表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

バネッサの場合1

「気持ち悪っ」

「へ?」


急に聞こえた声にビクッとして変な声をあげたのは公爵家の令嬢として如何なものかとは思うけど、今のは仕方ないよね?

だって、学園のテラスで勉強しているフリをしながら心の底からボンヤリしてたんだから…って言う言い訳は…して良いよね?


その声の方を見ると幼馴染のウィルが全く違う方向を見ながら「いや、気味が悪い…気分が悪い……全部だな」なんてブツブツ呟いてる。

ウィルの視線の先にいるのは、テラスの先にある中庭でキャッキャしているやけに煌めかしい集団。

いかにも『私、小動物形で構いたくなっちゃうタイプなんですぅ。テヘッ』って感じの女の子をニコニコと愛しげに見つめる男たち。テラスを囲う植え込みで気付いてなかったけどあれは…


「ウィルのお兄様とその取り巻き達じゃない?」

「…バネッサの婚約者とその取り巻き達とも言うな」


その言葉にお互い軽くにらみ合った後、どちらからとも無く大きく溜息を吐いた。


そう、あそこにいるのは私が1歳の頃に婚約した2つ年上の婚約者レオナルド殿下。この国の第1王子だったりする。そして今何の許可もなく私の隣に腰かけたのが数ヶ月だけ年上の幼馴染であり、この国の第2王子のウィリアム殿下だったりする。

物心ついた時から王子妃教育と称して王城に通っていた私からすると王子というよりただの幼馴染ではあるんだけど。


「まぁ、お互いにその通りね。私の婚約者であなたのお兄様だわ」

「認めるのはお互いに辛いけどな…」


再度、一瞬視線を煌かしい集団に向けた後視線を合わせて同時に溜息を吐いた。


「あそこまで大っぴらにやられると頭が痛いわね…」

「バネッサは大っぴらじゃなきゃ気にならない…って事?」


軽く首をかしげる幼馴染に首を傾げ返す。


「何故?アレがレオ様の好みのタイプなら仕方ないんじゃないかしら?私には恥ずかしくて絶対に真似できないもの」


まず、王子妃教育を受けている公爵令嬢としての矜持がそれを許さないし、第1私は彼女とタイプが全く違う。

グリーンの瞳にピンクがかった金髪の小動物守ってあげたい系童顔の彼女と、ブルーの瞳にシルバーの髪のいかにも淑女教育受けてます系必ず年齢よりも上に見られる大人顔の私。キャラが全く違う。


「…確かに……バネッサがアレをしたら病気なのか何かに取り憑かれたかだと思う」


隣で何度も頷いて納得してる幼馴染を軽く睨んでいると


「でもさ、腹は立たない訳?仮にも王家から求められて気がついたら婚約者だった人間が他の女とイチャイチャしてるんだよ?」


普通は、腹が立つものなんでしょうね。『私の婚約者だから近づかないで!』とか『私の婚約者を取らないで!』とか。

でもね、正直全くそういう意味で腹立たしいとは思わないのよね。


「そうね…思わないわ。

元々レオ様に恋心を持っているわけではないし、お兄様が恋を見つけたのね…位の気持ちかしら?レオ様が即妃や愛妾を持つだろうっていう事もこの婚約には折込済みだったしねぇ…

一つ腹立たしいとすれば、私が王子妃教育に費やした時間は何だったんだろう?って事くらいかしら?」


そう、市井で育って存分に自由を享受した後で子爵令嬢となった彼女が街中で楽しく遊んでいる頃、私はマナーや語学、政治や宗教その他諸々王子妃としてどこに出ても恥ずかしくないようにとずっと学んでいたその時間は何だか惜しい気がする。

もちろん、レオ様の正妃となる訳だからやっぱり必要な事なんだろうけど、何だか私だけ苦労して損してる気がするのよね。

何もしなくても女性として愛される彼女と、努力し我慢する事で家族として認められる私っていうのは何だか釈然としない気がしなくは無い。


「ふぅん。じゃぁさ、バネッサは今まで受けた王子妃教育が無駄にならなければ兄上に相手がいても、相手が兄上で無くても問題ないって事?」


頬杖をついたウィルが、少し眉を寄せ瞳を覗き込まれた。


「前半に関しては…思う所は有るけど仕方ないんじゃないかしら?後半は…考えた事が無かったわ。

だけど…そうね。無駄にならないなら問題ないんじゃないかしら?欲を言えば即妃や愛妾を作らない人ならもっと素敵ね。

なんて、私には夢みたいな話なんでしょうけど」


苦笑いしながらそう語った。

だって仕方ないじゃない?1歳の時に既に未来を決められて、その決められた未来に沿うように生きてきた私に今更他の人生があるとも思えないもの。

私は家族として見捨てられないように精々努力するしか無いのよね。


「へぇ、了解。言質は取ったよ。

ま、純粋培養君たちにはあの子は毒なんだろうなぁ。バネッサ、バネッサには君にしか無い魅力があるよ。たくさん努力した人でないと持てない魅力がさ。

って事で、俺やること出来たからまたな。何かあったらいつでも声かけるんだぞ」


ウィルは何か納得したように何度か頷くと、軽く私の頭を撫で風のようにレオ様がいるのとは逆の方向に去っていった。

言質?純粋培養君?ウィルの言うことは時々よく分からない。ウィルの頭の中で組み立てられた途中がごっそり抜けてる気がするのよね…

何が言いたかったのか眉を寄せ暫く考えていると、何も捉えてなかったはずの視線がぶつかったその先に居たのは、困り顔の婚約者とやや硬い表情のその取り巻き達、そしてにっこり微笑んでる彼女だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ