星見祭1
【シメフクロウのキッチン】
アンチョビを加えたら完成っと。
うん、この季節に合う料理じゃないかしら。
「アミュレット、何これ?」
「ジャビスウォーレン風パスタロールよ。時間がなくてこれしか覚えられなかったけどね。クロエ、会場まで持ってって」
「は~い」
秋になり星見祭の時季がやってきた。
収穫祭とも呼ばれていているが、そっちの方は年配者には馴染んでいない。
星見祭は秋から冬にかけて各々の街で行われる祭りで、ここフローディアでは秋の始めにフェリス通り中央広場付近に簡易会場を設けて展示会を開いたり料理を振る舞う。
どの街でも共通しているのは活気が溢れて賑やかなこと。
商業都市での星見祭は新商品アイテム開発の発表を。草刈りや劇団の役者による舞台演劇をする街もある。
ちなみに祭りは朝から晩まで行われるが、現在は晴天のお昼時。
「わらわ専用の取り皿はあるかアミュレット?」
一人の妖精がご立腹な表情で姿を現す。今日は精霊の森からリコットが遊びに来てくれたのだ。
どうやら会場にあるお皿は全て彼女には大きすぎたようね。
「はいはい、小さな取り皿をどうぞ」
他にもアナスタシアさんやイザベラさんも手伝いを兼ねて会いに来てくれていて、ソフィアも後で来てくれるそうだ。
そして、どういう風の吹き回しかスカーレットも顔を見せに来るらしい。
「さてと、私も会場に向かいますか。カルバターラまだあった?」
「……ボクあの魚料理嫌い」
「私が食べるのよ、ってクロエんとこの親方さんが作った料理でしょうが。ちゃんと臭みも取ってるんだし食べなさいよ」
「わらわはチキンカレーとやらを食うぞ」
お皿を両手にリコットは意気揚々と飛び回る。
おっと、郵便受けに手紙だわ。




