護る盾になるから」


ウィルはそう告げると、テーブルの下で私の手を取ってくれた。

小さな時からいつだって、悲しいときや悔しい時はこうして手を繋いでくれるこの幼馴染がいなければ、私は今この席にくることはなかったと思うんだ。


学園長の宣言とともに音楽が流れ始めると、卒業生とそのパートナーがあちらこちらからにダンスフロアに出てきた。

その様子はまるで色とりどりの花が一斉に咲き誇った様にも見えた。彩り鮮やかなダンスフロアの真ん中で幸せそうに踊る、私の婚約者であるはずのレオ様とケイトリンさん。そして、色のない世界でそれを見つめる自分との対比がひどく滑稽に思えた。

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