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師匠と弟子2


 呪い?

 まさかこれが死者の書で生け贄になった人達の呪いの姿だというの?

 その脅威に対して一切臆する素振りをみせない師匠は突然、私に向かってパチンと指を鳴らす。

 魔力の反応を感じる。私の耳の中に膜が張られたような感触と、呪いの音だけが遮断しゃだんされ体調がよくなってきた。

 彼女の魔法に守られながら、私は本から一定の距離をとる。

 黒い煙はというと、邪悪な獣のような姿を模しながら今にも私達に襲いかかりそうな状態。


「これはねアミュ、本に封印された死者達の魂が怨みをつのらせ、呪いという呪縛にさいなまれてしまったのよ」

「かなり危険なのでは?」

「大丈夫。問題ないわ」


 本の呪いに相対し、師匠は片手を広げて前に突きだした。


『ズズズ……』


 すると紫色の小さな球体が現れ、一瞬にして呪いの煙を吸い込んでしまう。

 球体の色が黒色へと変化したのを見る限り、呪いはその球体に封印されたようだ。


「……固有魔術【トコシエ】」


 ある民族に伝わる古代魔法。

 師匠いわく異能寄りの魔法らしいのだが、私にはよくわからない。

 魔法やスキルといった力も歴史が長くて奥深く、私は少しかじった程度で知識がうとい。また色々と調べてみたいものだわ。苦労しそうだけど。

 でも師匠の魔法が高度で洗練されたものであることは、素人の私でも一目で理解できてしまう。

 それほどまでに完璧である。


「……フフフ、どうだったアミュ。慈悲深い私の可憐かれんな振舞いに惚れたでしょ?」


 慈悲深い? 容赦ないの間違いでは?

 宙を舞いながら彼女はくるりと回ってみせた。その可愛い仕草は天使のそれと見間違うほどに、幽霊だけど。


「……と、とても“美しかった”かと」

「素っ気ない。ねちゃおうかしら。まぁいいわ、ちなみに後でちゃ~んと魂達は解放するから安心してね」

「解放? 成仏させてあげるみたいなものでしょうか?」

「そうよ。このままじゃこの子達、面倒な悪霊になりかねないの」

「な、なるほど……」


 しかし、こんな間近で師匠の魔法を拝めるとは思ってもみなかった。世界の均衡を左右しかねない存在の一人だというのが頷ける。実は彼女、そういう存在だったりするのよね。

 以前図書館に訪れたことを思い出したわ。まったく……どこが無能な最弱師匠なんだか。

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