売却代理人2
キャーなにこれスゴい。
私はドワーフのオジサンが広げた袋から顔を出したその品に驚き興奮した。
折れてしまってはいるけれど、間違いない。この剣はクレイモアだわ、実物を見るの初めて。使い込まれているはずなのにキレイで重い。
鎧はブリガンディンね。詳しく調べないとわからないけど、おそらく希少な鉱石が使われている。どこの採掘都市産かしら?
それにベルトは特注品よね? リザードマンの鱗とミスリルを加工するなんて、仕立て屋の技術がスゴい。これはとても勉強になるわ。
「どうだ? 売れそうかい?」
つい夢中になって分析をしていた私に、オジサンが顔を覗き込んで尋ねてきた。私としたことがダメだわ、お客さまをほったらかしにするなんて。
「はい大丈夫ですよ。売れます、売らしてください」
「そうか。折れたのはどうするんだ? 鍛治師に頼むのかい?」
「そうですね。完璧に直してから売ることになります」
ウチの店の近くにも鍛治師の工房はあるけれど、街の外にもいくつか行ったことがない工房もあるし、可能な限り出向いてみよう。問題は……。
「期限は一週間くらいでいけそうか? 修復の代金は別で払うぜ」
察してくれたのか、オジサンは受け取り日時を告げてくれた。一週間、十分に間に合いそうね。
ちなみに武器の修復にかかる費用は、何度も利用できるわけではないが、かなり特別な存在だけれど顔の広い私の師匠のコネがあり、おそらく大丈夫なため、追加代金は必要ないことをオジサンに報せた。
あと聞く必要があることはっと。
「お客さまの属性は火か地でしょうか?」
「ほぅ、わかるのか。確かにワシの属性は火だ。エレメントも火を使って今まで戦ってきたのよ」
「火のエレメントは命の象徴だと本で読んだことがあります、私個人的にはとても好きですよ」
属性や使ってきたエレメントによって売値が変わる店は多々あり、日によっても変わるのでシビアなことになるものの、それがまた面白くていい。商人の醍醐味だと私は思っている。
そして、私はしばらくオジサンとの交渉と談笑に付き合ってもらい、最後に作成したちょっとした書類にサインをしてもらう。
そこで初めて知ったオジサンの名前に私は納得と寂しさを感じた。
王家の紋章が刻まれた武器と防具に【ガルダイン】という名前。
数多の戦を勝ち抜き、心優しいドワーフと名高いドレンシア軍の軍団長、英雄ガルダインが引退するんだなぁ。
一言メモ【お嬢ちゃんのおかげでこれから妻とやっていくには十分な資金が手に入ったぜ、旅行にも行ける。恩にきるぜ】ガルダイン