死とお茶会3
「“アレ”はダメね。自助努力の限度が見えてない」
「そうね、大人しい巨人も少なくないけど、彼はムリ。自己顕示欲が大きく腕を振って歩いてるようなものだから」
「確かにそうだわ。あなたはどうなのマグレス、自尊心あたりは?」
“彼女”は脚を組み直すと視線を窓の外にして言葉を発する。
「多少なりともあるかな。私達“九英雄”の中でソレがないのは貴女と賢王アポロ、あとヴィジャムくらいね」
異界に住む迷宮建造物ヴィジャム。性別の概念もなく、意思も何も無いに等しい何者でもない存在。
「……その尊称で呼ばれるの本当に好きになれないわ。私達は誰一人として英雄ではないただの偽善者の集まりじゃない」
「フフ、言えてる……」
マグレスは口に手を当ててクスッと笑う。
天界や魔界、地上界にいる一部の人間にとって私の存在は人類の傍観者と幽霊図書館の管理者としか見られていない。幽霊達の王としても存在しているが支配をしているワケではない。
しかし他の連中は違う。中には様々な者達から祭り上げられている奴もいる、あくまで神話としてのことだが。そして人々は冒涜を嫌う。私はそんなのまっぴらごめんである。
どいつもこいつも度量が広くて本当に参るわね。
「そういえば面白い子が第一大陸のパメラって町で昨日生まれたらしいわ」
「パメラ? あぁ、大きな湖の近くの……」
マグレスの使い魔は優秀で、色々と情報を仕入れるのが早いと聞いている。
「トルちゃんが気に入りそうなオーラを持ってる女の子だそうよ、私は男にしか興味ないけど。名前はアミュレット……タリスマン家の次女よ」
「……そう、あなたが言うなら一応覚えておくわ。本が好きな子に育ってくれればいいのだけれど」
一言メモ【少し前までイライラしてることが多かったトルちゃんだけど、最近は機嫌がよくて良かったわ。例の子のおかげかしらね】マグレス